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posted:2021.3.10 from:長崎県長崎市 genre:アート・デザイン・建築
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
隈研吾建築デザインで知られる長崎県美術館で、
現在、隈研吾の大規模個展
『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』が開催されています。
高知、長崎、東京と三都市を巡回する本展。
隈建築のなかから公共性の高いものを中心に36件を選定し、
それらを「孔」「粒子」「やわらかい」「斜め」「時間」
という隈氏による5原則によって分類。
模型や写真、モックアップといったかたちで展示し、
すべてに隈氏の作品解説がついています。
36件のなかには、新築の庁舎のような大きな公共建築だけでなく、
リノベーションによる居酒屋のような小さな建築も。
隈氏が考える公共建築の概念を、さまざまな角度から知ることができるでしょう。
そして、瀧本幹也、藤井光、津田道子、マクローリン兄弟などのアーティストとの、
映像によるコミッションワークも展示。
こちらの会場には、360度VRもあります。
そのほか、本展では隈氏の新たなリサーチプロジェクト
『東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則』を発表。
現代の建築的な提案は、高度経済成長期のように都市を上からではなく、
下から見て行うべき、という視点で隈氏が着目したのは「ネコ」。
デザイン・イノベーション・ファーム〈Takram(タクラム)〉と協働し、
神楽坂でのフィールドワークやGPS測定のリサーチ成果を、
3DCGやプロジェクションマッピングを用いて展示しています。
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また、公式サイトでは、今後隈氏が被災地に設計した建物に関係する人々への
復興と建築に関するインタビューを近日中に公開予定。
ここに登場するのは、南三陸町長の佐藤仁氏、
南三陸まちづくり未来代表の三浦洋昭氏、浜田醤油研究開発責任者の浜田浩成氏など、
実際に被災地で建物を利用していたり、管理している人々。
ただのインタビューではなく、オーラル・ヒストリーの観点から、
普段フォーカスされづらい、建物の利用者の生の言葉を記録することで、
建物がどう使われているのか、利用者はどう思っているかなどを
可視資料として変換しました。
「ノイズが付与されるのは、彼らがその建物に不満を抱いているからではなくて、
むしろ、好んでいるうえで、よりよくしようと思ったため」
インタビュー中に隈氏がそう語るように、それぞれの営みから生まれた生の声は、
著名な建築家の建物を賛賞する声ばかりでなく、
不平不満的なものも含まれているかもしれません。
しかし、それらは隈研吾という建築家の個人史、
現代日本の建築史、被災地の地域史といった、
さまざまな文脈と紐づき、次の時代へとつなぐ重要な資料にもなり得ます。
現代日本を代表する建築家の個展から考える公共性。
時代が大きく変わろうとしている今、この展覧会でヒントを見つけてみませんか?
information
隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則
開催期間:開催中~2021年3月28日(日)
会場:長崎県美術館
住所:長崎県長崎市出島町2-1
TEL:095-833-2110
開館時間:10:00~18:00
※展示室への最終入場は閉館30分前まで。来館の際は、長崎県美術館ウェブサイトにて最新情報を要確認
休館日:第2・4月曜日
観覧料:一般 1300円、大学生・70歳以上 1000円、高校生以下無料
アクセス:路面電車出島電停徒歩3分
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