odekake
posted:2019.5.23 from:新潟県三条市 genre:旅行 / 食・グルメ
PR 新潟県
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Nanae Mizushima
水島七恵
みずしま・ななえ●編集者。新潟生まれ。人の営みから生まれる文化全般を思考領域としながら、企画とディレクション、執筆を行う。この仕事につく原点は、音楽。最近目覚めたことは、筋トレ。私にとって編集とは、世界の見方を増やす手段だと思っています。
credit
撮影:ただ(ゆかい)
日本人の誰もが親しみを持っているカレーという料理。
そのうえで「カレーとは何か?」と聞かれたらなんと答えるでしょう。
きっと、子どもの頃に食べたカレーの具材や味を思い出す人は
多いのではないでしょうか。
つまりカレーとは、ひとりひとりの概念によって
支えられた味でもあると思うのです。
内と外の境界が溶け合っている〈ステージえんがわ〉は、誰もが気軽に立ち寄れて、多目的に使えるまちの交流広場。
そんなカレーの概念を大きく変えるレストラン、
〈三条スパイス研究所〉が、新潟県JR北三条駅のそばにあります。
2016年3月27日にオープンしたこの研究所は、
公共施設である〈まちなか交流広場 ステージえんがわ〉に食堂として併設され、
「にほんのくらし」を織り交ぜたスパイス料理を提供しています。
多種多様なスパイスがずらりと並ぶ〈三条スパイス研究所〉。メニュー監修は、東京・押上にあるスパイス料理店〈スパイスカフェ〉のオーナーシェフの伊藤一城さんが手がけました。
「そもそもカレーとはスパイス料理なんです。
その前提に立って考えてみると、カレーへの可能性が広がりませんか?」
そう話すのは、〈三条スパイス研究所〉の統括ディレクターを務める
山倉あゆみさん。撮影当日は山倉さん本人が出張のため、
残念ながら会えませんでしたが、山倉さんは三条市のプロデュースのもと、
〈ステージえんがわ〉をこの場所につくることが決まった後、
外部コンサルからの依頼でプロジェクトに参加し、
ディレクターとして奔走してきたひとりです。
〈三条スパイス研究所〉のオープンキッチンは、仕込みの真っ最中でした。
世界三大炊き込みご飯のひとつ、南インド料理ビリヤニも〈三条スパイス研究所〉の人気メニュー。
「研究所がオープンしたての頃、
“世界中見渡しても、ウコン畑が見えるレストランは、ここだけなのでは?”
と、いろんなお客さまに言われてうれしかったです」
と山倉さんが言うように、〈三条スパイス研究所〉の窓からは
敷地内のウコン畑が見渡せます。
山崎さんの畑で採れたフレッシュなウコン。
「カレーづくりには欠かせないスパイスのひとつ、ターメリックは、
ウコンの地下茎を乾燥させた香辛料です。
そもそも〈三条スパイス研究所〉は、
そのウコンを地元で育てている
山崎一一(かずいち)さんとの出会いによって生まれました。
山崎さんを通して、健康的なスパイスと地元野菜を中心とした、
ここでしか食べられないカレーを提供できる。
スパイス文化を発信しようという想いが固まって、私たちは進み出せたのです」
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秋ウコン(左)は、肝臓の機能を回復・強化するクルクミンを多く含み、春ウコン(右)は、動脈硬化予防やコレステロールの分解、またガンの抑制にもなる精油成分やミネラルが豊富。
60歳で勤めていた会社を定年退職し、
旅行で初めて行った沖縄でウコンに出会って、苗を持ち帰り、
地元・三条で栽培をスタートさせたという山崎さんは、なんと御歳90歳。
自身で栽培から加工までを行い、自分のできる範囲で、
春ウコンと秋ウコンを育てています。
平成元年(1989年)からウコンの栽培をしている山崎さん。山崎さんのウコンを求めて、東京からも買いに来る人がいるという。
「私はお酒が大好きなんだけど、
ウコンさえ飲んでいれば二日酔いはしないし、
朝晩毎日ウコンの青葉を粉末にしたものを小さじ1杯飲んでいるからか、
それで血液検査すると、肝臓の値があまりに良好だと医者もたまげるんですよ」
と話す山崎さんですが、そのきりっとした姿をひと目見れば、納得のひと言。
と同時にウコンの栽培にはさまざまな苦労もあったのではと、
想像しながら尋ねてみると、「一度も失敗はなく、30年間続けてこられた」と、
飄々と答える山崎さんの姿に、再びウコンの力を感じます。
春ウコンと秋ウコンの粉末をそれぞれ50%で調合した、山崎さんによるウコン粉。春ウコンは苦味が強く、秋ウコンは発色が良くて風味はマイルド。
独学でウコンの栽培を始めた当時は、
あくまで自分と家族のためだったという山崎さん。
そしてウコンの力を感じるたびに、
多くの人にその力を体感してもらいたいと、地元の直売所で販売を始めます。
やがてその評判が広まり、
山崎さんのウコンは直売所で売り上げ上位をキープするように。
山倉さんたちプロジェクトチームは、
まさにその直売所で山崎さんのウコンを発見し、以降、年齢や立場を超えて、
お互いの知恵や知識を交換するようなやりとりを重ねながら、
〈三条スパイス研究所〉の輪郭をつくり上げていきました。
家庭の炊飯器でも楽しめる、ビリヤニ調理キットも人気。「切り干し」された野菜と、新潟で栽培されるドライフルーツをスパイスと共に調合。またミックススパイスの中には三条産のターメリックが含まれています。
ひと皿に野菜のスパイスおかずが4種、加えて日替わりカレーが2種。それをお皿の中でミックスして食べていくことで、自分の味をつくっていくのが、“スパ研流”のターリーセット。1296円
オープンから3年、今では地域の出会いの場、交流の場にもなっている〈三条スパイス研究所〉。敷地内にあるウコンの畑もまた、山崎さんの教えのもと、若手農業者たちと畑ワークショップの参加者たちによって大切に守られています。
すり鉢の底の模様を「文化のミクスチャー」としてイメージした〈三条スパイス研究所〉のロゴマークがとても映えています。
「土地の力で農産物は育っていく。
その当たり前の難しさを日々感じながら、畑づくりをしてきましたが、
ようやく安定して収穫ができるようになってきました。
畑づくりの参加者のなかには、自宅でウコンの種芋を植えつけて栽培し、
収穫したウコンを酢漬けや焼酎漬けにしたりする人もいるんです。
うれしいですね。地域の伝統や季節の食材、
語り継がれる生活の工夫など、
その土地らしさをこれからも多くの人たちと考えていきたいと思います」(山倉さん)。
ひと皿のスパイス料理がカレーの概念を変え、
世代を超えた新たなコミュニティ、文化を育んでいく。
今日もまた、〈三条スパイス研究所〉は、このまちの風景を更新していきます。
『新潟のつかいかた』でも〈三条スパイス研究所〉の取り組みについて
詳しく紹介しています。記事はこちらから↓
information
三条スパイス研究所
住所:新潟県三条市元町11−63
TEL:0256-47-0086
営業時間:10:00〜20:00 (L.O.19:00)
定休日:毎週水曜日、第一火曜日
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