連載
〈 この連載・企画は… 〉
全国にはどれぐらいの商店街があるのだろう? シャッター通りとか地域の課題もあるけれど、
知恵と元気とみんなの協同で生き生きしている、ステキな商店街を全国行脚します。
writer profile
Maruko Kozakai
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
credit
撮影:地主恵亮
〈商店街サンド〉とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
東京には11もの島がある。
伊豆諸島の9島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島)
と小笠原諸島の2島(父島、母島)の計11島だ。
そのなかで今回やってきた新島は、白浜のビーチが美しく、
サーフィンの聖地と言われる島だ。
海のアクティビティのほかにも、島中にたくさん並ぶモヤイ像や、
郷土料理のくさやが有名である。
竹芝から高速船に乗れば2時間20分、
もしくは、調布から飛行機に乗ればなんと35分でついてしまう。
信号機は島にふたつだけで、道はシンプル。
車を走らせると、新島で産出される「コーガ石」でできたモヤイ像や、
ギリシャ宮殿を彷彿とさせるモニュメントなどをたくさん見ることができる。
ちなみに渋谷駅前にあるモヤイ像は、ここ新島でつくられたものらしい。
こちらの神殿のような場所は実は無料で入れる露天風呂!
水着で24時間いつでも入ることができるため、
満天の星空を眺めながらお風呂につかることができるのだ。
島にはほかにも、羽伏浦海岸という名所の白砂を使った砂風呂が体験できたり、
きれいな夕日が一望できる温泉施設もあって、
昼間に海で冷えた体を温めることができる。
都心からも気軽に行ける、すばらしい癒しスポットだ。
新島に行ったらぜひ食べてほしいのが島寿司。
旬の魚を醤油ベースのタレに漬けてヅケにしたもので、肉厚の魚が口の中でとろけておいしい。
上に乗っているのはワサビではなくカラシで、これがものすごく合っていた。
また、「今日、葉を摘んでも明日には芽が出る」と言われるほど
生命力が旺盛な明日葉(あしたば)も名物のひとつ。
島のマンホールにも描かれるほどだ。
さてそんな新島では、いったいどんなオリジナルサンドができるだろうか?
材料を探しにメインの通りを練り歩いた。
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まずはサンドイッチに必須のパン探しだ。
新島では、早朝から開いている〈かじやベーカリー〉さんでできたてのパンがいただける。
カウンターの壁には、当日出荷のオーダーの紙がたくさん貼られていて、
大人気なのが伺えた。
お店の方によると、滞在中に毎日通う観光客も多いそうだ。
お惣菜パンから菓子パンまで、たくさんの種類が並んでいる。
サンドに一番適していそうな食パンをゲット。
ほかにもデカいコロッケサンドや、
表情が気になった「ドラちゃん」などついついたくさん買ってしまった。
旅先では地元スーパーの品揃えも気になるところ。
地元の商品が並んでいるかもしれないからだ。
と思ったが、うちの近所のスーパーとほぼ同じ品揃えだった。
ほかにもスーパーをいくつか周ってみたけどやっぱり同じ。
離島とはいえ、東京だもんなあと納得してしまう。
店員さんによると、地元のものといえばたまにイカや明日葉、
そして「たたき揚げ」が並ぶ程度らしい。
イカはサンドに入れられないし、明日葉は残念ながら時期ではなかった。
最後の「たたき揚げ」とはなんなのか。
すぐ近くのお店から取り寄せているというので、そのお店に向かってみることに。
池太商店さんは、新島の代名詞ともいえる「くさや」を売っているお店だった。
くさやは、強烈なにおいと濃厚な旨みを持つ嗜好品で、
健康食品としても注目される発酵食品。
主な産地は新島、八丈島、伊豆大島などで、ここ新島を元祖とする説が有力だそうだ。
かつては新島だけでくさやのお店が100店以上あったそうだが、
いまや6店ほどまで減っている。貴重なのだ。
ちなみに新島には〈東京都新島村本村くさやの里〉というくさやの加工団地もあって、近くを通るとくさやの香りが漂い印象的であった。
たたき揚げも新島の郷土料理のひとつ。
味噌などの調味料や野菜を加えて練った魚のすり身とのこと。
サンドにピッタリだ!
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ところで地元のスーパーを見ていて気になったのが、お弁当のご飯に乗っている海苔。
よく見かけるような板海苔ではなく、
粗く刻んだ海苔が乗っているのが新島のお弁当の主流のようだ。
農協もあった。
地元の食材をつかったものが欲しいならまずここに来れば揃いそうだ。
明日葉や、新島特産の「あめりか芋」のアイスやジュースもある。
そして最後に寄ったのは、おにぎりやおにぎりに合うお惣菜を揃える〈みかさ〉さん。
無茶苦茶おいしそうなものが所狭しと並んでる!
ちなみにこのみかさで働くお母さんは、〈かじやベーカリー〉のお母さんと姉妹だそうだ。
パンとおにぎり、姉妹で新島の主食を牛耳っているのか、すごい。
地元スーパーの100均コーナーで買ったシートの主張が強すぎたのは想定外だけど、
気にせず海辺でサンドを仕上げよう!
今回も乗せる食材を多く、買いすぎたが後悔はない。
新島産のタケノコや玉子、ゴーヤ、貝を使ったおかずを積み上げていった。
最後のトッピングとして、新島産のピーマンと青唐辛子の佃煮〈カラてっちゃん〉、
そして外すことのできないくさやを乗せて完成だ!
くさやは塊だと危険な気がしたので、細かくほぐしたものを振りかけた。
しかしその存在感はひとかけらでさえ圧倒的。
パンはやわらかくておいしいし、海の味がするたたき揚げや、
ジューシーな唐揚げ、やさしい卵焼きなどもおいしい。
ただ、くさやをひと口いれたあとはもうくさやの香りがほかの食材を制していた。
パクチーを乗せるとなんでもパクチーが主役になるようなもので、
微量であってもくさやを入れればくさやが主役である。
でも、私はこれぞここでしか食べられないサンドだと感動した。
今後の人生で、くさやの香りを嗅ぐたびに、くさやの文字を見かけるたびに、
このときの楽しかった旅を強烈に思い出すことだろう。
新島のみなさま、ご協力ありがとうございました!
●新島サンドレシピ
かじやベーカリーの食パン…240円
池太商店のくさや小袋…200円
池太商店のたたき揚げ…150円
もやいずキッチンの唐揚げ…207円
新島村農業協同組合のカラてっちゃん…400円
みかさのお惣菜(新島産ゴーヤ、新島産たけのこチーズ、イシモン、白いたまご焼き)…各300円で1200円
合計……2397円
●新島スイーツサンド
かじやベーカリーの砂糖パン…200円
新島村農業協同組合のいちごバター…550円
みかさのコーロー煮…300円
合計……1050円
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