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〈BATONER〉が描いた
山形の雪景色。
青山にフラッグシップショップが誕生

コロカルニュース

posted:2021.10.11  from:山形県寒河江市  genre:ものづくり / 買い物・お取り寄せ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Kanae Yamada

山田佳苗

やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。

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photo by daisuke shima

ブランド設立10年を間近に

1951年創業。以来、ニットの産地・山形県寒河江市で、
数々のメゾンやアパレルメーカーのニットを手がけてきた
ニットメーカーの〈奥山メリヤス〉

そんな奥山メリヤスが、2013年に満を辞してスタートさせたのが、
オリジナルブランド〈BATONER(バトナー)〉です。

全工程を自社工場で行なっているため、
価格に対して非常にハイクオリティで洗練されたニットが揃っていると、
国内はもちろん、海外でも高い評価を得ています。

東京・青山のキラー通り沿いにオープンした〈BATONER〉のフラッグシップショップ。

そんなBATONERのフラッグシップショップが、
このたび、東京・青山のキラー通り沿いにひっそりとオープンしました。

まるでギャラリーのように閑静な雰囲気の店内。入り口の目の前には自動編み機が。
規則的な機械音も、どこからともなく聞こえてきます。

このお店が誕生したきっかけは、なんとも偶然。

デザイナーで奥山メリヤスの社長である奥山幸平さんが
ブランド設立10年目を間近に店舗の建設を考えていた矢先、
通い慣れたキラー通り沿いにあった、お店の撤去を目にしたことから。

「昔からこの通りがなんとなく好きなんです。
表参道から歩ける距離だけど、落ち着きがあって、
家具屋さんやお花屋さん、美術館など、
ライフスタイルに寄り添ったさまざまなお店がある。
仕事合間のクールダウンにいつもこの辺を散歩しますね」

奥山さんは入居を決め、それから約1年でお店が誕生します。

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山形の雪の情景を描写した店内

山形の雪の情景を描写した〈BATONER〉の店内。

まずはじめに、トータルディレクションとインテリアデザインを
依頼したデザイン事務所とともに、山形の工場と現地を散策。

彼らから、山形の素材や原風景などをオマージュした提案があり、
「それらを切り取り店内に閉じ込めましょう!」ということで、
もともと奥山さんが描いていたアイデアとすり合わせ、ディテールを詰めていきました。

〈BATONER〉の店内は人工大理石〈テラゾー〉を基調とし、山形盆地の雪の情景を緩やかなアールを描いて表現。

店内は人工大理石〈テラゾー〉を基調とし、
山形盆地の雪の情景を緩やかなアールを描いて表現。

このアールは、職人が手でなめして描いたもの。
テラゾーは、高価な大理石の代わりとして生み出された技術ですが、
現在は職人が減り、かえって貴重な技術となりつつあります。

「いい素材からいいものは簡単につくれますが、
なんでもない素材をブラッシュアップしてかたちにするのは技術を要します。
そんなテラゾーと我々のスタイルがリンクしたため、このたび採用することにしました。
人の手で丁寧になめされたテラゾーの表面は、
よく見ると均一ではなく風合いがあって、独特の雰囲気を醸しています」

〈BATONER〉店内。棚や扉の持ち手など、要所々々で使われている木材は山形の神代杉(じんだいすぎ)。

〈BATONER〉店内。棚や扉の持ち手など、要所々々で使われている木材は山形の神代杉(じんだいすぎ)。

棚や扉の持ち手など、要所で使われている木材は、山形の神代杉(じんだいすぎ)。
樹齢1000年の樹木が倒木し、2500年もの間、地中に埋まっていたという、
山形で生まれ育った杉の歴史を物語る貴重な資材です。
経年変化で白くなった木の質感は、〈テラゾー〉と絶妙にマッチ。

ラックのアルミ材や椅子、スタンドライトはアルミ作家の永瀬次郎さんとともにデザインされたもの。

〈BATONER〉店内。ラックのアルミ材や椅子など、端正で無駄のないデザインが空間と美しく調和している。

〈BATONER〉店内。スタンドライトや椅子など、端正で無駄のないデザインが空間と美しく調和している。

空間デザイナーより提案のあった、アルミ作家の永瀬次郎さんとともに、
ラックのアルミ材や椅子、スタンドライトをデザイン。
アルミの椅子は、永瀬さんの作品をマイナーチェンジし、新たに作られたものです。
端正で無駄のないデザインが、空間と美しく調和しています。

〈BATONER〉入り口の目の前にある手横の編み機。

入り口の目の前にある手横の編み機は、奥山さんが一番最初に描いたアイデア。
編み物の基本「ニット・タック・ミス」の概念を忘るべからず、という想いを込めて、
また奥山メリヤスの歴史を物語る象徴的なプロダクトとして、お店の中央に大胆に設置されました。
やはりインパクトがあって、通行人は思わず目を向け、
子どもが気になって入ってくることも。まさにお店の看板です。

その編み機で編まれた生地は、商品を購入したお客様のショッパーの口を結ぶ紐となります。
つまりその紐は、お客様と工場を結ぶ存在とも言い換えられる、
お店にとって重要な意味合いを持つものです。

〈BATONER〉店内では工場の機械音がBGMとして流れる。

また、奥山さんがアイデアのひとつとしてあたためていたのが、
工場の機械音を店内のBGMとして流すこと。
空間デザイナーと相談し、ニットのようにふくよかで優しい音を奏でる
真空管アンプを空間に合わせてデザインされました。

お店を訪れた人からは、「ブランドのイメージとぴったり」だとか、
「商品とリンクしたミニマルな空間でギャラリーみたい」などの声が上がっているそう。

「余計なものを削ぎ落とし、素材そのものが持つムードを生かしています。
素朴な中に温かさと冷たさが同居し、どこか懐かしさもある。
そんな山形の冬の情景が浮かんでくるような空間です」

技術の、文化のバトンを繋ぐ

技術の、文化のバトンを繋ぐ拠点〈BATONER〉のフラッグシップショップ。

奥山さんはこのお店で、ただセーターを売るだけじゃなく、
さまざまな取り組みも行なっていきたいといいます。

「店頭で洋服のケアの相談に乗ったり、
メンテナンスサービスのようなものもやりたい。
お客様の要望を臨機応変に取り入れたいですね。

そしてゆくゆくは、セーターづくりを体験するツアーを行ったり、
山形の特産品を自分たちの目を通して紹介したりすることで、
僕らが継承すべき事柄をみなさんに共有したい。

それは、「バトンを継ぐ者」という意味が込められた
〈BATONER〉のブランド名ともリンクしますよね。
山形のさらなる輪の広がりに貢献できたら幸いです」

奥山さんの研ぎ澄まされた美学、そして寒河江に宿る素晴らしきニット文化。
それらの断片がモダンに表現されたこの空間は、
奥山メリヤス、そして同地の文化を次へと推し進める拠点として、
静かに、そして確かに運営されていくことでしょう。

もうまもなく、秋、そして冬へと季節が移り変わります。
ファッションの楽しい季節です。

「これからニットの本格的なシーズンが到来します。
ぜひお店へBATONERのニットを体感しに来てください」

information

map

BATONER FLAGSHIP STORE 

住所:東京都渋谷区神宮前3-41-3 吉田ビル1F

営業時間:12:00〜20:00

定休日:水曜日

tel:03-6434-9009

Web:BATONER 公式サイト

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