news
posted:2022.10.6 from:大分県別府市 genre:アート・デザイン・建築
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Mae Kakizaki
柿崎真英
かきざき・まえ●ライター。宮城県仙台市出身。2019年よりフリーランスライターとして、東京を拠点に活動中。月刊誌やニュースサイト編集者としてのバックグラウンドを活かして、Webメディアや雑誌などに寄稿を行う。
塩田千春展『巡る記憶』が別府市の中⼼市街地で10月16日まで開催されています。
日本・中国・韓国の3都市で文化芸術を発信する〈東アジア文化都市〉の
2022年国内都市に大分県が選ばれており、同展はそのコア事業となります。
ベルリンを拠点に国際的に活躍するアーティスト、塩⽥千春さん。
「⽣きることとは何か」「存在とは何か」を探求しながら、
その場所やものに宿る記憶といった“不在の中の存在”を⽷で紡ぐ
⼤規模なインスタレーション制作を中⼼に活動しています。
2019年には、東京〈森美術館〉で過去最大規模の個展を開催し、同館歴代2位となる
約66万人の入場者数を記録したことも記憶に新しいのではないでしょうか。
このたびの個展では、“巡る記憶”をコンセプトに、別府でのリサーチをもとに制作した
作品を展示。同地の象徴的な光景である「大地から湧き出る湯気」などから着想を得たと
されるインスタレーションは、別府駅周辺のふたつの建物を介して表現されています。
会場のひとつとなるのは、以前は卸問屋だったという〈BEP.Lab〉。
こちらでは“循環”をテーマに、編み込まれた白い糸と
そこから滴る水によって構成されたインスタレーションを体験することができます。
同展のために制作されたというドローイングや音にも注目です。
Page 2
もうひとつの会場は、〈BEP.Lab〉から徒歩3分ほどの場所にある〈新中華園ビル1階〉。
かつては大規模な宴会場を有する中華料理屋だったというこの場所で、
塩田さんは当時の光景に思いを馳せてインスタレーションを制作したといいます。
円卓やイスといった、その頃の記憶を宿すモノと赤い糸が用いられた作品には、
「糸が記憶を紡ぎ、不在となった部屋の記憶を呼び起こす」という想いが込められています。
Page 3
さらに、同展をより深く体験するための試みとして設置されたサテライト会場
〈platform05〉では、過去に塩田さんが参加した展覧会の
制作風景を収めた映像や図録などを見ることができます。
展示会場周辺には、大分のご当地グルメであるとり天をはじめ、豊後牛や海の幸など
美食が味わえる飲食店が数多く建ち並んでいます。地元の人で賑わう温泉も点在して
いるので、鑑賞後に別府名物を堪能してみるのもよいでしょう。
生と死、存在、記憶など人間の根源的な問いをテーマに、見るものを圧倒する作品を
つくり続ける塩田千春さん。別府のまちで歴史を重ねてきた場所が、彼女の手によって
どのように新しく生まれ変わったのか、皆さんの目で確かめてみてください。
information
塩田千春展/巡る記憶
Feature 特集記事&おすすめ記事