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DESIGNEAST

ローカルアートレポート
vol.034

posted:2013.1.7  from:大阪府大阪市  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

editor's profile

Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●東京都出身。カルチャー分野を中心とするエディター/ライター。美術と映画とサッカーが好き。おいしいものにも目がありません。

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撮影:太田拓実(メイン画像)

デザインを、大阪から発信したい。

「デザインする状況をデザインする」ことをコンセプトに、
大阪で行われる「DESIGNEAST(デザインイースト)」。
2009年のスタート以来毎年開催され、
4回目になる2012年も9月15~17日の3日間開催された。
発起人は、プロダクト/空間デザイナーの柳原照弘さん、デザイナーの原田祐馬さん、
建築家の家成俊勝さん、ファッションリサーチャーの水野大二郎さん、
編集者の多田智美さんの5人。
いずれも1974~80年生まれの同世代のクリエイターたちで運営している。

そもそものはじまりは、原田さんや柳原さん、家成さんたちが不定期に開催していた、
関西で活動している建築家たちとの勉強会兼交流会。
あるときお互いの活動をプレゼンし合う会を開いたところ盛り上がり、
もう少しきちんとしたかたちにして何かやってみようということに。
ちょうど実験的に使えるスペースが見つかり、多田さん、水野さんも企画に加わって、
第1回目の「DESIGNEAST 00」をプレイベント的に開催することになった。

柳原さんはミラノやスウェーデンなど海外での活動も多いが、
日本では東京で発表の場があっても、大阪にはなかった。
ほかのメンバーも、大阪はクリエイターにとってチャンスが少ないこと、
“粉もん”文化やお笑い文化といったステレオタイプな大阪のイメージ以外の
カルチャーやイベントがほぼないことに、フラストレーションを抱えていた。
自分たちで新たなアピールポイントをつくっていこう、と立ち上げたのが
このプロジェクトだった。
「でも、たとえば僕たちがデザインした椅子やプロダクトの展覧会をやっても仕方ない。
まずは自分たちの想いや活動を見せたいと思ったんです」と原田さんは話す。
「まず基準を見せることが大事だと思いました。
自分たちが面白いと思う人たちに来てもらって話をしてもらい、
それを受け入れるというところから始めようと、
最初はトークイベントと展覧会を中心とした企画でスタートしました」(多田さん)

トークのゲストも、自分たちの人脈で招聘した。
水野さんはロンドンに10年ほど暮らしていたことがあったり、
5人それぞれが活動のなかでつながりのある建築家やデザイナーに直接お願いして、
海外からもゲストを呼び寄せた。
2回目の「DESIGNEAST 01」では、いろいろな人に協力してもらい、
巨匠エンツォ・マーリにも来てもらった。
世界中から蒼々たるゲストたちがやって来るのは、
きっと彼らの情熱にほだされてのことだろう。

大阪なのに、なぜ「EAST」なのかという問いに、多田さんはこう答える。
「東京から見たら大阪は西ですが、ヨーロッパや世界から見たら、
大阪も東京も一緒やん、という意味でEASTなんです」
大阪も世界の“EAST”であることに変わりはない。
大阪から世界にデザインを発信する、という基本コンセプトはタイトルに表れていた。

当時工事中だった中之島バンクス(現・中之島デザインミュージアム「de sign de」)にて、第1回目を開催した。

第2回目からは、現在「クリエティブセンター大阪(CCO)」と呼ばれる、
名村造船所跡地で開催している。
北加賀屋エリア一帯の新しいまちのあり方をプランニングしている
「千島土地株式会社」「おおさか創造千島財団」が所有する場所で、その名のとおり、
造船所の跡地の4階建ての大きな建物がDESIGNEASTの会場となっている。

今回は4階のスペースでは、東京を拠点とするファッションブランド
「THEATRE PRODUCTS」のワークショップが行われた。
4階は造船所だった頃、原寸大の船の図面を書く場所だったという広いスペース。
そこで服の型紙を使ったワークショップをやったら面白いのではないか。
前年にお客さんとして遊びに来たTHEATRE PRODUCTSの人たちが、
場のポテンシャルを感じてくれ、企画を提案してくれたそうだ。
2013年の春夏コレクションとして型紙を発表し、
お客さんがその型紙を買って生地を選び、その場で服をつくる。
自分がつくった服が、最新コレクションになるという新しい発表スタイルだ。
東京のブランドが大阪で、しかも型紙でコレクションを発表するというのも珍しい。

THEATRE PRODUCTSのワークショップ会場。天井が低く広いスペース。(撮影:川瀬一絵[ゆかい])

布から洋服が立ち現れるユニークな展示。(撮影:太田拓実)

3階はトークのスペース。
ファシリテーターをたて、建築家やデザイナーなど
ジャンルを横断したゲストを招いてのトークセッションを開催した。
「ただ呼ばれたから来て、何を話したらいいですか? ではなく、
話す人に主体的に関わってもらう。
みんな何か伝えたいことや一緒に考えたい話題を持ち寄って、
テーマを考えることも多いです」(多田さん)

ロンドンの公園で行われているようなスタイルにヒントを得て、
同じフロアの3か所で同時にトークをする「スピーカーズコーナー」も開催した。
お客さんがスピーカーを選ぶことになるので、スピーカーはお客さんを獲得するために、
興味を惹く内容や議論をどうつくっていくかなど、ちょっとした工夫が必要になる。
また今回は初めてスピーカーズコーナーの一部で公募枠を設けた。
9つある公募枠に、20~30くらいの応募があったという。
「スピーカーズコーナーも将来的には全部公募にしたら面白いと思っています。
そうすると、話したい、プレゼンしたいという人が続々やって来て、
場のポテンシャルが上がりますから」(原田さん)

お客さんが回遊しながらトークを聞く「スピーカーズコーナー」。(撮影:増田好郎)

デザイナーとお客さんが対話する場所。

2階ではロンドンの「OKAY studio」による家具のワークショップが開催されたり、
数々のショップがオープン。
このワークショップでは図面と材料を各1000円で販売し、その場でつくることができる。
ワークショップの出展者には、世界中どこでも手に入る材料で、
2~3時間でつくれるものを提案してもらっているので、
図面だけ買って後日材料をどこかで購入し、図面を見ながら家具をつくることもできる。
また、図面の売り上げの半分をデザイナーに還元するという、
マイクロファイナンスのしくみも導入。
そして重要なのは、デザイナーがそのワークショップの現場にいること。

「“ソーシャル・サスティナビリティ”をテーマに2回目を開催したときに、
モノをもっと愛せる方法がないかとみんなで考えたんです。
デザイナーズ家具は高価だけど飽きてしまうこともあるし、
安い家具は使い捨てになってしまう。それはモノにとってもかわいそうですよね。
デザインしている人の顔が見えて、どんな想いでデザインしているかを知ったうえで、
さらにそれらを自分でつくることができたら、
少々下手でも愛着がわきますよね」(多田さん)
「デザインした人がつくり方を教えてくれ、手伝ってくれる。
つくるのは難しいけど、かっこよく仕上がったとか、
自分の部屋は狭いから少しサイズを変更したいとか、何でもいい。
ダイレクトにデザイナーに意見が届くんです」(原田さん)
いまでは中学生が友だち同士で来ていたり、家族での参加も増え、
ワークショップ目当てにDESIGNEASTに来るお客さんも増えてきているようだ。

ワークショップでつくった家具は、図面があるので自分で直すこともできる。(撮影:増田好郎)

ショップでは、いつも出店をお願いしている本屋さんがある。
大阪市西区にある、100年以上の歴史を持つ建築書専門書店「柳々堂」。
どこにでもありそうなまちの本屋さんだが、名物店主のおばさんが人と人をつなげてくれ、
原田さん、柳原さん、家成さんもその本屋で出会った。
「柳々堂のおばちゃんに、ここにいてくれたらうれしいなと思って。
3日間、その日のゲストに合わせて本をセレクトしてきてくれて、
ゲストにもお客さんにも喜んでもらえるよう、
毎日品揃えも工夫してくれるんですよ」(原田さん)

人と人をつなぐ、まちの本屋さん「柳々堂」も毎年出店。(撮影:川瀬一絵[ゆかい])

ほかにもさまざまなブランドのショップが並ぶが、基本的につくった人が自分の手で売る。
ここでもつくり手とお客さんが対面し、対話できるようにした。
1階のバーもそう。
建築家に仮設のバーを設計してもらい、建築家自らがバーテンとして立つ。
今年は建築家の大西麻貴さんが設計した。
「お客さんはなかなかゲストに声がかけられないでしょう。
でもバーで注文するためには声をかけなきゃいけない。
コミュニケーションの装置としてバーが機能しているんです」(原田さん)

フードコーナーでも、今年初の試みとしてワークショップと同じようなしくみを導入。
大阪のクリエイティブスタジオ「graf」にお願いして、
オープンサンドをお客さんが自らつくることができる「Fantastic Table」を開催した。
スタッフは野菜の産地やつくり方を教えるだけで、食べる人が自分で選び、
手を動かしてつくる。こんなところまでコンセプトが一貫している。

自分で中身を選んで調理するフードコーナー。マルシェも開催。(撮影:増田好郎)

生演奏のパフォーマンスも。(撮影:増田好郎)

これだけのイベントを、多くのボランティアスタッフたちと一緒につくり上げている。
何より驚きなのが、企業からは現物で協力してもらうことはあっても、
協賛金は得ず、すべて入場料のみで運営しているということ。
「もともと、こういう場が大阪になかったからつくりたいという
ピュアな動機で始めたプロジェクト。それをどうしたらピュアなまま
保持できるかと考えたら、それがいちばんいい方法でした」(多田さん)
「基本的に自分たちがやりたいと思って始めたものなので。
もう究極の趣味ですね(笑)」(原田さん)

実行委員たちは、それぞれもう次回のことを考えているようだ。
「DESIGNEASTはイベントじゃなくて、“プロジェクト”と言ってるんです。
また1年間準備して、続いていくプロジェクトなんです」(多田さん)
「僕らがやっていることを東京の人が面白いと思ってくれたら、パクってもらって大歓迎。
そういう状況が生まれてくることが、ひとつの結果だと思っています」(原田さん)
「デザインする状況をデザインする」。
まさに彼らがやっていることはそういうことなのだ。

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DESIGNEAST

世界の「EAST」に位置する大阪を「国際水準のデザイン/思考の発信場」とすることで、「大阪」という都市の新たな可能性を見出していくプロジェクト。実行委員は、柳原照弘(プロダクト/空間デザイナー)、原田祐馬(デザイナー)、家成俊勝(建築家)、水野大二郎(ファッションリサーチャー)、多田智美(編集者)。
http://designeast.jp/

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