連載
posted:2016.6.4 from:東京都中央区 genre:食・グルメ / 活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回は、築地や銀座にほど近い東京都中央区月島にやってきた。
月島は明治25年に東京湾を埋め立てて誕生した、人工の島だ。
当時は富国強兵の国策に沿って重工業化が進み、
鉄工所や工場が多く並んでいたという。
隅田川沿いには海運業や倉庫も並び、
労働者が流入、人口が急増したのだそう。
今回ご縁があって一緒に商店街サンドを作ることになったのは、
月島近くに住む3歳から6歳の子どもたちと、その親御さん。
グロースリンクかちどきの人気イベント〈おにぎ隣人祭り〉を
主催する親子食育のプロ集団〈Foozit〉さんに、
一緒にワークショップをやりたいとお声がけいただいたのだ。
ちなみに〈おにぎ隣人祭り〉とは、
参加者の郷土の食材を使っておにぎりを作る
体験型食育×地域コミュニティイベントだそうだ。
〈郷土の味〉をぎゅっとまとめて楽しむところが
商店街サンドと似ていておもしろい。
いつもはおにぎりを握るメンバーが、今回はサンドイッチに挑戦。
はたしてどうなるのか楽しみである。
なお今回は時間の都合で、
事前に斎藤雄介さんと一緒にパンを調達してきている。
月島には名物パン屋さんがふたつ。
ひとつは、パンがよーく焼けている(というか焦げてる?)ことで
有名な〈みなみ屋〉さん。
もうひとつは、山口百恵さんのウェディングケーキをつくった、
というので有名な〈Tant Pour Tant(タンプルタン)〉さんのパン。
こちらは洋風で今どきな外観。
月島はもんじゃで有名なまちとあって、
浅草のような、いかにも下町の景色を想像する人が多いかもしれない。
確かに、もんじゃストリートや路地裏の長屋など
昔ながらの風景が見られる。
しかし実はここ、少し引いて見てみると、
まわりは子育て世代の移住者を多く受け入れる
タワーマンションに囲まれていることがわかる。
東京駅にもアクセスしやすいため、
小さい子どもを持つ働き盛りの世代に人気のエリアのようだ。
新しい都市型住宅環境の中に残るオアシス、
それが月島なのだ。
元気いっぱいの子どもたちのあとについて行くかたちで
食材を探した。
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400メートル続くもんじゃストリートには、
もんじゃ屋さんがなんと80軒もある。
昔ながらの味を残しているお店から、
築地で仕入れたマグロを入れたオリジナルもんじゃをウリにしているお店があったりと
バラエティは豊か。
歩いていると、もんじゃストリートの中ほどに
目をひくレトロな建物を発見した。
大正15年に建てられ、平成19年まで日本最古の交番として
機能していた建物だそうだ。
いまでは地域安全センターとして使われ、
警察のOBが立ち、まちの安全を守っている。
また、人がいない時でも、中にテレビ電話があり、
いつでもつながる状態になっているそうだ。
「この商店街はいつも賑やかだよ。
観光客も多いし、学校のグループ見学に使われたりね。
あと、豆まきイベントがすごいよ。
商店街のお店で使える卵やお菓子の引換券とか、お金(10円)をまくの。
子どもから大人まで参加して、そりゃあ盛り上がるよ~!」と教えてくれた。
なるほど!
お店で引換券や小銭を使うついでに
ほかの買い物をすることもあるだろうし、
まちの活性にもってこいなグッドアイデアである。
バイクのガレージだったところを改装して店にしたという
〈持ち帰りの王道〉さんにやってきた。
月島発祥の〈レバーフライ〉が人気のお店である。
いきなり集団で押し寄せたので店主はアタフタしていたが、
おもしろい張り紙をだすだけあって気さくな対応をしてくれた。
レバーフライは、豚や牛のレバーにパン粉をつけて油で揚げ、
ウスターソースにひたしたもので
子どもにはおやつ代わりに、大人にはお酒のツマミにピッタリ。
手のひらくらい大きいけど、薄めなので食べ歩きにもいい。
ちなみにこちらのお店のレバーフライは牛だった。
豚のものより、より濃厚なレバーの旨みが味わえるらしい。
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次に見つけたのは、〈ゆうき屋〉さん。
産地直送で無農薬、有機栽培の旬の野菜を多く取り扱っている。
ビルの2階にあるためジックリ歩かなければ
見逃してしまうところにあった。
こんなお店があったなんて! と
お母さんたちのテンションもあがる。
こちらではキュウリやトマト、レタス、ルッコラを購入。
それと、最高においしそうな香りを放つ焼き芋を皆で買い占めた。
もんじゃストリートに戻り、次にやってきたのは〈やきとり鳥秀〉さん。
もくもくと煙がたつ店内に、おいしそうなつくねや焼き鳥がならぶ。
今回は集団で移動しているため、
私たちが入るとどこもお店がいっぱいになり、
店主が何ごとかと驚くのを見るのもおもしろかった。
さらに子どもたちは、なにが楽しいのか
お店の前で「やきとりー!」だの「センベー!」だのと
興奮気味に叫ぶので、それが広告になり
道行く観光客も引き寄せられる。
気づけば、お店の周りにはTVのロケ現場かのように人だかりができ、
ついには一緒に買い物を始めるまでに。
すごい!
子どもたちと大勢で買い物すると、
地域に貢献できるのだ。
次にやってきたのは、ハワイの食材屋さん。
餅粉であげた鳥の唐揚げや、
〈ポキ〉と呼ばれる、新鮮な魚介類を玉葱やほかの野菜と一緒に味付けしたものが
売られている。
こちらのお店は通りから少し奥まっているのだけれど、
大人たちはみんな知っていたほどの人気のお店だ。
もうみんなのお腹のすき具合がピークなので、ここで買い物は終了。
グロースリンクかちどきに戻り、
サンドづくりを開始した。
うん、うまい!
持ち帰ってきたもんじゃはかたくなることもなく、
やさしいソース味が想像以上にパンやほかの食材によく合っていた。
ノーマルもんじゃよりも明太チーズもちのほうが味がしっかりしてて
食べごたえがあるかもしれない。
それにしても、もんじゃといい、レバーフライといい、
子どもの時に駄菓子屋さんで食べたような懐かしの味を、
フカフカのパンや新鮮な野菜と一緒に味わうのは、
なんだか不思議な気分だ。
あの頃の自分に「おとなはこうやって食べるのだよ」と
自慢したくなった。
こんな感じで、今回もたくさんのお店を知ることができた。
ソースの香りがただようまちに、
子どもたちのキャッキャという笑い声(叫び声?)。
そして、その子どもたちに優しく声をかけていく商店街の人たち。
商店街の理想的な姿を見た気がした。
子育て世代に力を入れた高層マンション群と、
いまなお残る人情味あふれる商店街。
いっけん相容れない景色ながら、
その両方があることで絶妙にいいバランスをとっているまちだった。
ほかのまちでも、ぜひ子どもたちと一緒に商店街サンドをやって、
お店に行列をつくるような旋風を巻き起こしてほしいなと思う。
子どもたちの“まちを賑やかにする力”は本当にすごかったのだ。
・Tant Pour Tant(タンプルタン)のパン
・持ち帰りの王道のレバーフライ
・ゆうき屋のキュウリとレタス
・わらしべのノーマルもんじゃ(左)と明太チーズもちもんじゃ(右)
・MAIKAI KICHENのマグロユッケ風
商店街サンド #11 -- Spherical Image -- RICOH THETA
Information
もんじゃストリート
住所:東京都中央区月島
Webサイト:月島もんじゃ振興会協同組合
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