藤田 祥さん
自由に大胆に、備前の「本当」を追う。
藤田祥さんは、研究熱心だ。
土を探し、練り、成型し、焼く。
すべての過程を自分でこなさなければならない若手作家にとって、
プロセスを楽しむことができなければ、その作業は苦行でしかない。
もちろん修業時代は、「いかだで遭難したときのように」ただひたすら
手を動かして菊練りを繰り返し、「土を見るだけで気持ち悪くなるほど」だった。
だが、教えられるよりも「体で覚えながら、自分で考える」ことで、
備前焼の奥深さにのめり込んでいった。
「備前焼の歴史を調べていくと、
いかに昔の人が自由勝手につくっていたかが分かるんです(笑)。
“こうでなくちゃいけない”っていうルールは、
実は結構最近の人がつくり出したものにすぎない。
備前地方の土を使い、釉薬を使わずに、備前の窯で焼く。
備前焼のルールは、本当はそれだけだと思うんです」
その言葉通り、藤田さんの作品は、地層をそのまま再現したかのように、
ゆるやかにグラデーションしている壷や黒く美しく光る花器など、
一般的にイメージされる“茶色”の備前焼とは違う。
だが、そこには脈々と流れる備前の1200年の歴史を受け継いだものがある。
「研究することがたくさんあるんです。
黒備前は、土中の鉄分を5%まで上げて、
1200℃で焼く必要があるんですが、それも試行錯誤の結果分かってきたこと。
知れば知るほど、世界は広がっていく感覚が面白い」
一生かけて研究する題材が僕にとっては備前焼なんです、と藤田さんは言う。
若手作家には、その進化を見守る楽しみもある。

地層をそのまま再現したような壷(左)と、黒備前の花器(右)。日常使いにこそ「カッコいいものを」が、テーマのひとつである。

「できるだけ周りに他の作家がいない環境」を求めて、山奥にアトリエを構えている。すぐ脇には小川の流れる、閑静な環境。