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writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。
国内の羊肉流通は海外産・国産合わせて年間2万トン程度で、
国産羊はわずか1%未満と言われています。
そんな国産羊市場を支えるめん羊牧場が、北海道の東部、
太平洋側に面した白糠町(しらぬかちょう)にあります。
それが、白糠町の南側、茶路川のすぐそばにあり、約900頭の羊が
元気に飼育されている〈茶路めん羊牧場〉です。
白糠町は人口約7200人の小さなまちで、道内でも特に気温が低く、
漁業や農業、酪農が盛んな地域となっています。
牧場主はいまから35年前に脱サラし、わずか35頭の羊を連れて
牧場経営を始めた武藤浩史さんです。
牧場のコンセプトは「羊一頭を余すところなくいただくこと」。
武藤さんは牧場を始めた当初から
「羊をまるまる一頭無駄にしないこと」を大切にしてきました。
羊を無駄にしないための取り組みとして、
牧場内で羊肉の飼育・加工・販売まで一貫して行っています。
牛や豚の場合、生産者と加工者と販売者がそれぞれ別なのは当たり前。
しかし、羊は流通量が少なく、加工だけを行う工場が国内にはありません。
枝肉と言って、部位ごとに切り分ける前の状態での流通が一般的です。
しかし、枝肉を捌く技術を持った飲食店や卸売業者は限られ、
仮に捌けたとしても不要な部位も出てきます。
飲食店や卸売業者のニーズに応えるため〈茶路めん羊牧場〉では、
枝肉からさらに個別の部位に分ける加工・そして販売、発送まで一貫して行っています。
「欲しい人に欲しい部位を届けたい」と自然に始めた取り組みです。
いまでは、口コミで九州から北海道まで、日本全国あらゆる場所へ発送しています。
当初は、特定の部位だけ人気が出て、売れ残る場所が出てくるのではないかと
心配していた武藤さんでしたが、高級レストランからニーズのある部位もあれば、
町の居酒屋からニーズの高い部位、一般家庭で好まれる部位もあり、
羊肉を内臓まであますところなく販売できているそうです。
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家畜飼育では穀類を与えるのが主流ですが、
牛も羊も草食動物なので原っぱに放牧して、草を餌とした飼育も可能です。
茶路めん羊牧場では放牧を行い、主に草を餌として羊を育てています。
羊のふん尿や、汚れや品質の問題で羊毛製品に使えなかった羊毛を堆肥にして
放牧地に返すと、化学肥料を使わなくても大地が育ちます。
羊が放牧地の草を食べる、放牧地に堆肥を落とす、放牧地が育つ、
またその草を羊が食べる。
羊を育てることは、資源が循環すること。
サステナブルという考え方は、羊にとっては追い風になると
武藤さんは考えています。
また茶路めん羊牧場では、羊毛や油を使った独自の製品づくりにも力を入れています。
羊毛製品も数多く展開しているのは、羊牧場の中ではめずらしい存在です。
羊毛は加工前に洗浄が必要ですが、専門の工場が国内にないので、
福祉作業所に協力してもらって手洗いし、汚れを取り除きます。
きれいになった羊毛で、靴下やふとん、枕などオリジナルの製品をつくっています。
羊毛は一見暖かくて冬用だと思われがちですが、通気性がよく熱もこもらないため
通年使うことができます。
ほかにも、羊乳や羊から出る油もなるべく活用できるように工夫しています。
茶路めん羊牧場のすぐ隣には〈レストランCuore〉もあります。
牧場で育った羊料理をはじめ、北海道産の食材を使った料理を味わえます。
北海道だけでなく、東京など遠方から訪れる人も少なくない
羊肉の名店です。
2023年8月下旬からは、レストランCuoreのお食事券が
新たに北海道白糠郡白糠町のふるさと納税返礼品として登場しました。
実際に飼育されているすぐ近くで羊を食し、羊のありがたさ、
そしておいしさを感じてみては?
information
レストランCuore
住所:北海道白糠郡白糠町茶路川西
営業時間:火・水・木・日曜 11:30〜18:00(LO. 17:00)
金・土曜 11:30〜15:00(14:00L.O.)18:00〜21:00(20:00L.O.)
店休日:月曜・月2回の不定休、1月・2月は冬期休暇
TEL:01547-2-5030
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