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posted:2019.1.26 from:新潟県糸魚川市 genre:旅行 / 食・グルメ
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〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
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Ichico Enomoto
榎本市子
えのもと・いちこ●エディター/ライター。コロカル編集部員。東京都国分寺市出身。テレビ誌編集を経て、映画、美術、カルチャーを中心に編集・執筆。出張や旅行ではその土地のおいしいものを食べるのが何よりも楽しみ。
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撮影:ただ(ゆかい)
新潟県西部に位置する糸魚川市。
海に近く、魚介類も豊富なこのまちに、
おいしい卵を使った洋菓子のお店〈フェルエッグ〉があります。
人気商品〈たまごやさんのふわふわプリン〉をひと口、口に入れると、
なめらかでとろけるような舌触り、
濃厚な卵とバニラビーンズの風味がふんわり広がります。
こんなにおいしいプリンがあるなんて!
もうひとつの人気商品がシフォンケーキ。
ふわふわでしっとりしたシフォンケーキは、卵の味がしっかり感じられ、
思わずペロリと平らげてしまう軽やかなおいしさ。
そのおいしさの秘密は、フェルエッグ独自の卵〈ピュアエッグ〉にあります。
実はフェルエッグは、70年ほど続く養鶏場〈渡辺鶏園〉から生まれたお店。
素材を厳選し、工夫された餌によって育てられた鶏から、
生臭みのないすっきりした味わいのピュアエッグをつくることに成功。
現在35000羽ほどいる渡辺鶏園の鶏のうち、
500羽ほどがピュアエッグを産んでいるそう。
その貴重な卵が毎朝お店に運ばれてくるのです。
ところが、店主はもともとお菓子づくりのプロだったわけではないというから驚き。
「最初にパティシエの方のところに卵を持っていって
シフォンケーキを試作してもらったんです。
そのとき、こんなにおいしいものができるんだ、
これなら売れるかもしれないと思って。
そこからひた走りにやってきたという感じです」と笑う、
フェルエッグ代表の渡辺洋子さん。渡辺鶏園の2代目の奥様です。
きっかけは、2004年の鳥インフルエンザの大流行でした。
卵の価格が暴落し、それに反比例するように餌代が高騰。
赤字が膨らみ、これ以上借金もできないという窮地に立たされたとき、
それでも毎日卵を産んでくれる鶏たちだけはいました。
そこでもう一度、売れるものをつくってみようと立ち上がったのです。
卵を使う料理はさまざまありますが、材料として使う量が多く、
老若男女が一年中食べられる洋菓子をつくることに。
そしてお菓子をつくるための卵、ピュアエッグを開発し、
2006年にフェルエッグがスタートしたのです。
最初は試行錯誤しながらシュークリームとプリンの2品で始まった
フェルエッグの商品も、現在は先ほど紹介したシフォンケーキやロールケーキのほか、
カステラやパウンドケーキなどの焼菓子、マヨネーズなど多岐にわたります。
「いまでこそ6次産業化が叫ばれていますが、
その頃はまだそんな言葉は聞いたこともありませんでした。
そんな商売が成り立つのかと疑問視されましたが、
だからこそ絶対に失敗できない、負けられないという思いがありました。
必ず成功させてやるという、意地ですね(笑)」
カフェスペースではフェルエッグのスイーツが食べられるほか、ランチもスタート。
ピュアエッグのおいしさをそのまま味わえる卵かけご飯に小鉢がついた
〈フェルセット〉や、エッグベネディクトなど、卵好きならたまらないメニューが。
また月の前半は糸魚川の地鶏〈翠鶏(みどり)〉を使った親子丼、
後半はオムライスも提供しています。
お客さんからは、こんなうれしい話も。
「生卵が食べられないというお子さんが、
ピュアエッグの卵かけご飯をおいしいと言って食べてくれて、
お母さんがびっくりしたという話を聞いて、本当にうれしくて。
続けてきてよかったと思いました」
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そんな渡辺さんは、さらなる挑戦を続けます。
フェルエッグはまちなかから少し離れた場所にありますが、
2017年、糸魚川駅の近くに新しい拠点〈フェルのはなれ〉をオープンさせたのです。
これが、とてもすてきな建物! 建築好きにもぜひ訪れてほしい場所です。
この建物は〈旧高野寫眞館〉。1928年に建てられた、
当時としては珍しい鉄筋コンクリート2階建のモダンな建物で、
国登録有形文化財となっています。
味わいのある建物の雰囲気を生かし、フェルエッグのスイーツのほか、
全国から集めたさまざまなキッチン雑貨やファッション小物を販売しています。
あっという間に時間が過ぎてしまうような、
見ているだけでも楽しいセレクトショップです。
奥には、ものづくりの作家のシェアアトリエ兼ワークショップスペースが。
実はフェルエッグでは例年5月から11月まで、週末にマルシェを開催しており、
そこでは地元の生産者さんの農産物や
ハンドメイドの作家さんの雑貨が販売されることも。
そんなつながりのなかから、作家さんの作品を販売したり、
ワークショップが行われるようになったそうです。
さらに2階には、写真館として使われていた当時の雰囲気をそのままに残すスタジオが。
ここに流れてきた時間に思いを馳せると、
ちょっとだけタイムスリップしたような気分。
現在はヨガ教室やイベントに使われることもあるそうです。
以前からこの建物のオーナーに、ここを利用して
何かできないかと相談されていたという渡辺さん。
最初はとても無理だと思っていたそうですが、
2016年の糸魚川大火災のあと、ここで店をオープンしようと決意します。
「私は生まれも育ちも糸魚川。その見慣れたまちが
一瞬にして焼けてしまったのが、とてもショックでした。
この建物も、風向きが違ったら焼けていたかもしれない。
こんなふうに残った建物は生かさないと、と思ったんです」
ちょうど本店のほうでランチを始めようとしていたこともあり、
それまでの雑貨販売スペースをカフェスペースに広げ、
駅前のこの場所に雑貨販売スペースを移すことに。
また駅に近いことで、本店までなかなか来られないお年寄りや
旅行者にも立ち寄ってもらいたいという思いもあるそうです。
フェルエッグという店名は、フィンランド語で「卵のために」という意味だそう。
卵のために、そして糸魚川の人たちのために
真心こめておいしいものをつくってきたフェルエッグは、
いま多くの人に愛されるお店になっています。
『新潟のつかいかた』では、作家・角田光代さんがフェルエッグについて紹介しています。
記事はこちらから↓
information
フェルエッグ
住所:新潟県糸魚川市平牛2116
TEL:025-550-6680
営業時間:4~9月 10:00~19:00、10月~3月 10:00~18:00(ランチ 11:00~14:00)
定休日:木曜、第4水曜
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フェルのはなれ
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