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posted:2021.10.25 from:京都府京都市左京区 genre:ものづくり
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
京都の老舗工房に焦点を当てた展覧会『SHOKUNIN pass/path』が、
2021年11月6日(土)より、京都伝統産業ミュージアムでスタートします。
「職人は手の中に脳がある」と説いたのは、
イタリアのデザイナー、エンツォ・マーリ。
職人が言語を介さず、手でつないできた思想や哲学体系がある
ということを物語る言葉です。
そんなエンツォの言葉を、〈中川木工芸〉〉の中川周士氏と〈開化堂〉の八木隆裕氏が、
2017年のミラノサローネでの展示のタイトルとして採用。
それを起点に、本展覧会は始まることになったといいます。
「職人」という言葉は、
英語の「Craftsman」や「Artisan」とは異なる意味や性格を持ちます。
本展のテーマは、そんな「職人性」の探究によって、つくり手の現在地を示し、
これからの工芸の座標を映し出すことを目指すというものです。
今回選出されたのは、こちらの5つの工房。
ひとつはミラノサローネに参加した〈中川木工芸〉。
約700年前、室町時代ごろに大陸から伝来した木桶の製作技法。
中川木工芸は、その当時の伝統的な技法を用いて、
おひつや寿司桶など白木の美しい木製品を製作しています。
2001年には、2代目の清司氏が国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に。
近年は、デザイン性に富んだ革新的な作品制作にも挑戦し、
日本国内のみならず海外からも高い評価を得ています。
文明開化の1875年(明治八年)、英国から輸入されたブリキを使い、
丸鑵(マルカン)製造の草分けとして京都で創業した〈開化堂〉。
以来、一貫した手法で1世紀を過ぎた今も、
初代からの価値観と手法を守り、つくり続けています。
へこみや歪みができても修理し使い続けることができるため、
二世代、三世代にわたり同社の茶筒を使っているお客さんもいるそう。
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宇治の茶文化の歴史とともにある窯元〈朝日焼〉。
茶の湯の茶盌や煎茶の宝瓶を中心に茶の器をつくってきました。
同窯元の中心には、歴代の当主の名前を引き継ぎ、独自の技術をはじめ、
アイデンティティ、哲学、歴史を継承する文化が存在します。
現在は松林佑典氏が16世豊斎を襲名し、
茶碗や宝瓶が現代の朝日焼で位置付けとなるか再考したり、
世界の茶文化と接し、未来の茶文化の創出を目指し、活動しています。
京料理を支える調理道具として、料理人に長らく愛されてきた〈金網つじ〉。
「脇役の品格」という創作理念のもと、脈々と受け継がれてきた技術を継承しながら、
心地よく使える金網製品をつくるために、日々ものづくりに精進しています。
江戸寛政年間創業の〈小嶋商店〉は、京提灯の製造・販売を行う老舗。
竹割から紙貼りまで一貫した手作業で頑丈で無骨な小嶋式提灯をつくります。
江戸時代から代々伝わる製法をベースに、
「素材やフォルム、空間」と「提灯」との関係性を模索し、
提灯の新たな景色を創造、小嶋式提灯を伝承しています。
展覧会は、これら工房の奇跡をそれぞれの工房の視点で表現。
また、工芸を軸にしたシンポジウムやワークショップも開催されます。
「変わらぬことの大切さ」と「変えることの意味」。
対極となるこのふたつの意味について、
それぞれの工房の営みから思いを巡らせてみてはいかがでしょう。
information
SHOKUNIN pass/path
会期:2021年11月6日(土)〜2022年1月23日(日)
※休館日は11月29日、12月21、29日〜1月3日。
会場:京都伝統産業ミュージアム 企画展示室
住所:京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで。
観覧料:800円 ※18歳以下無料。
tel:075-762-2670
※社会状況に応じて、開催内容を変更することがあります。
*価格はすべて税込です。
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