連載
posted:2018.8.23 from:沖縄県石垣市 genre:食・グルメ / 活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
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supported by 株式会社 e-SHARE 石垣
〈商店街サンド〉とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回やってきたのは沖縄県石垣市。
沖縄県内では本島、西表島に次いで3番目に広く、人口は約5万人。
お店や居住者が集中する都市部(南部)と、雄大な自然が多く残る北部に大きく分けられる。
そんな石垣島で、今回はあえて北部で商店街サンド作りに挑戦することにした。
南部はほかの島への拠点となっていたり、観光スポットも充実している。
一方、北部は住む人以外はあまり訪れない、静かで、言ってしまえば
自然しかない石垣島のディープスポットなのである。逆に興味深いじゃないか。
だが、ひとつ問題がある。
ペーパードライバーの私には交通手段がないのだ。
歩いては到底周りきれないし、坂も多くあるから自転車は無理がある。
そこで今回大変活躍してくれたのがこちら。
電気で動く次世代スクーターである。
私は取材でよくスクーターを借りて乗っているのだけれど、電動式は初めて。
それもそのはず、電動スクーターのレンタルは日本ではまだここ石垣島しかないのだ。
(2018年8月現在)
この環境にやさしい電動スクーターのレンタルがスタートしたと聞いて、
今回の北部を回る企画が実現したわけだ。
乗り心地もこれまでのスクーターとはだいぶ違う。
電動自転車を乗ったことがある人はわかると思うが、
坂だろうが何だろうがちょっとの力で進んでしまう。
また、普通のバイクが「ブルルルル」という音をたてているとしたら
こちらは「シュイーン」。
ウィンカーの音は、普通は「カッチ、カッチ、カッチ」のところ
こちらは「ポンッポンッポンッ」である。
また、キーではなく、リモートスイッチ(なくさないように首にかける)でロックを外すのだけど
スイッチを入れるたびに「ポロポロピレポロ」と電子音で反応してくれる。
これがめちゃくちゃかわいくて、まるでスターウォーズのR2D2みたいな、
ロボットの相棒ができたかのようだ。
さらに、車のように乗ったままバックして方向転換できるスイッチもついている。
しかも環境にやさしいって、、間違いなくいままで乗ってきたスクーターのなかで一番いい!
今回はこの次世代スクーターのレンタルサービスをしている〈株式会社 e-SHARE石垣〉の代表・高橋良幸さんに付き合ってもらって一緒にサンドを作ることに。
ディープな北部で、どんな材料が調達できるだろうか?
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高橋さんが最初に向かったのは、地元で大人気というサンドイッチ屋さんだった。
……ちょっと待って、これから一緒にサンドイッチ作るのにもう食べちゃうの?
最初は車の移動販売をしていたそうだが、
人気が出すぎていよいよこの夏からお店を構えることになったのだとか。
パパイヤや卵、豚肉など地元で取れた食材を多く取り入れ、
化学調味料は一切使わないヘルシーなサンドイッチだ。
「ひよこ豆とフライドエッグのパクチーのせ」をいただくことに。
サンドイッチを持って、地元の人しか行かないような近くの山に入った。
途中ゲートを自分で開けるところが。
これは放牧されている牛が逃げないようにするためのもので、
ちゃんと閉めれば自由に入ることができるらしい。
もう今日はこれで終わりでいいんじゃないか、というほどに
バインミーはおいしくパラダイスのような絶景を拝むことができた。
高橋さん流のおもてなしである。最高だ!
最高だが、私たちもこれからサンドを作らないといけないのだ。
それをあらためて伝えると「これよりおいしいものを作りましょう!」
と高橋さんは笑顔で自分たちの首をしめた。
が、頑張ろう!
さっそく市場で青々としたゴーヤを手に入れた。
ほかに〈モウイ〉という赤ウリも100円でゲット。
どちらも薄くスライスすれば生でおいしくいただける。
次に見つけたお店は〈やちむん屋 太朗窯〉という器屋さん。
写真家でもあり世界中を旅した店主が、石垣のフサキというところで取れた土で焼いている。
石垣の海を表現しているぽいお皿を選んだら、どうやら失敗作だったようだ。
そういうデザインなのかと思った、と伝えると
「そう取ってもらえるとありがたいね」とのんびりとした笑顔を浮かべていた。
初めて来たのにやたらと落ちつくお店だった。
ああ、それにしても暑い。
この日は腕がジリジリ言い出しそうなくらいの真夏日。
バイクに乗っていると風が気持ちよく、放牧されている牛のフンの匂いや、
時にはパイナップルの香り、そしていつも浮かんでいるという大きい雲の影に入った時の
涼しさを肌で感じることが利点なのだけど、一方で暑さも直で感じる。
そんななか、思わず立ち寄ってしまったのがスムージー屋さんである。
太朗さんのところに引き続き、ここでも環境の話が出た。
言われてから気づいたが、このスムージーの容器は紙だ。
普通、スムージーはそのカラフルさを見せるために透明のプラスチックのカップで売られている。ご丁寧に蓋までついていることがほとんどだ。
が、店長のじゅんこさんは自分がお店を出すようになり、売ったそばからゴミになっていく容器について考えることが多くなったという。
「店舗では商品を包む袋は紙袋。
だけどWEBショップでの発送となると雨や雪に強い透明袋が必要になってきます。
いまその袋も自然分解できる袋に変えていけるよう工場といろいろ話を進めています。
コストがかかっても環境にやさしく自然分解できる素材にしたり、
今後は量り売りショップなどもやっていきたい」とじゅんこさん。
販売者の立場として環境について熱心に勉強している。
また、「プラスチックは良くも悪くも丈夫。便利だし完全になくすことは
難しいだろうけれど、使い捨てじゃなくて、少しでも再利用できるといいよね」
と消費者である私にも響く言葉が印象的だった。
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さて次に向かったのは〈糸数商店〉さん。
86才になるおばあの手づくりラー油と新鮮フルーツが人気のお店だ。
サンドに入れられそうな具材は見当たらなかったので、
調味料としてにんにく入りラー油を買った。
それと、どこかから取り寄せているらしい食パンも購入。
実はこの旅で出会った人たちのほとんどは移住者。
なので超地元のおばあとの会話は貴重だった。
うっかりドラゴンフルーツを頬張ることに集中してしまったが、もっと話せばよかった。
さてここからが大変だった。
連続してゲットならず。
人づてに情報を仕入れながら、食材がありそうなところを回ったがうまいこと行かなかった。
北部は特に、お店の休みの自由度が高いようなのだ。
釣り(漁)に出かけたり休息をとったりというのもあるだろうが、
南部にしかないプールに子どもを連れて行ったり、病院に行ったり、
など理由はさまざまな様子。なので北部のお店に行く時は、
まず電話で開いているか確認したほうが良さそうだ。
そのあと見つけたのは、だいぶ変わったレストラン。
地元民でも「7回道に迷った」という人がいる隠れ家中の隠れ家だった。
天候不良で材料不足のためサンド食材にはありつけなかったものの、
興味深かったので紹介したい。
「うちの料理は契約しているうみんちゅ(漁師さん)と
ハルサー(農家さん)がとったもの次第で変わるんですよ。
時にはウミガメとかクジャクとか、キジ、琉球イノシシ、
日本では沖縄の八重山・西表の辺りでしかとれない
シロアリタケというキノコを出すこともあります。」
ウミガメって食べられるの?
と思考が止まる私たちをよそに、飄々と語る店長さん。
この辺では、畑を荒らす害鳥・害獣(キジやイノシシ)なんかを
捕獲する代わりにタダで分け前をもらえるそうだ。
特に気になったウミガメは、小笠原諸島とこの八重山諸島だけ捕獲の許可が出ているそうで、
年に2回ほど、近くの養殖場でべっ甲を取るために解体する際に
タダで手に入れるのだという。味は牛肉に近いらしい。
年中メニューにあるわけではないが、石垣島でも市街地では
決して食べられないものが出る、変わったレストランだった。
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いまのところゴーヤに赤ウリ、おばあのラー油、食パンしかない。
メインとなるものが不在なのである。
夕暮れも近づき焦りが出てきたぞ。
そんな時、救世主のごとく現れたのがレストラン&宿泊&マッサージを兼ねる
〈nosoco malolo(ノソコ マロロ)〉の店長さんだ。
先ほどのイタリアンレストランとこちらのレストランは、
北部で大変珍しい「夜も開いてるお店」として
観光客だけでなく地元の人にも重宝されているそうだ。
こちらのマロロさんも少し奥まったところにあるのが特徴で、
宿泊所も兼ねているためゆったりと滞在したい海外旅行客に人気なんだとか。
すぐ近くには滅多に人が来なそうな、居心地のいいビーチがある。
店長さんはこのビーチが気に入り、ここにお店を出すことを決めたのだそうだ。
さて、あとはどこで調理するかである。
そこで高橋さんとスムージー屋のじゅんこさんに提案されたのが、女優の吉本多香美さんのお宅。
吉本多香美さんといえば『ウルトラマンティガ』のレナ隊員役である。
まったく予想しなかった展開だ。
多香美さんは震災をきっかけに、自然のなかで子育てをしたくて石垣島に移住したそうだ。
また、石垣島は野草の宝庫で、そんな自然の恩恵を受けてみんなが健康になるお手伝いをしたい、
とハーブを育て始めたという。自然と調和した食事法「マクロビオティック」も教えている。
今回の企画の説明をすると「すてきじゃない!」と言ってくれて、
さっそく「サンドイッチにハママーチ入れるといいかも」と一緒にハーブを摘んでくれた。
た、頼もしい!
料理に自信のない私たちは、多香美さんに全てを任せることにした。
いつもなら自分たちでサンドを作っていくところ(ただただ材料を重ねるだけ)なのだが、
今回は特別だ。だって任せたほうが絶対おいしいものができる。
材料たちも喜んでいることだろう。
いきなりお邪魔したのにこの仕上がり具合!
この企画始まって以来の本格的なサンドイッチである。
半日以上かけて集めた材料たちがこんなに早く、
美しくまとまるなんてまったく思いもよらなかった。
いざ、試食!
新鮮でシャキシャキとした歯ごたえのゴーヤと赤ウリ。
甘くてやさしい味の紅芋のコロッケと、パンチの効いたおばあのにんにくラー油。
全体をマイルドにおおう豆乳マヨネーズ、そして最後に爽やかさを残してくれるハママーチ。
ああ、石垣で手に入れたすべてのものが凝縮されたサンドは、
ここでしか食べられないという貴重さも相まって最高においしい。
お昼に食べたバインミーに負けないくらいだった。
こんな感じで、石垣島サンドの旅は終わった。
今日ずっと乗っていた電動スクーターについて、
最初は快適さやかわいさばかりに注目していたけれど、
「石垣島のきれいな海を見ていると、汚しちゃいけないと思うようになる」と、
高橋さんはじめ、出会った人々が言うのを聞いて、普段あまりピンときていなかった
自然や環境問題についてジンワリながら考える良い機会だった。
石垣島の皆さま、ありがとうございました!
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なお、吉本多香美さんは9月下旬にハーブ園を開くそう。
薬草を使った酵素ジュース作りなどのワークショップも開催予定。
詳しくはこちら。
【オーガニックハーブガーデン“Fresh & Wild”】
インスタ:https://www.instagram.com/yoshimototakami/
・あかし物産市場のゴーヤ 3本で120円
・あかし物産市場の赤ウリ 100円
・糸数商店の食パンとラー油 合わせて800円くらい
・太朗窯のお皿 2800円
・ノソコ・マロロの紅芋コロッケ 1個250円(今回はご好意でご馳走になった)
・吉本多香美さんのハママーチ、豆乳マヨネーズ 0円
・海辺の貝殻 お好みで
Information
沖縄県石垣市
住所:沖縄県石垣市北部一帯
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