連載
posted:2016.8.25 from:愛知県名古屋市 genre:食・グルメ / 活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回は日本三大都市のひとつ、
愛知県名古屋市にやってきた。
名古屋市といえば名古屋城。
頂に金のしゃちほこが輝くあの派手なお城である。
また、名古屋の名物といえば、
ひつまぶし、天むす、味噌カツなど、
濃厚な味で食べごたえがあるものが多い。
そして、チャレンジ精神が旺盛なのか、
ダイナミックな盛り付けが多い印象でもある。
たとえば喫茶店では、
あんこがこれでもかと乗せられた小倉トーストが出てくる。
そんな名古屋市で今回訪れたのは、
名古屋駅と名古屋城を結ぶ、レトロな商店街。
〈円頓寺商店街〉である。
円頓寺商店街は、きらびやかな名古屋城や、
名古屋市で一番の賑わいをみせる大須商店街と異なり、
のんびり散策したくなるような落ち着いた商店街だ。
もともとはお寺や神社が多かったことから
参拝者相手の商売が増え、商店街ができたという。
その後、近くに流れる堀川を使った流通が盛んになり、
芸妓さんが闊歩していたような賑やかな時代もあったそうだ。
でも、時の流れとともに徐々に利用者が減ってしまっていた。
しかしいままた、昭和の雰囲気を色濃く残す老舗や、
空き家を再利用した店舗、
商店街が一体となってしかけるイベントが
注目されるようになり、活気を取り戻している。
たとえば今年(2016年)4月にオープンしたという
歌舞伎エンターテインメント〈ナゴヤ座〉は、
商店街でテイクアウトしてきたものが持ち込みOKになっている。
開演前に商店街をブラブラして、名古屋めしを食べながら
気軽に創作歌舞伎が楽しめるのだ。
また、商店街の中ほどには小さな神社があるのだけど、
なんとそこでは“名古屋弁”で書かれたおみくじが引ける。
これも商店街の人たちの発案だそうだ。
見慣れない名古屋弁がおもしろくて、
声に出して隅々まで読みたくなるおみくじだった。
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商店街には、若い人も好きそうなオシャレな履物屋さんや、
アクセサリーギャラリー、お煎餅屋や和菓子屋といった甘味処、お惣菜やさん、
そして、夕方から開きだすおもしろそうな飲み屋さんがあちこちに並んでいた。
のんびり歩いていると、突如金のしゃちほこを発見。
さすが名古屋城近くの商店街だ。
神輿に乗せる飾りらしい。
手づくり感はあるものの、これがよくできていて
なんと観光客が本物と間違えたというシロモノだ。
だいたい商店街はこんな感じ。
いざ、気になった食材を集めてサンドイッチを作ろう!
まずは商店街の入り口近くで見つけたかわいらしいパン屋さん〈芒種(ぼうしゅ)〉。
まだ5月にオープンしたて、というけれど、
夕方には全部売り切れちゃうような、すでに人気のお店だそう。
中に入ると国内産小麦と天然酵母を使用したパンが
おいしそうに並んでいた。
サンドしやすそうな食パンと、くるみの入ったカンパーニュを購入。
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お次はそのパン屋さんのすぐ近くにある
お肉屋さん、〈丸小(まるこ)〉さん。
地元の人で食べていない人はいないだろう、
揚げたてコロッケを購入。
そのあと、昔から値段が変わらずお手頃だという
〈お好み焼き甘太郎〉さんでお好み焼きをゲット。
それとここでは、名前が気になる〈鬼まんじゅう〉も買った。
愛知名物のひとつで、
さつまいもを使ったういろうのような、ほんのり甘くてモチモチとしたお菓子だった。
これまた看板のフォントがかわいらしい〈丸一ストアー〉さんでは
プチトマト、味付け海苔、そして名古屋ならでは、ということで味噌を購入した。
なぜ海苔をチョイスしたかいうと、
もともと丸一ストアーさんは〈浜乙女〉という海苔の会社が運営しており、
かつてはこの場所で海苔がつくられていたと聞いたからだ。
ちなみに浜乙女さんは「でえたらぼっち」という巨人のキャラクターを使ったCMで
名古屋では有名なんだとか。
全然知らなかった!
そして、彩りに、と買ってみたトマトも
実は円頓寺商店街と縁がある。
勝利亭という洋食屋さんが商店街にあるのだけれど、
そこの初代がカゴメケチャップをつくった協力者のひとりだそうなのだ。
その縁で、商店街では先日
トマトを扱ったお店が60店舗も集まるお祭り〈トマトマ〉が開催されている。
商店街にあるレンタルスペース〈ふれあい館〉をお借りして、
まちを案内をしていただいていた飯田さんと
それぞれ自由にサンドを作ってみることに。
飯田さんはほとんど迷うことなく、
お好み焼きを海苔で巻いたものを食パンで挟んだ。
飯田さんは、昔から食べてきたお好み焼きをどうしても入れたかったらしい。
にしても丸ごと入れるとは大胆で豪快。
名古屋名物には大胆な料理が多いなと常々思ってたけど、
これはやはり名古屋の人の気質なのだろうか?
飯田さんが男性好みなサンドを作ったのを見て、
私は女性が好みそうなのを作ってみることにした。
女性好みを意識したら、
ありそうでない、なかなかおもしろい組み合わせのサンドができた。
あんこの上にプチトマトを乗せる発想は、
最初のほうに出てきた、小倉トーストの上に乗ったクリームをヒントにした。
食べてみたら、地味だけどこれ、すごくおいしい。
まず、肉とジャガイモのやさしい甘さのコロッケと、
あんこのあの甘みが、仲の良い友達かのように手をとりあっている。
そこへ、かたすぎずちょうどよい歯切れを見せるくるみパンと
パリパリと音を鳴らし、ほどよく甘じょっぱい味付け海苔が
ふたりを祝福。
そしてようやく、かじりつく歯から逃げ回っていたトマトをキャッチ。
口のなかで炸裂し、一気に甘酸っぱい新しいスイーツに大変身した。
その炸裂する感じがなかなかのインパクト。
まるで名古屋城における金のしゃちほこのように
トマトの存在感はすさまじかった。
円頓寺商店街に来なければ思いつかなかったこの組み合わせ、
小倉トーストに並び、喫茶店の新メニューに提案したいくらいだ。
金のしゃちほこのような派手さはないけれど、
その素朴さとちょっとしたユーモアある姿が、
円頓寺商店街にピッタリなサンドだと思った。
・丸一ストアーのミニトマト(1パック)…168円
・丸一ストアーの味付け海苔…208円
・和牛専門店 丸小のコロッケ…80円
・パン 芒種のくるみパン…450円
・ホームメイドカフェのあんこ…0円
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合計 906円
商店街サンド #12 -- Spherical Image -- RICOH THETA
Information
円頓寺商店街・円頓寺本町商店街
住所:愛知県名古屋市西区那古野
Webサイト:円頓寺商店街振興組合
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