odekake
posted:2018.10.31 from:新潟県佐渡市 genre:食・グルメ / 買い物・お取り寄せ
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〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
writer profile
Kiyoko Hayashi
林貴代子
はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。
credit
撮影:ただ(ゆかい)
ちょっと不思議な響きに興味をそそられる〈へんじんもっこ〉。
佐渡の言葉で“頑固者”を意味するこちらは、
頑固なまでにこだわりを貫いた、ソーセージやサラミの専門店です。
佐渡でソーセージをつくり始めて、約37年。
ドイツ公認の食肉加工資格ゲゼレ(職人)を持つオーナーが手がけるサラミや
ソーセージは食通の間でも名高く、国際コンクールでも数々の賞を受賞。
首都圏の食品セレクトショップなどにも商品を卸していますが、
すべての商品が買えるのは、この佐渡の工場兼直売所のみ。
ベースとなる豚肉は、すべて新潟県産を使用。
ドイツの伝統的製法を用い、防腐剤、着色料などは無添加。
さらに、日本ではここでしかつくられていないという、珍しいサラミがあるんです。
それが〈たまとろサラミ〉。
サラミといえば、腸詰めされた肉がギュッと凝縮したような
歯ごたえのあるものを想像しますが、
こちらのたまとろサラミは、見た目はまるでレアのミンチ肉。
初めて目にするやわらかいサラミを、恐る恐る口に運べば、
ひんやりとした舌ざわりに次いで、熟成による旨みと塩味がじわ~っと口に広がり、
玉ねぎとスパイスの香りが追いかけてきます。
そこに、ほのかに感じる乳酸菌由来の酸味。
いままで食べたことがないような、あとを引く味わい!
ドイツでは一般的というこのサラミ、
酸味のあるパンにはさんで食べることが多いそう。
へんじんもっこのオススメは、黒コショウとオリーブオイルをかけて。
お酒好きにもたまらない一品ではないでしょうか。
佐渡で育まれた野草入りの〈ワイルドハーブソーセージ〉も人気の一品。
野草には、その季節に体が欲している栄養素がギュッと詰まっているのだとか。
その時期一番元気がいい野草を8種類ほどブレンドしているそう。
プリンとした歯ごたえと、きめ細やかでまろやかな舌触り。
どことなく漢方を思わせるようなハーブの香り。
この味も、なんだかクセになります……!
「肉料理のサイドに添えてある栄養豊富なクレソンからヒントを得たんです。
ソーセージを食べたら一緒にクレソンを食べていた、みたいなイメージ。
ほかにも、ビタミンCが豊富な柿の葉や、
血糖値の上昇を抑える効果があるという桑の葉も入っています」
そう話してくれたのは、2代目の奥様であり、野草にも詳しい渡邊朝美さん。
これまでに季節ごとに野草を変え、6バージョンほどつくっています。
ほかにも、当初からレシピを変えずにつくり続けている〈田舎風パテ〉や、
ドイツレシピで忠実に仕上げた〈レバーペースト〉、スモークの香り漂う〈ベーコン〉、
佐渡の気候風土が育て上げた〈スモーク生ハム〉、
ドイツではごく一般的に食べられるという、
型に入れて焼き上げたソーセージ〈フライッシュケーゼ〉など、
選ぶのが悩ましいほど、魅力的な加工製品がずらり!
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初代は鶏専門の肉屋、2代目は牛や豚も扱う肉屋だったというへんじんもっこ。
ですが、島外資本の大型スーパーなどが介入してくると、
この先肉屋だけでやっていくのは難しいのでは……、と店の未来を危惧した2代目。
いまあるものでなんとかできないかと考えたとき、たまたま手にした本に、
ドイツの肉屋はソーセージもつくる、という記述を目にしました。
「そんなきっかけからソーセージの研究を始めたんです。
たった1冊の本から勉強してつくったから、はじめは失敗の連続。
しかも、つくった白いソーセージをお肉と一緒に並べても、全然売れなくて。
だから、お肉、ソーセージ、コロッケ、チキンロールなんかと一緒に
約9年間、私が朝夕訪問販売して売り歩いてたの」
その当時を懐かしがりながらも、笑い飛ばすかのように語ってくれた朝美さん。
先の代まで持続可能な店を思い描き、
ドイツ式ソーセージの可能性を信じて、研鑽を重ねました。
その後、突然の大変革が訪れます。
朝の情報番組でへんじんもっこのソーセージが紹介されることに。
テレビの影響を考慮して、200~300セットくらい用意があれば大丈夫かな、
と考えながらテレビを見ていたところ、突然電話が鳴り始めます。
「もう電話が鳴りやまないの! 受話器を置くひまもなくて、
トイレに行くときは受話器を外したりして(笑)。
約20年前の話だけど、初めての経験でした」(朝美さん)
トータル3000~4000セットの注文が入り、
そのときに買い物をしてくれた何人かのお客さんとは、
いまでもおつきあいがあるのだそう。
ふたりで始めたソーセージづくりでしたが、
経営も軌道にのり、現在は3代目夫婦と、8人のスタッフで、
昔と変わらない頑固さで、ソーセージやサラミづくりに取り組んでいます。
3代目オーナーである渡邊省吾さんは、ドイツ留学を経験し、
ドイツ公認の食肉加工資格ゲゼレ(職人)を取得しました。
「毎年、コンクールなどでドイツに行っている父をみて、
漠然とですけど、自分も大きくなったらドイツに行きたいと思っていたんです。
母がいうには、小学4年生の誕生日のとき
『大きくなったらドイツに行く!』って宣言していたらしいです(笑)」
地元の農業高校の食品化学科を専攻していた省吾さん。
授業の一環で、ソーセージづくりの実習があったそう。
「学校でつくったソーセージを自宅に持ち帰ったとき、
それを父がすごく褒めてくれたんです。
ソーセージをつくるの楽しいな、自分でもつくりたいな、と本気で思ったのは
それがキッカケだったんじゃないかな、って思います」
高校卒業と同時に渡独し、言葉の壁、社会の厳しさなどを体感しながら、
職業学校でソーセージやサラミづくりを学んだ省吾さん。
ミュンヘンから少し離れたまちにある〈ルッツ食肉店〉にて
学びながら住み込み労働を経験。4年間の修業を終え、佐渡へと帰国しました。
帰国後は、はやく自分の色を出したいと、さまざまな種類の加工品に取り組みますが、
なかなか自身で納得する味は出なかったといいます。
それでも日々ソーセージづくりに励み、
ドイツのさまざまなコンクールに出品しているなかで、
2005年に開催されたドイツのコンテストで国際部門総合優勝、
加熱部門でのグランプリと2カップを獲得するという快挙!
「自分以外の人から評価されたことで、大きな自信にもつながりました。
そのときにやっと、自分なりに求める味に近づけたような気がします」(省吾さん)
そんな息子の活躍に、2代目も「負けてはいられん!」と、
ソーセージだけでなく、サラミづくりにも注力するように。
オランダのコンクールなどにも積極的に出品していたそう。
それぞれの仕事を称えあい、よきライバルとして刺激を与えあう親子。
2代目夫婦のふたりで始めた頃は4~5種だった商品も徐々に増え、
今では30種類以上のサラミやソーセージを製造するようになりました。
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イタリア料理のシェフである省吾さんのご兄弟は、
佐渡市内でへんじんもっこの直営レストラン
〈de Vinco(デビンコ)〉を経営しています。
へんじんもっこの生ハムと、佐渡名物の「おけさ柿」、
ほかにも佐渡でとれた旬の果物を合わせたサラダは、特に人気のメニューなのだとか。
ところで、レストラン以外に今後大きく展開する予定は?
「いまのところは特にないですね。
まずは自分のなかで一生懸命つくっていきたいという思いがあります。
あとは、自分の商品をつくる、売る、ということ以外に、
地域のためにならないとダメだなぁと思うようになってきて。
佐渡ならではのもの、佐渡でしか食べられないものを増やしていきたい。
といっても、なにか特別なことをするというわけではなくて、
自分のやっていることが、自然にそうなればいいなって思うんです」(省吾さん)
渡邊家家訓をうかがうと、「人のいうことは聞くな!」なのだとか。
「初代のおじいちゃんも、2代目も、いまの3代目も、
本当に好きなことをしているんです。
みんながこうするからじゃなくて、自分がやりたいことをやる。
自分が納得することや、自分の意思を貫いていいよ、ということです」(朝美さん)
話をうかがっている間にも、地元の方々がお店を訪れては、
「帰省する子どもや孫たちに食べさせようと思って」と購入していく姿が。
長い年月をかけて、島民に親しまれ、島外にもその名を轟かし、
常に研究が重ねられ、佐渡という島の気候や風土のエッセンスが加わった、
ここでしか味わえない、へんじんもっこのサラミやソーセージ。
佐渡を訪れたなら必食です!
information
へんじんもっこ
住所:新潟県佐渡市新穂大野1184-1
TEL:0259-22-2204
営業時間:9:00~17:00
定休日:無休(年末年始除く)
information
へんじんもっこ直営レストラン
de Vinco
住所:新潟県佐渡市新穂青木749-3
TEL:0259-58-7027
営業時間:17:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日:火曜
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