odekake
posted:2018.12.19 from:新潟県上越市 genre:旅行 / アート・デザイン・建築
PR 新潟県
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Kiyoko Hayashi
林貴代子
はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。
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撮影:後藤武浩
新潟県の南西部に位置する上越市高田。
国内屈指の豪雪地帯で知られ、
かつては4メートル近い深雪が観測された地域でもあります。
その気候のため、高田には「雁木(がんぎ)」と呼ばれる
アーケードの原型ともなった雪よけの庇がついた古い家々が軒を連ねます。
まちを歩けば、情緒ある風景に、不思議な懐かしさがこみあげてくるよう。
高田の雁木通りは全長16キロ! 日本最長の長さを誇ります。
徳川家康の六男・忠輝によって、約400年前に高田城が築城され、
城下町として栄えた高田のまち。
1900年代に入ると、旧陸軍第13師団が駐留することになり、
遊郭、芝居小屋、牛鍋屋などもつくられ、歓楽街として栄華を極めました。
その時代に建てられた映画館がいまも残り、現役で映画上映が行われています。
映画館の名は〈高田世界館〉。
1911年に建てられた擬洋風建築で、国の登録有形文化財になっている〈高田世界館〉。
もともとは〈高田座〉という芝居小屋としてスタートしましたが、
ほどなくして世界的な映画ブームが到来。
その流れを受け、開業5年後には芝居小屋から映画館へと方針を転換しました。
その後、時代や景気に翻弄され、2000年に入る頃には廃業寸前となったものの
地域住人によって保存活動が行われ、
2009年にはNPO法人〈街なか映画館再生委員会〉に譲渡され、再生を果たしました。
スクリーンの前にはステージが。
映画館の内部は、建設当時の姿がほぼそのままに!
意匠を凝らした天井装飾、円柱の柱、曲線状の階段の手すり、丸窓――。
100年以上の時の重みと風格に、ついついホウッ……とため息が。
天井の装飾が見事! 車輪のような文様は、高田城を治めていた榊原家の家紋「源氏車」をモチーフにしているのだとか。ここにはシャンデリアが飾られていたそう。
レトロな椅子が並ぶ2階席。
1階には140席、2階には40席と、なかなかの収容規模。
芝居小屋であったため、座席はもともと畳敷きだったそう。
その名残で、2階席の手すりはかなり低くつくられています。
映写室には、フジセントラル社製の映写機が2台。
現在もこの映写機によるフィルム上映を定期的に行っています。
サイレント映画を上映する際は、昔ながらのスタイルをとり入れ、
映画の解説をする“活動弁士”を迎えることもあるのだとか!
映画だけでなく、芝居小屋時代のステージを活用したライブコンサートや
落語を開催したり、近年盛り上がりをみせるインド映画の「マサラ上映」や
「応援上映」といった新しい上映スタイルもとり入れ、
映画ファンのためのコミュニティづくりにも力を入れています。
「レンタルDVDや動画配信が普及するなかで、
映画を映画館で観ることへの価値が薄れつつあるんです。
いま、ただ映画館で映画を観るだけではなくて、観客参加型の、
その瞬間じゃないと味わえない体験を求める人が増えています。
なので、ステージがある映画館って、わりと使い勝手がよくて。
ライブや落語など、いまとなってはそういう使い方こそ、価値が出てきていますね」
2014年から高田世界館の支配人を務める上野迪音(みちなり)さんは、
高田のまちづくりにも取り組む、若きキーパーソン。
映画をフックにしたまちづくりもスタートさせています。
高田世界館の支配人・上野迪音さん。
『新潟のつかいかた』では、高田世界館と上野さんについて詳しく紹介しています。
記事はこちらから↓
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さて、高田世界館で映画を楽しんだあとは、まちの散策へ。
全長16キロにも及ぶ雁木通りには、
奥に長く、間取りや構造もほぼ画一化された「町家」とよばれる家が多く見られます。
まず立ち寄るべきは、江戸時代後期に建てられた〈旧今井染物屋〉。
閉業して久しい建物ですが、高田を代表する町家建築として一般公開されています。
この建物にも雁木が設えてあり、特徴的なのは、雁木の上に部屋があること。
人々が行き交う通路の上に部屋があるなんて、なんだか不思議!
旧今井染物屋。雁木通りの上にも部屋が……!
旧今井染物屋は内部の見学もできます(公開日以外の見学は事前申し込みが必要)。
この様式は、江戸~明治期にかけての町家に多く、「つくりこみ雁木」というそう。
一方、雁木が外に張り出しているものを「落としこみ雁木」といい、
明治以降につくられた町家に多いのだとか。
旧今井染物屋のある「大町通り」では、
毎月「二・七の市」「四・九の市」という朝市が開催されます。
「二・七の市」は2と7のつく日に、
「四・九の市」は4と9のつく日に開催され、
朝市によって開催される丁目が変わり、通りは歩行者天国となって賑わいます。
大町通りの一角。
また、高田世界館の裏にあたる「仲町通り」は、かつて歓楽街として栄えたエリア。
ここには遊郭も存在し、往時は肩と肩が触れ合うくらいの人々で
賑わっていたという話も。
いまも、江戸時代から続く料亭や、老舗の商店が並び、かつての繁栄が垣間見えます。
仲町通りをもう1本隔てれば、「寺町通り」にたどり着きます。
60もの寺が連なる通りは、全国的にも珍しいのだとか。
仲町通りとは一変して俗を離れた静寂のなかに、浄土真宗の宗祖・親鸞によって建てられた〈浄興寺〉が。国指定重要文化財。
ほかにも、見どころいっぱいの高田のまち。
通りによって、さまざまなまちの顔が見えるのもおもしろい!
南本町商店街にある〈髙橋孫左衛門商店〉。400年もの歴史ある飴屋で、昭和天皇はこの店の飴をよく口にしていたのだとか。
旧陸軍第13師団の師団長を務めた長岡外史の邸宅を移築した和洋折衷の木造建築〈旧師団長官舎〉。
栄華を極め、衰退を経験し、いまもなお昔ながらの面影を各所にしのばせる高田のまち。
高田世界館での映画鑑賞と、まちの文化に思いを馳せる、
ノスタルジックな旅に出かけてみませんか?
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