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posted:2022.3.4 from:山梨県 genre:旅行
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
先日こちらでご紹介した、ライフスタイルブランド〈SANU(サヌ)〉が展開する、
都心から片道1時間半〜3時間程度の自然豊かな拠点に自由に滞在できる
セカンドホーム・サブスクリプションサービス
〈SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)〉。
2021年11月、第一拠点となる白樺湖と八ヶ岳のキャビンがオープンし、サービスが始動。
約1600人が初期入会申し込みを行い、
現在入会待ちの登録者数が約1500人以上なのだとか。
ライフスタイルの多様化が加速し、
より持続可能な社会が求められる現代を象徴するサービスとして、
早くも注目を集めるSANU 2nd Homeの全貌を知るため、八ヶ岳へと足を運びました。
最寄駅である甲斐大泉駅からタクシーで約2分。
雑木林が生い茂る山間の道を登る途中に見えてくるのが
〈SANU 2nd Home Yatsugatake 1st〉のキャビン。
理想の別荘を想起させるようなモダンな佇まいで、
「今晩はここに泊まるのか」と心が高鳴りました。
このキャビンは、SANUが安齋好太郎氏率いる建築チームADX社と手を組み、
極力環境負荷がかからないよう、原料調達から建設、運用、解体まで
再生・再利用し続ける仕組みづくりを軸に据え、
さまざまな工夫を凝らして建てられた「サーキュラー建築」というもの。
まず、見ての通りキャビンは木でつくられていますが、
これらはすべて岩手県釜石地方の森林組合から調達した樹齢50〜80年程の間伐材。
つまり、キャビンで使用されている木材は100%国産材です。
そして、ただ木を伐採して活用するだけでなく、食の概念「Farm to Table」のように、
調達から製材、加工、施工までを可視化し、
国産材の価値向上や普及にも努めています。
収益の一部はキャビン50棟分に相当する7500本の木の植林に当てられているそう。
キャビン50棟を建てるとCO2が650t(13t×50棟)排出されるそうですが、
この7500本の木が50年間でCO2を5250t(0.7t×7500本)吸収するので、
キャビンが増えればふえるほど日本の森が豊かになるという計算です。
SANUはこの循環の輪を環境再生型プログラム「FORESTS FOR FUTURE」と名づけ、
プロジェクト全体でCO2排出量より吸収量が多い
カーボンネイティブを実現したと発表しています。
この大きなシステムをサービスに取り込めるなんて、純粋にすごい。
昨年11月の地元向けの内覧会でも、地元の人がたくさん来場し、
とても好意的に受け入れてもらえたと話すのは、SANUのCEOである福島弦さん。
「『(SANU CABINは)俺が人生で見てきた建築物の中で一番かっこいい』
と言ってくださる方もいて、それが強く心に残りました。
地元の方にも愛されるプロダクトをつくることができ、とてもうれしいです。
また、SANUの環境への取り組みや信念に共感し、地域に受け入れていただけたことも、
非常にありがたく、印象に残っています」
そして、よく見るとキャビンは高床式。
この構造にすることで、風や水の流れを妨げることなく、
土壌への負荷が小さいという利点が。
そのほか、キャビンを建設する際は、事前に敷地内の木の本数や樹形を全て特定し、
伐採する木の本数を最小限にとどめていたり、
製造過程ではCO2を出すコンクリートや鉄の使用を通常より80%削減。
釘やビスを極力使わず、ほぼすべての部品を分解できるように設計されており、
パーツ交換やメンテナンスを行うことで、なんと50年も運用可能で、
キャビン解体後も別の場所に再建築できたりと、
本当に一から十までサステナブルで学びも多いサービスなんです。
そんなSANU 2nd Homeですが、到着してからもスムーズ。
クラウド宿泊運営システムsuitebookとWi-Fi型スマートロックRemoteLOCKによって
予約からチェックイン・アウトまでの手続きがアプリからスマホひとつで完結。
ホテルのフロントのようなものは存在せず、
宿泊者ごとに発行されるPINコードを錠口に入力すれば、
到着後すぐにキャビンに入ることができます。
「会員の皆さんには、自分の家の玄関を開けるように、
安心して滞在してもらいたいという思いがありました。
自宅でチェックイン・アウトが存在しないように、
キャビンもチェックインレスであることは、
サービス設計の時点から大前提としてありましたね」(福島さん)
開発当初は、業務の効率化やコロナ対策が目的ではなかったそうですが、
時代の流れが非接触型に向かい、奇しくもそのタイミングと一致。
「今後の展望は、体験の観点でいうと、キャビンには常駐するスタッフはいませんが、
現地に馴染みの店や知り合いができるなど、会員の方と地域の方のつながりを生み出せるような
きっかけづくりを考えていきたいと思っています。
ハード面では、オフグリッド型建築や石油燃料由来の建築素材を更に減らし、
国産木材の利用量を増やすことにも取り組んでいきたい。
運用面では自家発電の導入やごみの削減も視野に入れています」(福島さん)
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さて、いよいよ室内へ入ってみました。
室内は天井が高くとても開放的で、
空間やインテリアの洗練されたムードに心を奪われます。
まさに理想のセカンドホームそのもの。
キッチンは対面式のアイランドキッチンでIHコンロが3口、
冷蔵庫、電子レンジや炊飯器はもちろん、
調理道具やこだわり感じる調味料が充実しており、
のびのびと料理を楽しむことができます。
この日は全国から厳選された食材が集まる八ヶ岳の有名なスーパー「ひまわり市場」で
食材を調達し、夕飯はほうとう鍋に。現地で採れた野菜の美味しさに心底びっくりしました。
冷凍庫には〈ONIBUS COFFEE〉のコーヒー豆「エチオピアシングルオリジン」が。
備え付けのコーヒーミルで自らガリガリと豆を挽き、ハンドドリップしたコーヒーは
空気の澄んだ寒空の下で飲むと格段と美味しく感じられました。
また、ワインサーバーの中にある東京・兜町のレストラン〈caveman(ケイブマン)〉の
ヘッドソムリエである森本浩基さんセレクトの
ナチュールワイン(オレンジ・赤・白)をはじめ、
冷凍カレーやご飯、パスタ、パスタソースもキャビンで販売されているので、
気の利いたアルコールやもう一品欲しかったり、
料理をつくる気力がない方にもありがたい気配りが。
入り口のすぐそばにはペレットストーブがあります。
ペレットを流し込んで電源を入れるだけで、
あっという間に炎が上がり、お部屋が暖かな空気に。
この煌々と燃える炎もムードがあって引き込まれました。
こちらは洞穴のような洗面室。
このぶら下がっている石、実は照明や換気のスイッチなんです。
こんな遊び心のあるデザインになっているのもSANU CABINの魅力。
浴室にはスキンケアブランド〈OSAJI(オサジ)〉のナチュラルで香りのよい
シャンプー、コンディショナー、ボディソープが陳列。
デスクスペースも、なんだか洞穴のよう。
カーテンのように空間を途中まで仕切る薄い杉の局面壁は、日本の障子がインスピレーション源。
仕切りの向こう側の気配をぼんやりと感じられる仕様で安心感があります。
スピーカーメーカー〈Genelec〉の音とデザインともに優れたスピーカー〈G Two RAW〉。
このスピーカーからSpotifyにあるSANUオリジナルのプレイリストを流すのがおすすめです。
本は月に2回だけオープンする兵庫県の古書店〈books+kotobanoie〉を主宰する加藤博久さんのセレクト。
ふかふかでさらなる眠りを誘うベッド。
わざわざ洗いざらしのコットンが使われたベッドカバーの肌触りも最高でした。
ベッドボードにはクッションが入っており、
頭をほどよいところで固定でき、ベッドでの読書も快適。
室内にはホームシアタースクリーンもあるので、
カーテンを大きなスクリーンにして、ベッドでお気に入りの動画を観ることも可能。
大画面でリラックスしながら観る映画は別格です。
ちなみに、初期に建設されるキャビン50棟の電力は、
パートナー企業である自然電力株式会社より非化石証書(再エネ指定)が発行された、
実質再生可能エネルギー100%の電力〈Forest〉が使用されているそう。
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サービスがスタートして早数か月。福島さんに現在の心境を聞くと、このような答えが。
「たくさんのお申し込みいただきとても嬉しい反面、
現状ウェイティングの方も大勢いらっしゃるので、
早く新しい拠点を開発し、より多くの方に利用いただけるようがんばりたいですね。
SNSなどでは会員の皆さんのポジティブな反応を拝見でき、
非常にうれしく思っています!」
利用したお客さんからは、キャビンのリアクションもさることながら、
各エリアに初めて足を運んだ方も多く、地域に関する反応も数多くあったのだそう。
「ある会員さんからは、『ここからの夕日がとっても綺麗でした!』と、
私たちが知らないエリアの魅力を教えてもらう機会もありました。
SANUが広がることで、展開地域に通う会員の皆さんが
その土地の魅力をどんどん発見していってくださることが楽しみです」
一方で現状の課題は、新規拠点を開発し、多くの会員に滞在してもらうこと。
そして、地域や事業者と連携し、車所有者以外も
アクセスしやすくなる仕組みづくりを行うことだと話します。
最後に福島さん、PRの水谷彩さんにお気に入りの過ごし方と
お気に入りの場所についてうかがいました。
「まず、最低2泊以上予約します。
朝一番は朝陽を浴びながら散歩やランニングを楽しんだあと、
Zoomのコールに参加。この一連のフローは至福の時。
夜はパートナーと暖かいペレットストーブのそばで食卓を囲みながら、
美味しいナチュールワインで締めくくる!これにつきます。
また、一番のお気に入りの場所はペレットストーブ側のダイニングチェア。
ここに座り、大きな窓枠とその先の景観を眺めるのが好きです」(福島さん)
「近所の産直やスーパー(ひまわり市場)で野菜を買い、
日没前に近隣のビュースポットに立ち寄って夕暮れの山の写真を撮ってから、キャビンに向かう。
キャビンに着いたら料理をして、お腹がいっぱいになったら、プロジェクターで映画鑑賞。
映画に飽きたら熱いお風呂で温まる。十分温まったら、ビール片手に屋外に出て、
満点の星空をつまみに飲む! これが暫定ベストプランです。
SANU CABINの特徴とも言える、日本の窓社による特注の木製フレームの大窓。
その先に広がる景色の美しさはもちろん、
曲面壁に仕切られた空間とは対照的な直線の木枠にはスリットが入っていて、
造形としても非常に美しく、いつまでも見ていられます」(水谷さん)
想像以上に快適で気持ちのよい時間が流れた今回。
目が覚めたとき、目の前に広がる太陽の光の美しさを、今も忘れることができません。
会員になると、そんな魅力的な場所に何度も泊まれるんですから、
早々に人気が出るのも頷けました。
そして、SANUが描く自然との共生は学びに溢れ、我々の生活を豊かにするものばかり。
3月4日には〈SANU 2nd Home -- 山中湖 1st〉も開業。
ゆくゆくはアジアなど国外にも展開していきたいといいます。
ますます勢いをみせるSANUに、これからも目が離せません。
気になる方はぜひ、今のうちに会員登録の申し込みを。
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