歴史ある湯治宿「大黒屋」

地獄蒸しも味わえる情緒あふれる自炊宿。

100年以上の歴史がある貸間「大黒屋」。
女将の安波(やすなみ)照美さんは大分県由布市の出身で、
いまから35年前に結婚と同時にご主人の実家「大黒屋」がある
鉄輪(かんなわ)に身を置くようになった。当時は農業に従事しながら
「貸間」と呼ばれる自炊宿を営む家庭が多かったそう。
「観光客の下駄の音が凄くてね。
ここは表通りから少し入ったところだけど、よく響いていていたわ」
好きな人と一緒だったから楽しくて、環境のギャップは感じなかったと笑う安波さん。

「大黒屋」の庭には、「地獄釜」と呼ばれる釜がいくつも並べられていた。
これは温泉の泉源から噴出する高温の蒸気を利用したかまどであり、
鉄輪の人の生活の一部になっている。
「ポテトサラダとかおでんとか、いろんな料理に釜を使うのよ。
まだ道がコンクリートや石じゃなかったころは、
子どもたちが地面を棒で掘って蒸気を出して、サツマイモを埋めていたんですって」
敷地内は、場所によっては下に温泉管が通っているそうで、
立っていると足裏がじんわりと温かくなっていくのを感じる。
「冬になると、猫がずらっとここで寝転ぶのよ」
宿泊者は自由に地獄釜を使用することができる。
昔ながらの貸間スタイルで泊まってみるのもいい。