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未来に育むものづくりの村

セコリプレス
vol.004

posted:2014.8.22  from:滋賀県東近江市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  生地をつくったり、染めたり、縫製したり。
日本には、地域ごとに、色とりどりの服飾のものづくりが存在しています。
土地の職人とデザイナーをつなげる、セコリ荘が考えるこれからの日本の服づくり。

writer's profile

Shinya Miyaura

宮浦晋哉

ファッションキュレーター。1987年千葉県生まれ。London College of Fashion在学中に書いた論文をきっかけに、日本のものづくりの創出と発展を目指した「Secori Gallery」を始業。産地をまわりながら、職人とデザイナーのマッチング、書籍『Secori Book』の出版、展示会の企画、シンポジウムの企画、商品開発などに携わる。産地のハブを目指したコミュニティスペース兼ショールーム「セコリ荘」を運営。
http://secorisou.blogspot.jp/

自然と共生してきた滋賀の文化

「滋賀県にものづくりの村がある」
こんな噂を聞いて、期待と妄想をふくらませ滋賀を訪ねてみることに。

滋賀県は琵琶湖を中心に、四方に独特の文化をつくってきました。

北の湖北(こほく)地域は昔から養蚕が盛んで
いまも国産の繭の真綿ふとんが生産されています。

琵琶湖の西に位置する高島地域は、しわ加工を施した、
「高島ちぢみ」と呼ばれる綿織物の産地として知られています。
また、日本六古窯のひとつに数えられる信楽焼は、
陶土が豊富な南部の湖南(こなん)地域を中心に発展しました。

東の湖東(ことう)地域は琵琶湖がつくり出す湿潤な気候から、
「近江上布」として国内有数の麻織物の産地として栄えてきました。

ものづくりの村と呼ばれる「ファブリカ村」はこの湖東地域にあります。

かつて織物工場だった昔ながらののこぎり屋根。ファブリカはスペイン語で工場の意味。

かつての織物工場が、「ファブリカ村」として復活

ファブリカ村の母体である「北川織物工場」は、
1964年に滋賀県の東近江市に建てられました。
ここでは、糸を染め分けることで柄を表現する、
織物技術「絣(かすり)織り」に特に力を入れ、
寝装素材やアパレル向けの麻織物の製造をしてきました。

2000年に入り、織物の製造から近江の麻で服や小物をつくり
直接販売するようになっていきました。

そんななか、県内のデザイナーたちの協力のもと、
眠っていた北川織物の工場を1年かけて改修。
2009年10月、地域文化に触れ、つくるよろこびを体感、
共有できる場所として誕生したのが「ファブリカ村」です。

村長の北川陽子さん(写真左)と副村長の北川順子さん(写真右)。

「ファストファッション、ファストフードは便利かもしれないけど、
それだけになってしまったら、日本の良いものづくりがなくなってしまう」
と話すのは、ファブリカ村の村長であり、染色作家でもある北川陽子さん。

京都の美大で染色を学んだ後に1982年に
家業である北川織物に入った陽子さんは、
代々産地に伝わる、絣織物をつくりながら、
変わりゆく時代に危機感を募らせていきました。

「産地やつくり手の魅力を、広く使い手に向けて発信しなくてはいけない」
つくり手と使い手と社会を繋ぐ、
滋賀での「村づくり」の構想が膨らんでいきました。

地域が子どもを育てる

ファブリカ村には、ショップ、カフェ、ギャラリー、アトリエ
といったさまざまな時間が流れています。

昔ながらののこぎり屋根は北向きですが、多くの窓から自然光がふり注ぎます。

ファブリカ内のショップとカフェスペースに使っている家具や器は、
滋賀の作家作品をコーディネートしています。

照明や椅子には、北川織物の絣生地が使用されています。

ショップでは近江の麻を使った、
北川織物のオリジナルブランド「fabrica」をはじめとする商品が並んでいます。
カフェでは地元の季節の食を味わえ、
ギャラリーでは県内の作家さんたちが展示会を行います。

こだわりの空間で、ゆっくりと、季節の食を味わうことができます。

ファブリカ村で開催される教室では、
絵画、陶芸、料理、着付け、お花など集まった人の得意分野を共有します。

手織り機があり子どもたちが触れることもできます。

「本当によいものを見せて、使ってもらって、
次の世代へもそのよさを伝えていく。
子どもだからといって割れないプラスチック食器でなくて、
本物を使ってもらいたい。
そうやって、自分自身の価値観をもてる子どもたちが増えていくように」

その言葉の通り、陽子さんの情熱は新しい世代にも向けられていて、
遊びの中にアートを取り入れたり、地域の子どもたちと一緒に野菜を育てたり、
県立大の学生達とのワークショップも積極的に行っています。

陽子さんは脈々と受け継がれてきた、
地域の魅力ある伝統や技術、人をファブリカ村に集め、
世代を超えたコミュニケーションをつくっています。

こちらは北川織物が作り続けてきた絣の生地です。

先代からつくられてきた、北川織物の麻の生地です。
こちらの生地も購入可能で、
生地を選び、一着だけのオーダーメードの洋服や浴衣をつくることができます。

経絣と呼ばれる技法で、絣織り独特の風合いが出ています。

地域を五感で楽しむ

ファブリカ村を訪れて、改めて「地域の魅力」について考えてみました。
湖東地域にに流れる気持ちのよい空気を吸い、
陽子さんや現地の方々とコミュニケーションを取り、
この土地で脈々と続いてきた織物文化や食文化に触れると、
僕らは、五感全体が刺激された気がしました。
地域は、五感で楽しむべきところだと思います。

僕自身、東京と各地域を週ごとに行ったりきたりする原動力は、
そこでしか味わえないおいしい時間を贅沢に味わえるところにあると思います。

「もの」だけでも、「人」だけでも、「自然」だけでもなく、
切り離せない関係性のなかで、
日本各地に独特の文化がゆっくりと育まれてきました。

今後も、各地の魅力を五感で楽しめる場所にアンテナを張っていきたいと思います。

information

informarion
ファブリカ村

住所 滋賀県東近江市佐野町657
電話 0748-42-0380
営業時間 土・日のみ11:00~18:00
http://www.fabricamura.com/

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