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odekake

エコミュージアムおさしまセンター
BIKKYアトリエ3モア。
木造校舎のアトリエを再生した、
彫刻家砂澤ビッキのミュージアム

おでかけコロカル|北海道・道北編

posted:2016.2.5  from:北海道中川郡音威子府村  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

photographer profile

YAYOI ARIMOTO

在本彌生

フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。2015年に写真集『わたしの獣たち』(青幻舎)が発売した。
http://yayoiarimoto.jp

writer's profile

Akiko Yamamoto

山本曜子

ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/

credit

取材協力:北海道観光振興機構

幕末の探検家・松浦武四郎が、
アイヌの古老から、
「『カイ』とは『この国に生まれたもの』を意味する」
と聞き、「北」と「道」をつけてこの地を「北加伊道」としたのが、
「北海道」の始まりと伝えられています。
そんな北海道の命名の地は、深い山あいを流れる天塩川(てしおがわ)沿い、
音威子府村筬島(おさしま)地区にあります。

この筬島に移住し、旧筬島小学校をアトリエとして
10年余りの制作活動を続けた現代彫刻家の砂澤ビッキさん。
アイヌ民族というアイデンティティを源にもち、
木と深く対峙しながら生みだされた豪放さと繊細さを合わせもつ作風で、
世界的にその名を知られる彫刻家です。

『揆面』(1975年)。札幌時代の1975年〜1976年の2年間で約120点制作した木面シリーズ。さまざまな「き」の漢字に当てはめたモチーフの奔放さに、ビッキの遊び心が垣間みられる作品。

このアトリエを改築して2004年にオープンした砂澤ビッキの記念館である
〈エコミュージアムおさしまセンター BIKKYアトリエ3モア〉では、
生涯で制作された1000点にものぼる作品のうち、
200点あまりを観ることができます。

アトリエ3モアは、
ビッキのいた頃のにぎやかで活気溢れる場をという地域住民の願いとともに、
村がいまも誇る芸術家を伝えていく拠点として生まれました。
以来、ビッキの足跡をもとめて、全国から多くの人がここを訪れています。

いまにも動き出しそうな『樹海老』(1987年)。ひとつひとつの節が動かせる細かい仕組みが施されています。緑色の染料はビッキ独自のもので、その原料を明かさなかったそう。

旭川で、アイヌ人で彫刻家の父トアカンノと
アイヌ刺繍の名手だった母ベラモンコロのもとに生まれたビッキ。
〈ビッキ〉はアイヌ語で〈カエル〉の意で、小さな頃からの愛称でした。
男性は彫刻、女性は針仕事というアイヌ民族の生活の中で、
ビッキは自然と木彫を始めます。

ビッキの弟の民芸品店に飾られていたレリーフ。

1978年、当時音威子府高校の校長に招かれ
「森と匠のまちづくり」をすすめる音威子府村を訪れたビッキは、
豊かな木々をたくわえたこの村の雄大な自然に魅了され、移住を決めます。
以後はこの廃校をアトリエに、
晩年までこの地で精力的な制作活動や展覧会を行ってきました。

『熊』。若い頃は販売用の民芸品をつくっていたものの、アイヌの木彫作家のイメージがあるクマの木彫作品には抵抗があり、つくったのは生涯3点のみ。この作品の熊にはもとは肩に矢がささっていたそう。

元小学校の空間を生かしてテーマごとに分けられた展示室では、
ビッキの残したひとつひとつの作品にじっくりと向き合えます。
木に女性的な要素を感じ、これほど魅力ある素材はないととらえていたビッキ。
木彫作品は小さなものから大きなものまで、
具象的なものから抽象的なものまで幅広く、
とくに音威子府に来てからの、
巨木を使った大がかりな作品も見ることができます。

守り神のような風格を漂わせる『森に聴く』(1985年)。

かつて音威子府駅前に堂々とそびえていた、
ビッキの作品、トーテムポールの『オトイネップタワー』は、
樹齢300年というヤチダモの巨木からつくられた作品。
このトーテムポールは残念ながら1989年、
強風による損壊で撤去され、現在はアトリエ3モアにその一部が展示されています。

展示されているトーテムポールの一部。

ビッキは、自らの作品はつくったときが完成なのでなく、
自然の力が加わってこそ完成すると考えていました。
朽ちるままにまかせたその姿は、
すべてはいつか自然に還っていくことを静かに物語るかのようです。

『小鹿』(1979年)。木のふしをうまく使った造形はどことなくセクシー。この後ビッキはカナダを訪れ、ハイダ族のもとで滞在制作したそう。

展示空間を堪能したあとは、ビッキが室内装飾を手がけた
(一説にはツケがわりに作品を寄贈したとも)、
札幌のすすきのにあったバー〈いないいないばぁー〉。
アトリエ3モアにはこのバーを再現したカフェがあり、ここでひと休み。
ビッキ文様と呼ばれる柄をそこかしこに忍ばせたレリーフに囲まれて、
ビッキの世界に浸ってみてください。
お土産のグッズ販売のほか、関係資料が自由に閲覧できるコーナーも。

〈いないいないばぁー〉出口のドア。ビッキの作品からはユニークな人柄が垣間見えます。

絵画や版画の作品も。

若かりし頃のビッキは俳優のよう。詩人の顔も持ち〈青い砂丘にて〉という詩集を出版しています。

アイヌ民族という揺るがない軸をもちつつも
「アイヌでもシャム(和人)でもなく、
ひとりの現代彫刻家として評価されたい」と明言していたビッキは、
作家としてはエネルギーに溢れた近寄り難い存在でありながら、
気さくな人柄でまわりの人を惹きつけてやまなかったそうです。

アトリエ3モアは、冬期間(11/1〜4/25)は休館。
ビッキが愛した音威子府の木々に緑が満ちる頃、
彼の息吹が宿るアトリエが旅人の訪問を待っています。

information

map

エコミュージアムおさしまセンター BIKKYアトリエ3モア

住所:中川郡音威子府村字物満内55番地(地域名:筬島)

TEL:01656-5-3980

営業時間:9:30〜16:30※4月26日~10月31日(冬期間閉鎖)

定休日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)

http://bikkyatelier3more.wix.com/atelier3more

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