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連載

いまの気分の“好き”に出合う。
高山都、唐津焼めぐりの旅

ものづくりの現場
vol.035

posted:2023.1.5   from:佐賀県唐津市  genre:ものづくり / 買い物・お取り寄せ

PR 唐津市

〈 この連載・企画は… 〉  伝統の技術と美しいデザインによる日本のものづくり。
若手プロダクト作家や地域の産業を支える作り手たちの現場とフィロソフィー。

writer profile

Makoto Tozuka

戸塚真琴

とづか・まこと●東京都生まれ。大学在学中から美容雑誌の編集部にてアシスタントを経験。独立後は女性誌を中心に、ビューティやファッション、ライフスタイル企画の編集ライティングを担当するだけでなく、インタビュー記事なども執筆している。無類の猫好きで、2016年位は有志で集まったクリエイターと共に、猫の殺処分について描かれた絵本『78円の命』を発刊し、現在も猫の保護活動支援などを行っている。

photographer profile

Hiromi Kurokawa

黒川ひろみ

くろかわ・ひろみ●フォトグラファー。札幌出身。ライフスタイルを中心に、雑誌やwebなどで活動中。自然と調和した人の暮らしや文化に興味があり、自身で撮影の旅に出かける。旅先でおいしい地酒をいただくことが好き。
https://hiromikurokawa.com

credit

ヘアメイク:鈴木智香

唐津の人気窯元を巡る器旅

Instagramや書籍などで数々の料理を披露するモデルの高山都さん。
彼女は器への造詣も深く、そのこだわりにも注目が集まる。
一点一点に選んだ理由とストーリーがあるのだ。
今回は佐賀県唐津市にお邪魔し、3つの人気窯元を巡り、
唐津焼の魅力について高山さんと学ぶ旅に出た。

唐津焼発祥の地といわれている北波多。当時朝鮮半島から陶工を招き、岸岳の麓で焼き物をつくり始めたのが唐津焼の始まりといわれている。

唐津焼発祥の地といわれている北波多。当時朝鮮半島から陶工を招き、岸岳の麓で焼き物をつくり始めたのが唐津焼の始まりといわれている。

「唐津に来るといつもたくさんの出合いがあるんです」という高山さんの言葉のとおり、
彼女が唐津を訪れるのは初めてではない。
過去にもいくつかの窯元を訪問し、唐津焼に触れてきた。
高山さんのInstagram(@miyare38)を覗けば一目瞭然だが、
日頃から料理を楽しむライフスタイルには、自然と唐津焼が溶け込んでいる。

「今回もどんな人や物に出合うことができるのかわくわくします!」

自然の原料からつくられる〈健太郎窯〉の器たち

唐津に着いて最初に訪れたのが、唐津市の東側、鏡山の中腹にある〈健太郎窯〉。
窯元である村山健太郎さんと高山さんが会ったのは、今回で3回目だ。

「初めてお会いしたのもこちらのギャラリーで。
そのときにはギャラリーでお茶をいただいて、
手のひらに収まるサイズのビアカップを4つ購入して帰りましたね。
今でも自宅で愛用しています」と高山さん。

ギャラリーの縁側に腰掛ける村山健太郎さん。

ギャラリーの縁側に腰掛ける村山健太郎さん。

村山さんの作陶は粘土づくりから始まる。
まずは唐津近郊の山々を歩き、土や岩などの原料を採掘。
そこから粘土や釉薬をつくっていく。

作業場にある薪から出た灰なども釉薬の原料として活用し、
自然から手に入れたものだけでつくっていくのが村山さんのやり方だ。
原料づくりだけで1年ほどの時間を要し、手間がかかり非効率ではあるが、
この作陶を続けるのには意味がある。

「時間も手間もかかるけれど、天然原料でつくるということの認知度が上がれば、
この先50〜100年経った先の未来で価値が上がるかもしれない。
技術さえ継承できれば、価値はおのずとついてくると思うんですよね」
と村山さんは語る。

健太郎窯のギャラリーに一歩入った瞬間から、高山さんの表情は真剣そのものだった。

「どの器もすごく魅力的で、
見ているだけでどんな料理をつくって盛りつけようかイメージがどんどん湧いてきます。
例えば斑唐津の大皿の器には、豚の角煮をどーんと入れてもおいしそう。
香味野菜をどさっと入れた料理を盛りつけても絵になる気がする……。
健太郎さんの作品を見ていると、そうやっていろいろと想像できるんです。
シーンを選ばずに使えるものが多く、そのオールマイティさも
今の私の好み、気分と合っている気がしています」

整理整頓が行き届いた工房で3年ぶりの再会を果たしたふたり。出会った当時を振り返りながら談笑。

整理整頓が行き届いた工房で3年ぶりの再会を果たしたふたり。出会った当時を振り返りながら談笑。

次世代のことまで考えて作陶を続けている村山さん。
「日常に溶け込むすてきな器」であることを大切にしてつくられた陶器たちは、
飽きずに使えるようにシンプルでありながらも洗練されたものが揃っている。

現代の食文化にぴったりと寄り添うような作品は、
手に取ってみることでより深く魅力を感じられるはずだ。

Page 2

〈殿山窯〉唐津焼の歴史と真髄を肌で感じる

続いて訪れたのが、〈殿山窯(とのやまがま)〉。
九州の北西部に広がる玄界灘を望むことができる高台に立つ殿山窯では、
窯元の矢野直人さんが迎え入れてくれた。

ギャラリーに入るやいなや、「わ〜すてき!」と声をあげる高山さん。
矢野さんは1600年前後にかけて広域にわたり
盛んに焼かれた「古唐津」について造詣が深く、
ギャラリー内には自身の作品だけでなく、
数多くの陶器や家具がセンスよく配置されている。

「どの作品も興味深くて、全部質問したくなってしまいますね!」
と高山さんも笑みをこぼす。

プレゼント包装のように丁寧に包まれた古唐津のぐい呑みを披露する矢野さん。

プレゼント包装のように丁寧に包まれた古唐津のぐい呑みを披露する矢野さん。

矢野さんの作品は、古唐津からの影響を色濃く感じる。

「僕は古唐津に恋をしているんです。
もともと父が唐津焼の作陶をしていましたが、
20代の頃はもっと造形的なつくりのものが好きでした。
けれど、30歳のときに古いものを見て初めて衝撃を受けたんです。
そこから本格的に作陶を始めました」

矢野さんの解説はどれもとても丁寧だ。
「矢野さんのお話はついつい聞き入ってしまいますね。
私もお酒が好きなので、古唐津好きの人は外へ飲みに行くのにぐい呑みを持ち歩く
という話も興味深いです(笑)。もっともっと聞きたいことが出てきてしまいます」
と高山さん。

アフリカの子ども用のベンチに腰掛ける、矢野直人さん。

アフリカの子ども用のベンチに腰掛ける、矢野直人さん。

矢野さんが作陶を始めたのは2004年。
30歳のときに感銘を受けた古唐津に自身の作風を近づけるべく、
独自のやり方で土づくりからすべての工程をひとりで行う。
作品の幅は広く、絵唐津や黒唐津の酒器、斑唐津のぐい呑みなど。
作風は古唐津を意識したものが多いが、今の時代に合わせ、使いやすさも考えている。

「個性を出して作陶することではなくて、
今の人たちに使ってもらうのが大事だと思っています。
だから、古唐津を原点としながらも、
あくまで、今のものを作品として送り出していますね」

矢野さんのギャラリーにいるとあっという間に時間が流れていく。

「古唐津の話はもちろんだけれど、韓国の陶器や、
私自身が最近気になっているすてきなお盆もたくさん飾っていて、
どれもこれも魅力的でした。またぜひお邪魔させてください」

唐津焼の伝統と歴史、そして真髄を肌で感じ、
またひとつ唐津焼の趣(おもむき)を知った高山さん。
次は、唐津市中央部で窯を構える〈三藤窯〉を訪ねる。

陶芸家以前は画家としての活動もしていたという、矢野さんのお父さんの作品も飾られている。

陶芸家以前は画家としての活動もしていたという、矢野さんのお父さんの作品も飾られている。

Page 3

〈三藤窯〉で「好き」が見つかった!

最後に訪れたのは、三藤窯。出迎えてくれた窯元の三藤るいさんも、
土を掘るところから始めるという。

「粘土つくりのために、まずは山に登って土を掘るところから始めます。
釉薬も自分でつくっているのですが、
土が異なると同じ釉薬でも吸い込み方が変わるので、違う仕上がりになるのも、
自然のものでつくる魅力です」

作品を見るとわかるが、
一点一点に三藤さんのこだわりや細かな気遣いが詰め込まれている。

光の抜けが美しい三藤さんのギャラリー。「形や模様がほかではあまり見ないものも多くて、すごくすてきですね」と高山さん。

光の抜けが美しい三藤さんのギャラリー。「形や模様がほかではあまり見ないものも多くて、すごくすてきですね」と高山さん。

三藤さんのギャラリーを訪れてさまざまな器に触れるうちに、
高山さんがあることに気づく。

「私、この旅で気がついたんですけど、
いいなと思うもの全部、白濁した斑唐津の焼き物なんですよね。
どうやら今の気分に斑唐津がすごくマッチしているのかもしれないです」

斑唐津は藁灰釉(わらばいゆう)を用いて焼いた焼き物。
釉薬が垂れた様子も美しく、一点一点表情が異なるのも魅力的だ。

「登り窯は火前と火裏があって、照りの感じが異なるんです。
だから、同じ焼き物でも火前はツヤが出る仕上がりになるのが
登り窯で焼く焼き物の特徴。
高山さんがお好きな斑唐津のぐい呑みにも、
その特徴がすごくよく出ていますよ」
と三藤さんの解説に感化され、高山さんはぐい呑みを購入することを決意。

麻の葉の紋様は三藤さんの好きな柄。「古い紋様が好きなのですが、お客様に言われて特に麻の葉の紋様が好きなことに気がつきました」と三藤さん。

麻の葉の紋様は三藤さんの好きな柄。「古い紋様が好きなのですが、お客様に言われて特に麻の葉の紋様が好きなことに気がつきました」と三藤さん。

唐津焼の作家・川上清美さんのもとで修業後に、三藤窯を開窯。ギャラリーや登り窯のデザインも自身で行う。

唐津焼の作家・川上清美さんのもとで修業後に、三藤窯を開窯。ギャラリーや登り窯のデザインも自身で行う。

ギャラリーで三藤さんが、高山さんにお点前を披露する。
「私自身も茶道を嗜んでいるので、
茶碗は実際に使う方たちのことを考えてつくるように心がけているんです」

「お茶もお茶菓子もとってもおいしいです。このお茶碗も斑唐津ですね? 
やっぱりすごくすてき。今回いろいろな窯を巡りましたが、
最後に三藤さんのところに来て登り窯の特徴や伝統的な紋様のお話を聞き、
あらためて今の自分の気分にぴったりなものを見つけることができました。
ありがとうございました」と高山さんが笑顔で締め括った。

Page 4

唐津焼とともに味わう〈ひら田〉の懐石

凛とした構えの〈ひら田〉。11月に北城内に越してきたばかり。

凛とした構えの〈ひら田〉。11月に北城内に越してきたばかり。

唐津で懐石料理を提供する日本料理店〈ひら田〉。
店主の平田智隼さんは2016年に開業し、2022年11月に北城内に店舗を移した。
魚介や野菜は地産地消にこだわり、
季節に合う料理を唐津焼の器とともに美しい盛りつけでもてなす。

唐津焼は料理を盛りつけてこそ、器として最大の美を発揮する。

「唐津焼は焼き上がりが“完成”ではなく、料理を盛ることによって、器として仕上がる。
使うことによって完成していく。
そう思いながら、私は盛りつけをしていますね。
作家さんたちもそれを意識されてつくられているはずですし、
飾りとしての器ではなく、使われてこその器。それが唐津焼だと思います」
と店主の平田さんが話す。

「繊細なお料理と器の相性がすごくいいですね。見た目もおいしくて食が進みます」と高山さん。

「繊細なお料理と器の相性がすごくいいですね。見た目もおいしくて食が進みます」と高山さん。

今回は唐津で3つの窯を巡り、
締めには唐津焼を実際に使った懐石料理を味わった高山さん。

「唐津焼は自宅でも愛用している作品がいくつかあったので
親しみやすいとは思っていましたが、
今回の窯元巡りで唐津焼の奥深さや、
ひら田さんでの懐石料理を盛りつけると華やかさが増すことを
あらためて知ることができ、また一段と唐津焼を好きになりましたね。
そして、今の気分は断然、斑唐津。
今回、いくつか作品も購入させていただいたので、自宅で使うのが楽しみです!」

今回高山さんが巡った3つの窯元の様子を動画でも。

高山都さん出演のトークイベントが〈代官山 T-SITE〉で開催!

2023年1月14日(土)~15日(日)に、
こだわりの唐津焼や産地直送の果物などの特産品が並ぶ期間限定イベント
「唐津の食と器」を代官山T-SITEで開催。
本記事で高山さんが訪れた健太郎窯、殿山窯、三藤窯をはじめとする
注目の唐津焼作家6名の作品に触れられる貴重な機会となる。
14日(土)には高山さんと健太郎窯・村山健太郎さんが
唐津焼の魅力を語るトークイベントも行われる。

唐津の食と器
開催期間:2023年1月14日(土)10:00〜15:30、15日(日)10:00〜18:00
場所:代官山 T-SITE GARDEN GALLERY(東京都渋谷区猿楽町16-15)

高山都さん・村山健太郎さん出演のトークイベント
日時:2023年1月14日(土)17:00〜18:00
定員:【会場】25名 【ライブ配信】制限なし
申込方法:申込ページよりお申込みください。

*会場でのご参加は、事前申し込み制です。参加者多数の場合は抽選となります。
*ライブ配信も実施します。ご視聴はこちらから。

information

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健太郎窯

住所:佐賀県唐津市浜玉町横田下1608-2

Web:健太郎窯ホームページ

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殿山窯

住所:佐賀県唐津市鎮西町名護屋1288

Web:唐津観光協会

information

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三藤窯

住所:佐賀県唐津市宇木2972-6

Web:三藤窯ホームページ

※窯やギャラリーの見学は、各窯元へお問い合わせください。

information

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ひら田

住所:佐賀県唐津市北城内1-3-2

TEL:0955-74-0351

Web:ひら田ホームページ

営業時間:昼12:00〜15:00、夜17:30〜22:00

定休日:水曜、他

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