山形市の児童遊戯施設〈シェルター
インクルーシブプレイス コパル〉は
何をデザインしたのか?
写真提供:コパル
この連載は、日本デザイン振興会でグッドデザイン賞などの事業や
地域デザイン支援などを手がける矢島進二が、
全国各地で蠢き始めた「準公共」といえるプロジェクトの現場を訪ね、
その当事者へのインタビューを通して、準公共がどのようにデザインされたかを探り、
まだ曖昧模糊とした準公共の輪郭を徐々に描く企画。
第1回は、2022年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した、
山形市南部児童遊戯施設〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉(以下コパル)の
色部(いろべ)正俊館長に話を聞いた。
コパルは2023年4月に「2023年日本建築学会賞(作品)」も受賞するなど、
建築作品としても話題になっている。
すべてが公園のような建築
矢島進二(以下、矢島): 今日はよろしくお願いします。
いきなりですが「準公共」と聞いてピンときましたか?
色部正俊(以下、色部): 実は民間と公共が合わさって、
それぞれの良さを持ついい言葉はないかとずっと考えていたのです。
今回「準公共」というワードを聞いて「これだ!」と思いました。

〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉色部正俊館長。
矢島: では、最初にコパルはどんな施設かを教えてください。
色部: コパルは2022年4月に山形市南部にできた児童遊戯施設です。
「すべてが公園のような建築」をコンセプトに、
雨天時や冬の期間でものびのびと遊べる施設で、障害の有無や国籍、
家庭環境の違いにかかわらず、すべての子どもたちに開かれた遊びと学びの空間です。

入口を入ると壮大な木造ドームの体育館に迎えられる。背後には蔵王連峰の山並みが稜線に沿って見えるように窓の位置が工夫され、一枚一枚大きさや形の異なるガラスが使われている。
矢島: 設計事務所は、大西麻貴さんと百田(ひゃくだ)有希さんの
〈o+h(オープラスエイチ)〉ですね。
建築・外構・遊具が一体となったデザインで、
スロープでひとつながりに回遊できる構成など、建物全体が遊び場という斬新な計画で、
これまでまったく目にしたことのない画期的な建築です。
コパルをつくることになった経緯を教えてください。
色部: そもそもは、2015年度に山形市が策定した
「山形市発展計画」重点施策のひとつに、「子育てしやすい環境の整備」を掲げ、
新たな子育て支援拠点を市南部に整備すると定めたことが起点です。
市の北西部には2014年に〈べにっこひろば〉という子育て支援施設ができ、
年間25万人以上が来館する人気施設になっているのですが、
混雑の解消など、いくつか課題が見えてきました。
そのため、南部での計画では、新しいふたつの前提条件が提示されました。
ひとつ目は、政府も推進し始めた「PFI*の導入」です
(べにっこひろばは市の直営で整備し、運営は市の指定管理方式)。
ふたつ目は、要求水準書に「障害の有無や人種、言語、家庭環境等にかかわらず、
多様な個性や背景を持ったすべての子どもたちを対象にする」
と記載されていたことです。
「インクルーシブ」という表現はまだありませんでしたが。
*PFIとは「プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ」の略で、公共施設などの設計・建設、維持管理、運営や公共サービスの提供などを、民間の資金と経営能力などを活用し、民間主導で行うこと。コパルの場合は、特別目的会社(SPC)が設計・建築し、完成後に市へ所有権を移転したうえで、SPCが指定管理者指定を受け、15年間の契約で運営・維持管理を行う「BTO方式」を採用。

法律的には、児童福祉法第7条に規定する「児童厚生施設」と、児童福祉法第6条の3の第6項に規定する地域子育て支援拠点事業としての「子育て支援センター」を併設する施設。
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