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“続ける”こと

マチスタ・ラプソディー
vol.043

posted:2013.5.23  from:岡山県倉敷市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  東京での編集者生活を経て、倉敷市から世界に発信する
伝説のフリーペーパー『Krash japan』編集長をつとめた赤星 豊が、
ひょんなことから岡山市で喫茶店を営むことに!? 
カフェ「マチスタ・コーヒー」で始まる、あるローカルビジネスのストーリー。

writer's profile

Yutaka Akahoshi

赤星 豊

あかほし・ゆたか●広島県福山市生まれ。現在、倉敷在住。アジアンビーハイブ代表。フリーマガジン『Krash japan』『風と海とジーンズ。』編集長。

〈tweet rocka〉の10年。

日本で一番のカフェだと思っている。
倉敷の南町、市立美術館から3分ほどのところにある〈tweet rocka〉(トゥイート・ロッカ)。
倉敷市民のごく一部に熱烈に愛されてきたこの小さなカフェが
この5月に開店10周年を迎えた。
店主の末永さんは実に控えめな人柄で、
節目を迎えたからといってなにか催しをやろうかというお人じゃない。
そこで常連客が企画してささやかなパーティを開いた。
20人いるかどうかのつつましい集まりであったが、
いろんな意味で「らしい」集まりでもあった。
あまり派手なのはそぐわないのだ。
この10年、息をひそめるように、
でも自分たちのスタイルは変えることなく店を続けてきた。
そこにあるつつましさのようなものはこのカフェの最大の美点である。
実はマチスタをやるようになって、お店を見る目が大きく変わった。
どんなお店でも、カフェでも定食屋でも金物屋でもなんでも、
長くやっているところはそれだけで心からスゴイと思うようになった。
それまでは、たまに立ち寄る店から「(開店して)3年になります」と言われても、
「明日の沖縄の天気は曇りです」とささやかれているのと同じぐらい、
なんにも感じるところがなかった。
<tweet rocka>の10年……。頭が下がるどころの話じゃない。
10年の中身を正確に知るのは末永さんとサッちゃんのふたりだけで、
その間の苦労や思いや巡らせた考えのあれこれは
これからもぼくたちに知らされることはない。
はたからその重さを推し量ろうとするだけで、
なんというか、もう涙が出そうになるのだ。
どこまでも控えめな彼らだから、もうこれ以上は書かない。
長く続けてほしいという勝手も言わない。
ただ、ふたりが今後お店を続けていくうえで、
かかる苦労の少ないことを願うばかりである。

我が社アジアンビーハイブは決算月が2月ということで、
2か月後の4月末に法人税と消費税の納付期限を迎えていた。
2012年度の決算報告書が上がってきたのは、それよりも数日前のこと。
まあ予想はしていたけど、結果は赤字だ。
2009年度に黒字に転向して以降、3年連続で黒字を達成し、
数字もわずかながら上向いていた。
はた目には、その勢いで船出した飲食店事業といったところだが、
横波をまともにくらって見事に撃沈。
広告制作であげた利益を全部マチスタのマイナス分に回しても
150万円ほどの赤字が残った。
会社が赤字になったこと自体は、さほどの失望感はない。
だいたい、会社を立ち上げてからしばらくずっと赤字だったし。
それにこれ以上の大きな融資を受けるつもりもないから、
銀行の心証なんか気にしなくていいのだ。
でも、問題は会社が赤字だろうがなんだろうが、容赦のまったくない税金のシステムだ。
法人税が倉敷市に5万円、岡山市に5万円、そして岡山県に2万円。
これ、いっぺんに払うとなると結構しんどい。
さらに恐るべきは税務署への消費税の支払い、その額28万円。
くどいようだけど、「うちの会社は赤字ですよ、しんどいッスよ」って申告しているのだ。
ヒトの社会だったら、そこになんらかの「やさしさ」があっていいんじゃないか。
10万円を工面するのにも息切れしそうなのに、
どうやって40万円もの大金を支払えと? 
そして迎えた支払期限の4月末、ぼくは法人税の12万円をなんとか銀行で支払った後、
その反動かやけになったのか、ちょっとハイな気分になって児島税務署に行った。
初めて通された小さな応接室には、誰もいないのに加齢臭が濃く漂っていた。
部屋に入ってきた担当者は、案外、人のよさそうな笑顔で、
おまけに話のしやすい人だった。
最初は「払えんものは払えん!」的強気で会合に臨んだのであるが、
さほどの時間をおかずに「いや、払いたいのはやまやまで」と譲歩を見せると、
あとは「ですよねえ」を連発していた。会合はものの10分もかからなかった。
結果は28万円を10か月の分割で支払うことに。
税務署を出るときには、どういうわけか気分は晴れ晴れしい。
そんな自分をふと顧みて、完全にしてやられたことを悟ったのであった。
あの担当者、ゴルゴ13だったな。

ここのところマチスタが悪くない。
昨年12月から一日の売り上げ平均が1万2000円台に突入し、
年が明けても、そこからさらに少しずつ伸びているのだ。
昨年よりも一日の営業時間を朝と夕に一時間ずつ短縮しているにも拘らずである。
3月には未踏の1万3000円台に限りなく迫る売り上げを記録した。
これにはぼくものーちゃんも手放しで気をよくしていた。
「いい感じだよね」とお互い帳簿の数字を見てほくそ笑むような。
とはいうものの、まだ赤字であることには変わらない。
しかもぼくの人件費はまったくの計算外だ。
そんな折り、4月20日過ぎだったと思う。
決算の件で税理士のシマヅさんとメールのやりとりをするなかで、
彼女がマチスタの一日平均の売り上げ目標を出してくれた。
赤字を脱却するラインは「あくまでも目安として」とあり、
1万6000円とあった。うーん、1万6000円か……。
コーヒーを一日あと10杯売ればいい計算だが、
このたった10杯がまったく思うようにならない。
1杯でさえ確実に増やすとなると至難なのだ。
マチスタをやって1年、素人だったぼくにもだいぶん見えてくるようになった。
簡単なことはなにひとつない、続けることはそれだけで大変だ。

最近、ミディアムのコーヒーをエアロプレスで淹れたりもしている。写真の注射器みたいなのがそれです。浅めの煎りのコーヒーには実にマッチする。これからもコーヒーにこだわりたいから、ドリップに限定せず、新しい抽出法も採り入れていきたい。

毎週木曜日に来る常連のオジさんにもらったチョロQ。マチスタの目の前を走っている「おかでん」こと岡山電気軌道の路面電車バージョン。行く先のところには「岡山駅⇒清輝橋」とある。かなりのレアものか?と調べてみたら、そうでもなかった。

Shop Information

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マチスタ・コーヒー

住所 岡山県岡山市北区中山下1-7-1
TEL なし
営業時間 火〜金 9:00 ~ 19:00 土・日 11:00 〜 18:00(月曜定休)

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