odekake
posted:2016.2.2 from:北海道中川郡音威子府村 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
photographer profile
YAYOI ARIMOTO
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
writer's profile
Akiko Yamamoto
山本曜子
ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/
credit
取材協力:北海道観光振興機構
流れるような動きであっという間にでき上がり、
すぐにアツアツをいただける、駅そばならではのスピード感。
だけど普通の駅そばとひと味違うのは、この真っ黒い麺!
JR宗谷本線の音威子府(おといねっぷ)駅にあり、
「日本一うまい駅そば」と全国に名を馳せる〈常盤軒〉。
黒い麺の秘密は、そばの実の甘皮まで使って製麺しているから。
野趣あるそばの風味に加え、しっかりとしたコシが最後まで楽しめます。
そば生産北限の地、音威子府村。
村や近郊のそばの実を使った黒いそばは、
まちの名産品として知られる一品です。
「小学生の頃は、よくそばを踏まされていましたよ」
と話してくれたのは3代目店主の西野 守さん。
かつては自家製麺を使っていましたが、
現在は村内の〈畠山製麺〉から毎朝届く生麺を使用。
お店で購入できる生麺と乾麺は、おみやげとしても人気です。
おすすめの天ぷらそば(470円)は、
食べるうちにほぐれていくかき揚げと、
だしのきいたほんのり甘い濃いめのつゆとがほどよく麺にからみ、箸がどんどんすすみます。
基本は立ち食いそばですが、店向かいのテーブル席、待ち合い用座席、
以前は乗換え待ちの仮眠用として設置された小さな畳敷きのスペースがあり、
自由に座って食べられます。駅そばなのでメニューはあたたかいものだけ。
ここの黒いそばを目当てに、お客さんが次々に車で駅へとやってきます。
ホームを見ながらいただく駅そばは格別。
昼間にやってくる列車には、15分ほどの停車中に、
走ってそばを食べにくる乗客の方もいるそう。
音威子府駅は今も旭川と稚内を結ぶ宗谷本線の特急停車駅。
そして、かつて運行していた旧天北線の始発駅でもありました。
鉄道のまちとして名を馳せた音威子府は、
最盛期には人口5000人のうち約3割が鉄道関係者だったという話も。
1930年代の創業時から天北線廃止までは、
駅のホームで駅弁を中心に販売していた常盤軒。
特急列車が長く停車し、
夜行列車も出ていた音威子府駅は乗客にとって大事な食事処でもありました。
テレビのない時代にラジオで紹介されたこともあって、
店は一時は24時間営業をしていたほどの繁盛ぶりだったそうです。
「その前からちょっとはおいしいって評判だったんですよ」と笑う西野さん。
生まれも育ちも音威子府という西野さんは、実は明治大学卒。
卒業後は跡を継ぐという約束で1958年に常盤軒に入り、
2代目のお父さまにそばだけでなく日本料理までひととおり習ったそう。
「当時は多くの人が行き交う駅でした」と振り返ります。
駅舎の新築にともない、お店もホームから駅舎内へと移りました。
半世紀以上店に立ち続けている西野さんは、まさに音威子府駅の顔です。
世代も住む地域も幅広いお客さんのなかには、
何世代にもわたって来てくれる方もいます。
30年前に来たことのあるお客さんが訪れ、「昔と同じ味だ」と喜んでくれることも。
「跡継ぎはいないんです。私がつくるのを全部やって、
かみさんが手伝いをしてくれています。
いつまでやれるかわからないね、もう80になるから。
でも元気で仕事ができるっていうのはありがたいことだって、
歳をとって痛切に思いますよ」
笑顔とともに元気をいただける一杯。
飾り気ない西野さんのお人柄も、常盤軒の人気の理由です。
駅そばの醍醐味、列車に乗って食べに来たいお店です。
information
常盤軒
住所:中川郡音威子府村音威子府 JR音威子府駅内
TEL:01656-5-3018
営業時間:9:30~16:00
定休日:水曜
※駐車場あり(駅の駐車スペースへ)
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