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posted:2021.9.28 from:熊本県上益城郡山都町 genre:食・グルメ
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
全国各地にある、地域名産を使ったアイスクリーム。
今回ご紹介するのは、その中でも新鋭の
〈BLANCO ICE CREAM(ブランコアイスクリーム)〉。
熊本県山都町出身のアイス好きな若者3人が約1年ほどの試行錯誤を経て、
2021年5月に立ち上げたアイスクリームブランドです。
メンバーは、現在東京在住、代々木上原にある
コーヒーショップ〈PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)〉の
スタッフでもある吉山郁弥さん、
郁弥さんの弟で、BLANCO ICE CREAMの代表であり、
山都町で作業療法士としても活動する吉山龍弥さん、
彼らの従姉妹で、主にアイスの製造、開発を担当する藤川里奈さんの3人。
地元の食材を用いた無添加のアイスクリームは、
日本はもとより、海外からの問い合わせも頻繁にあるのだそう。
だってこのかわいらしい見た目、こだわりの詰まった魅力的なフレーバー。
おまけに雑誌『POPEYE』でも取り上げられているときたら、
おしゃれなフーディたちが放っておくわけはないでしょう。
今回は、そんな気になるBLANCO ICE CREAMの誕生秘話から、
PADDLERS COFFEEの新店で出されるメニューまで、
あれこれ兄の郁弥さんにお話を伺いました。
ことの始まりは、弟・龍弥さんのUターン。
大学院でMBAを取得後、地元に貢献できるビジネスがやりたいと帰郷。
それをきっかけに、東京にいる兄の郁弥さんとふたりで事業を立ち上げることに。
「最初は地元のフードロス削減に貢献できるビジネスがやりたかったんです。
しかし、調べてみるとすでに東京のさまざまな企業が着手していて」
それから郁弥さんはポートランドへ旅をした際、
〈Salt & Straw〉というハンドメイドのアイスクリームショップに出合います。
〈Salt & Straw〉はコーヒー豆のかすや廃棄野菜・果物を使ってアイスづくりを行う、
アメリカで人気のアイスクリームブランド。
郁弥さんはそんな社会的意義があり、モダンで洗練された同店に心惹かれました。
その後、龍弥さんもSalt & Strawの本を手にしていたという偶然が。
こうしてふたりは同店のコンセプトに感銘を受け、従姉妹の里奈さんも交え、
フードロス削減にも貢献できるアイスクリームブランドの立ち上げを目指します。
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昔からお風呂上がりにアイスを食べていたという、アイスが大好きな3人。
龍弥さんが経営などの全体見る係、
里奈さんがアイスクリームの製造開発、郁弥さんが販促やプロデュース周りを担当。
3人それぞれの得意分野を活かした役割分担です。
アイスクリームの製造は、郁弥さんと龍弥さんの実家の裏庭にファクトリーをつくり、
そこで、里奈さんとふたりの母、和代さんが行っています。
「山都町は本当に自然豊かで、身近に良質な食材が多いんです。
地元の農家さんや同級生がやっているお茶農園など、
顔の見える農家さんの廃棄食材をできるだけ使って、アイスクリームをつくっています」
そのような食材を用いて作られたのは、大人から子どもまで楽しめる、
飽きのこないアメリカンクラシックなフレーバーです。
左上から時計回りに、看板商品のひとつ、
阿蘇でのびのび育った乳牛の牛乳を贅沢に使用した「クラシックミルク」。
山都町の中畠農園のいちごの甘さと酸味が楽しめる「ストロベリークリームチーズ」 。
宇土半島の江口農園の甘夏ピューレと甘夏ピールのオリーブ漬けを
塩バニラアイスクリームに混ぜ込んだ「甘夏オリーブ塩バニラ」。
山都町の特産品・矢部茶とホワイトチョコのハーモニーが魅力の「矢部茶ホワイトチョコ」。
江口農園の晩柑と中畠農園のいちごを合わせた「晩柑ストロベリーソルベ」。
ミルクアイスに自家製塩キャラメルソースをたっぷり混ぜ込んだ「塩キャラメルミルク」。
このほかに、ビーガンフレーバーの「塩麹ココナッツミルク」、
「ストロベリーココナッツミルク」も展開があります。
このアイスクリームが完成するまで、保健所の審査や、
仕入れる牛乳の変更など、度重なる苦労があったそう。
「とっておきの食材ばかりなので、
ちゃんとつくればおいしいアイスクリームになるという確信がありました。
なので、自分たちが納得するまで何度も試作を重ねましたね」
両親からも最初は「300円のブランドのアイスでもあんなにおいしいのに、
400、500円でアイスを売るなんて、それ以上のものをつくれるの?」
と大きく反対されたといいます。
「地元は有機農業が盛んで、食材のポテンシャルは非常に高いのに、
出回っているアイスはコンビニやスーパーなどで売られる一般的なものばかり。
〈BLANCO ICE CREAM〉の、地元食材でこんなにもおいしくて
体にもやさしい無添加のアイスクリームがつくれるという事実から、
より地元食材を用いた食品開発の可能性に触れてほしいなと思いました」
そうして、周囲の多くの協力のもとにできあがったアイスクリームは、
まだ公に発表してから半年ほどですが、
地元・熊本ではもちろん、郁弥さんのいる東京で着々と支持を集めています。
「地元のおばちゃんがコンビニのアイスを買うのをやめて、うちに来てくれたり、
PADDLERS COFFEEのお客さんもたくさん買ってくれて、生産が追いつかなかったり。
アイスを買って、食べて、感動してもらえる。
その一連の流れにいつも胸が熱くなります」
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BLANCO ICE CREAMの目指す姿は地元・山都町の通潤酒造。
ここは100年続く老舗酒造ながら活気があり、地元の人材を雇ったり、
地元のクリエイターとコラボしてプロモーションも行っていたりと、
地元の雇用創出にも貢献している優良企業です。
「自分たちも通潤酒造さんのように、地元に深く長く腰を下ろし、
山都町の課題解決や繁栄に繋がる事業を行うことが前提条件としてあります。
また、地元の小規模で高齢の農家さんの作った野菜を
市場よりも高値で買い取らせてもらったり、
地元の障害を持つ方のアート作品とコラボしたパッケージを製造したりと、
社会福祉に関わるプロジェクトにも積極的に取り組んでいきたい。
そのために今はしっかりとした基盤作りを進めているところです」
そして、ゆくゆくは東京をはじめ、
ニューヨークやポートランドなどへも出店したいと郁弥さんは語ります。
「海外のアイスクリームショップは、コーヒーショップに行くような感覚で、
お酒を飲んだ後などに気軽に足を運べる場所です。
自分たちもそのような、
生活のすぐそばにあるアイスクリームショップをつくれたら」
山都町から日本、そして世界へと広がるアイスの輪。
BLANCO ICE CREAMの夢は広がります。
「自分たちがこの事業を通じて目指す最終的な目標は、
30年後には無くなっているかもしれない山都町の未来を
少しでも良い方向に変えることです。
そのために、街の変わりゆく風景と真剣に対話しながら、
この街に合ったペースで事業を少しづつ大きくさせることが重要だと感じています。
時間はかかっても、地元の方とともに歩み、
成長していく姿勢を大切にしたいです」
山都町の風土を詰め込んだBLANCO ICE CREAM。
これは3人の大きな挑戦であり、山都町の希望でもあるように思います。
information
BLANCO ICE CREAM
*価格はすべて税込です。
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