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越前漆器や越前和紙。
福井の伝統工芸が、
世界的ブランドを動かす

ものづくりの現場
vol.031

posted:2021.12.24   from:福井県  genre:ものづくり / 買い物・お取り寄せ

PR 福井県交流文化部

〈 この連載・企画は… 〉  伝統の技術と美しいデザインによる日本のものづくり。
若手プロダクト作家や地域の産業を支える作り手たちの現場とフィロソフィー。

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colocal

コロカル編集部

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photo:上田順子

伝統産業が息づく福井の地

福井県には、越前打刃物、越前箪笥、越前焼、越前漆器、越前和紙、若狭塗箸などの
伝統工芸品、そして眼鏡や繊維業など、ものづくりの精神がいまなお息づいている。

そのひとつ、越前漆器は歴史が古く、約1500年前から続いているといわれている。
お椀やお膳、重箱、お盆、菓子箱など、食に関連した漆器を中心に栄えてきた。
現在では量産態勢を整え、旅館などで使用する業務用漆器の有数の産地となっている。

その理由としては、まず地理的に京都に近いこと。
そして漆は水分を得て固まるので、
曇りが多く、雪が降るこのエリアは冬でも湿度が高いという、
自然環境が整っていたことがあげられる。

旅館などで使用される漆器のお椀。

旅館などで使用される漆器のお椀。

鯖江市にある〈漆琳堂〉は1793年創業。現在は料亭や業務用など漆器製造が主である。

「バイヤーさんがこのショールームに来て、お椀などをオーダーされていきます。
ここに展示してあるものはサンプル。
同じ物でも構いませんが、大抵は、柄や形など、
少しずつアレンジしていくオーダーメイドです」と
8代目を継ぐ現当主の内田徹さんが教えてくれた。

たくさんの同じようなお椀が並んでいるが、よくよく見てみると、
細いもの、低いもの、フチが反っているもの……、少しずつ形が異なっている。

「例えば一年を通して使うものなのか、春や秋など季節に合わせて使うものなのか。
それによっても条件は変わってきますので、すり合わせながら決めていきます」

1階はショールーム兼ショップでさまざまな商品が並んでいる。
2階は漆塗り工房になっていて、見学が可能だ(要予約、有料)。

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カラフルな漆器を知ってる?

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現代的な漆器、〈RIN&CO.〉

漆琳堂では、最近では修理の依頼も増えているという。
流行の金継ぎは漆の特性を使った技法なので当然、対応可能。
それだけでなく、自社以外、ほかの産地の漆器でも修理を受け付けている。
下地から補修して漆を塗り直すことで、新品同様になって返ってくるという。

自身も塗師でもある内田徹さん。

自身も塗師でもある内田徹さん。

「修理の場合は、ひとつずつ状態が異なるので、
正直いって手間がかかるうえに、正確な技術が必要になります。
しかし昔から、“きちんとした修理を行うことで信頼を得て、また仕事をもらえる”
と言われてきました」という内田さん。

欠けた部分を金継ぎした箇所。

欠けた部分を金継ぎした箇所。

最近では、一般客向けの製品をブランド化し、リリースしている。
そのひとつが〈RIN&CO.〉。漆器の一般的なイメージである黒や赤から解放され、
淡い色合いで、現在の暮らしにもマッチするシリーズだ。

実は漆が一番かたくなるのは、塗ってから100年後といわれている。
そこで〈RIN&CO.〉では、福井県、福井大学と産学官の連携によって、
新しい「越前硬漆」を開発。
通常では使用できない食器洗浄機にも対応する現代の漆器を生み出した。

〈RIN&CO.〉の漆器は現代の食卓に持ち込みやすい。

〈RIN&CO.〉の漆器は現代の食卓に持ち込みやすい。

もちろん漆器産地としてのプライドが、技術として込められている。
黒色には、「真塗り技法」が用いられている。
一度の塗りで塗膜を仕上げなければならず、
漆自体を何度も濾すことでゴミなどを取り除き、刷毛目を残さないように塗り上げる。

一方、淡い色のシリーズは、手塗りによる刷毛目を生かす「刷毛目技法」。
そのため、塗り上げ後に塗り直しができない。
どちらも一見現代的な工業製品のようにも見えるが、
そこには熟練の技術が生かされているのだ。

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和紙の伝統工芸士は何人?

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〈杉原商店〉に聞く、越前和紙とは

約1500年前から紙漉きを行っていたという越前和紙。
明治元年には日本で最初の紙幣用の紙に採用されるなど、
その品質の高さが支持されてきた。

「越前和紙はなんでもできる」と言うのは、
越前市にある和紙の企画・販売などを行っている〈杉原商店〉の杉原吉直さん。

「越前には、和紙の人間国宝ふたりのうちひとりがいます。
また全国で和紙の伝統工芸士が66人いるうち、半分が越前にいて、
現在、300人程度の紙漉き職人がいるという一大産地です」

杉原商店の杉原吉直さん。

杉原商店の杉原吉直さん。

たくさんの職人がいるので、さまざまなタイプの和紙をつくることができるようだ。
例えば、油団(ゆとん)。何重にも和紙を貼り合わせ、表面に荏胡麻油を塗ったもの。
さわるとひんやりしていて、夏の暑さをしのぐために敷く。
100年はもつといわれていて、実際、杉原商店に置いてあったものは、
100年以上経っているという。飴色になった表面が経年変化を感じさせて、味わい深い。
これは今では国内で1軒しか製作していないという。

珍しい油団。製作にはかなり手間がかかるという。

珍しい油団。製作にはかなり手間がかかるという。

また「大きな和紙を定期的に製作しているのは越前だけ」と杉原さんは言う。
その製作現場を次に見ていきたい。

杉原商店が営む〈和紙屋〉は蔵を改装した予約制ギャラリーだ。

杉原商店が営む〈和紙屋〉は蔵を改装した予約制ギャラリーだ。

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4人でつくる1枚の和紙とは?

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〈岩野平三郎製紙所〉の熟練した和紙づくり

1865年に創業した〈岩野平三郎製紙所〉は、
横山大観や平山郁夫、東山魁夷などの芸術家にも支持された和紙を製作している。
ほかではあまり見られない麻を使った和紙や、
212×273センチなどの大判の和紙をつくることができる数少ない製紙所で、
日本画や寺社のふすまなどに使用されている。

和紙の束。

和紙の束。

〈岩野平三郎製紙所〉があるエリアは、鞍谷川とそれに流れる支流があり、
この川の水が紙漉きに適しているという。
それゆえ、昔ながらの紙漉きの技術が残っている。
和紙の原料は楮(こうぞ)と三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)と麻である。
和紙の製造は、それらを煮るところから始まる。煮たあとに手作業で不純物を取っていく。

その後、工程は紙漉きに移る。越前和紙の産地には
「岡太川の上流に美しい女性が現れ、紙の漉き方を教えてくれた。
この女性に名前を尋ねると“岡太川の川上に住むもの”と答えて立ち去った。
以来、この女性を川上御前と崇め、紙祖神として岡太神社に祀った」
という言い伝えが残っている。

つまり紙の神様は女性。それゆえ、紙を漉くのは女性の仕事として伝えられており、
その風習に倣って現在でも女性の職人が多い。

岩野平三郎製紙所では通常、女性がふたりひと組で、
大判の紙を漉くときは4人ひと組で紙漉きを行っている。
特に声をかけあっているわけではないのに、息はぴったりだ。
実は「船頭」と呼ばれるひとりがリードし、相方はそれに合わせているという。
その船頭が実際の紙の厚さなどの具合を調整しているのだ。

ここは福井県の里山で、雪も降る。
つなぎに使用している「トロロアオイ」は水でしか使用できないため、
そんなエリアでの冬の作業は寒さ、冷たさとの闘いになる。
かたわらに置かれたストーブ、その上の鍋に沸かされ蒸気を上げるお湯。
冬の作業の大変さを物語るような光景だ。

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チョコと伝統工芸の甘い関係とは?

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〈ゴディバ〉に生かされた越前漆器と越前和紙

こうした福井の伝統工芸に魅せられ、
コラボレーションを始めた世界的なチョコレートブランドがある。〈ゴディバ〉だ。
チョコレートを入れるボックス(バロタン)として越前漆器が使われ、
越前和紙でつくられたケースに入れられることになった。

越前漆器でできたケース。アクセサリーなど小物入れとしても使用できそうだ。バロタンとチョコレートふたつで3850円。(税込)

越前漆器でできたケース。アクセサリーなど小物入れとしても使用できそうだ。バロタンとチョコレートふたつで3850円(税込)。

特に越前漆器に対しては、「歴史、生産量、技術、技法がナンバーワンである」と評価し、
「伝統工芸でありながらも、変化を恐れず、進化し続けている」点に共感したという。

実はゴディバ ジャパンのジェローム・シュシャン社長はフランス出身だが、
学生時代に永平寺を訪れている。
「初めて覚えた日本語は、ヒッチハイク用に書いた“福井”だった」と話している。

もともとシュシャン社長が縁を感じた福井。
そこには「本物感がある」と語る伝統工芸が脈々と受け継がれていた。
ゴディバのグローバルと福井のローカル。
それが組み合わされることで、まさに「Local to Global」として、
福井の伝統工芸が新しいかたちとなって世界へと羽ばたくときがきたようだ。

information

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漆琳堂(直営店)

住所:福井県鯖江市西袋町701

メールアドレス:info@shitsurindo.com

営業時間:10:00〜16:00

定休日:不定休(SNSなどを要確認)

Web:漆琳堂

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杉原商店/和紙屋

住所:福井県越前市不老町17-2

TEL:0778-42-0032

営業日:第4土曜(それ以外はアポイント制)

営業時間:9:00〜17:00

Web:和紙屋

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岩野平三郎製紙所

住所:福井県越前市大滝町27-4

TEL:0778-42-0042

Web:岩野平三郎製紙所

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ゴディバ ジャパン

商品詳細

商品名:Godiva café × Fukui チョコレートバロタン

内容:バロタン+お好きなチョコレート2つ

価格:3850円(税込)

取扱店:Godiva Café ※数量限定販売

Web:ゴディバ ジャパン

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