news
posted:2021.3.24 from:京都府京丹後市 genre:ものづくり
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
1300年以上もの絹織物の歴史がある丹後地方。
そんな丹後の地から、300年前に誕生した〈丹後ちりめん〉。
凹凸状の「シボ」のある美しい発色と光沢で、
長きにわたり日本の着物産業を支えてきました。
そんな〈丹後ちりめん〉を展開する京都の工房と、
世界各国の優秀なクリエイターがコラボレーション。
〈TANGO CREATION PLATFORM(丹後クリエイションプラットフォーム)〉
と題した今回のプロジェクトは、経済産業省近畿経済産業局
「令和2年度地域企業イノベーション支援事業」として実施されたもの。
熟練の職人技と次世代の感性を持つクリエイターがタッグを組むことで、
新たな領域の〈丹後ちりめん〉を模索するという試みです。
今回参加したのは、国内外の4名のクリエイター。
まずひとりは、ヨーロッパのラグジュアリーメゾンで経験を積む中尾隆志さん。
中尾さんのクリエイションのスタイルは「現代的なクラシック」。
過去の古いイメージ、古着、アート、などをインスピレーション源に、
モダンとクラシック、西洋と東洋、モードとストリートといった相反する要素をミックス。
現代的なモードに落とし込んだデザイン手法が特徴です。
「丹後ちりめん300年の今回の企画においては、
年齢、人種の枠を超え、より多くの方々に丹後のものづくりを知っていただきたい
という“想い”がコンセプトになりました。
そのためあえて和柄ではなく、伝統的ながらも
世界的にポピュラーなヨーロッパのタータンチェックを
着物地の技術とかけ合わせてみました。
プロダクトも男女兼用、年齢を問わず、
幅広い層が身に纏えるようなものにしています」
〈Hermès〉、〈KENZO〉、〈Pierre Freyamong〉などでキャリアを積み、
現在は自身のデザインスタジオ〈STUDIO KAERAÑ〉にて、
テキスタイルの開発、トレンドコンサルティング、インテリアデコレーションから
ファッションアクセサリー、高級ジュエリー、ラグのデザインまで
幅広い業務に従事しているマチルダ・ロザンヌ・ブレジオンさん。
現在は京都を拠点に、日本で活動しているマルチクリエイターです。
「2016年に初めて丹後に訪れた時に、
まるで自分の家にいるように感じました。
実際に丹後は私の故郷であるフランス西海岸の
ブルターニュにとてもよく似ています。
2020年の夏、この新たなプロジェクトが始まり、
Zoomでビデオ会議の機会を持ち、リモートで漁師を「訪問」する機会もありました。
そのバーチャルツアーでは、
彼が漁に使用する道具の網を見ることができました。
その光景は、ブルターニュに戻るたび、
漁網を見ては写真を撮ることがどれほど好きだったか、
そしてその複雑さと色にどれほど驚かされたかを思い出させるものでした。
そして、TE.ORIコレクションに取り組むなかで、
この新しいプロジェクトが、関わる人たちの間に
真のつながりを生み出していることに気づきました。
そしてわたしは漁網の模様に取り組むことを選びました。
入り組んだ複雑で美しい模様が持つ美的側面だけでなく、
このプロジェクトのつながりと絆をよく映し出していると思ったからです。
結び目をどんどん増やすことで、
つながりと絆はさらに大きく、強くなっていくのです」
Page 2
さまざまなメディアを用いて、サステナブルなアプローチの
作品を制作するオロール・ティブーさん。
デザイナーとしては、工芸、身体、空間の関係性の中で常に対話し、
クリエーターとしては、ダンス、音楽、オペラ、
インスタレーションなどのパフォーミングプロジェクトも行っています。
「中世の時代、まだポケットが考案される前、
alms purseは男女問わず身に付ける、小さな平たいバッグで、
貴重品や日々必要な物を持ち歩くための布の服飾品でした。
また、それは施しのための貨幣を入れるものでもあり、
豪華な装飾で、時にはロマンティックな恋の物語の一場面が描かれていました。
私はこの西洋の文化的遺産にインスピレーションを受けながら、
丹後の職人のユニークで高い技術を表現した
日用的に使えるバッグを制作したいと思いました。
こうして天然繊維の美しさと、
丹後の生地の巧みな側面の組み合わせを強調しています。
このバッグは平面から立体へと展開するので、
ワードローブや荷物の中に簡単に収納でき、
着飾るだけでなく、世界中を旅する際にも適しています」
※alms purse(オモニエール)…
オモニエールとは、装飾が施された
小型の布製の手提げバッグや、巾着型バッグのこと。
起源は中世に使われた腰から下げられた布製の袋で、
語源はお布施や施しの意味があり、巾着袋の意も持つ。
衣類中に取り込まれたものはポケットになり、
バッグとしては現在の手提げ袋の原型と言われる。
キム・スヘイさんは、レザーを扱うことを得意とする、
パリを拠点に活動する韓国人デザイナー・アーティスト。
「Carry an Artwork」は、彼女のデザインの根幹にあるコンセプト。
彼女が制作する現代アートと建築に触発されたバッグは、
建設的でクリエイティブな佇まいです。
「丹後ちりめん生地のコアバリューを、
「きもの生地」と「サスティナブル」であること捉え、
そのふたつのアイデンティティをデザインに織り込みました。
日本の衣装はフラットパターンを使用していて、
それぞれの体によってまったく違うように見えると同時に、
シンプルで、エコロジカルな側面があります。
テトラパックは、パッケージデザインにおけるすばらしい発明であり、
シンプルで、素早く形を成形できる点は、着物と類似しています。
この類似性が、今回のバッグ制作のインスピレーションとなりました。
美しいだけでなく、非常に機能的であり、ユーザーのニーズに合わせて、
リュック、ショルダー、クロスバッグとして身に纏うことが可能です」
また、これらのなかから、マチルダ・ロザンヌ・ブレジオンさんの一部作品と、
彼女が手がけるアパレルブランド〈TE.ORI〉といった、
彼女が日本で制作したプロダクトの展示が4月16〜18日に京都のアトリエで行われます。
ご興味ある方は、こちらもぜひチェックを。
information
information
TANGO CREATION PLATFORM
Feature 特集記事&おすすめ記事