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posted:2023.5.10 from:岩手県九戸郡洋野町 genre:食・グルメ
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writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。
近年、漁業者の方々が口にするようになった「海藻が生えない」という言葉。
これは「磯焼け」と呼ばれ、海が砂漠化していることを指します。
日本国内では30年前と比較し藻場が急激に減少。
中でも悪化が加速する地域では80%減にもおよび
海外においてはオーストラリア・タスマニア島のジャイアントケルプの森を囲う海では
95%も減少していると言われています。
世界的に成⻑産業とも言われる水産業ですが、日本では衰退産業と揶揄され、
漁村地域はかつてない危機的状況となっています。
海藻があってはじめて、それを食べて育つウニやアワビの漁獲量と品質が保たれます。
また藻場がなくなれば、魚が卵を生んだり稚魚が育ったりする場が失われてしまいます。
加えて海藻は海中のCO2を吸収する役目があり、藻場がなくなることは地球にとって、
私たちにとって大きな打撃となり得るのです。
岩手県の沿岸最北端、北三陸・洋野町では
約50年前から持続可能なモデルで漁業を行ってきました。
広大な岩盤地帯に約17.5キロメートルに渡り溝を掘り、
天然の昆布が豊富に存在する漁場をつくり、
その中でウニが豊富に昆布を食べて育つことにより、
高品質なウニを持続的に生産することを可能としています。
〈北三陸ファクトリー〉ではその漁場を〈うに牧場(R)〉と名づけ
地域ブランドとして国内外に発信。
本州水揚げNo.1を誇ってきました。
もともと洋野町の浜は遠浅で、干潮時には岩盤に張り付いた海藻類たちが
干上がってしまうため、海産物の高い品質を維持できない問題がありました。
漁業にとって不利な環境下を克服しようと、当時の漁業者たちは海藻を守り、
自らの生業をつくり出すため溝を掘削。
そのおかげで、干潮時に水が引いても溝には海水が残り、
ウニが安心して暮らせるようになりました。
また、満潮時には海水が流れ込み、昆布やわかめの種を溝に残し、
豊富な海藻が生える場所となっています。
最近では3106.5トンものCO2の認証が認められ(2022年11月)、
ブルーカーボンの町としても国内トップクラスです。
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とはいえ、いま国内外で起こる磯焼け問題は水産業における目下の課題です。
こうした背景を汲み、北三陸ファクトリーは2023年4月12日、
〈KSF Australia Pty Ltd〉を設立。
ウニによる磯焼け問題を世界の課題として捉え、海の限りある資源を守り、
未来に向けて豊かにしていくため、ウニ再生養殖を
日本だけでなくオーストラリアでも展開することとしました。
具体的には、海藻減少によって実入りが悪くなったウニの再生、
藻場再生による海中の海藻育成、価値あるウニを食文化として楽しむ、
という3つのアクションを掲げています。
これらが循環することで再生型水産業が成立。
漁業者、水産関係者、生活者がともに課題解決意識を持って限りある海の資源を守り、
豊かにしていく行動を興すことが不可欠です。
2023年5月30日まで実施しているクラウドファンディングで集めた寄付金は、
海の問題を共有しアクションを起こす場、〈UNI SUMMIT&UNI Fes2024〉の
運営資金や、藻場の再生活動、次世代の海の担い手を創る、海洋教育プログラムの運営、
オーストラリアでのウニ再生養殖の活動資金に使われます。
クラウドファンディングのリターンには、フレッシュな〈洋野うに牧場の四年うに〉や
〈UNI&岩手産バターSPREAD〉〈うにフラン〉〈北三陸産天然自生わかめ〉など
北三陸ファクトリーがつくるウニ製品や海産物加工品なども揃います。
おいしくウニを食べて、海を守る取り組み。
私たち消費者にできることもありそうです。
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