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posted:2021.2.12 from:富山県高岡市 genre:ものづくり
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
昨秋にコロカルでもご紹介した
富山県高岡市の伝統産業の工房とクリエイターが、
日本の手わざの新たな価値創造と関係人口づくりを目指す
〈Creators Meet TAKAOKA 2020〉の参加クリエイター募集。
しばらくして、気鋭のクリエイターと工房とのタッグが決まり、
プロトタイプの制作が行われたとのお知らせが届きました。
今回、4組の枠に20組の応募があったのだそう。
その中からプロダクトデザイナー、新素材開発者、音楽家など
さまざまなジャンルのクリエイター5組を選出。
工房6社とのマッチングが行われ、
晴れて以下のプロダクトの制作がスタートしました。
歴史ある高岡の金属鋳造メーカー〈能作〉と組んだのは、
2019年度の〈Creators Meet TAKAOKA〉のモデルツアーにも参加した、
〈Hamanishi DESIGN〉のプロダクトデザイナーの鎌田修さん。
手がけたのは、金属を溶解して形にする高岡銅器の
鋳造工程をモチーフにした、ポップな「燭台」。
上部は鏡面加工、下部は鋳肌がそのまま使われているのが特徴。
真鍮のさまざま表情とモダンなフォルムが目を引きます。
「錫のイメージが強い能作さんのなかで、
この燭台が真鍮の商品を代表するものになればうれしい」と鎌田さん。
デザインを担当した濱西さんは、能作のデザインリテラシーの高さと
プロダクト開発のスピード感に驚いたとのこと。
現在和蝋燭も開発しており、燭台と蝋燭のセット販売も検討しているそう。
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漆器の企画問屋〈漆器くにもと〉のコラボレーション相手は、
三井化学社内のメンバーによって立ち上げられた有志グループ
〈MOLp(Mitsui Cemicals Oriented Laboratory)〉。
〈ルイ・ヴィトン〉、〈フェンディ〉、〈アンリアレイジ〉などの
有名ファッションブランドとも協業し、
実験的な製品を発表、そのたびに話題となっている同社。
3つの提案があり、現在サンプル試作が行われているのは、
経年変化を楽しむ漆のアクセサリー〈縁EN・輪WA〉。
三井化学が開発した海のミネラルから生まれた樹脂〈NAGORI™ 樹脂〉と、
植物由来のウレタン樹脂〈STABIO®〉で成型したアクセサリーに漆を塗布しており、
今までの漆製品にない、新たな質感を目指し、制作が進んでいる模様。
そのほか、和紙と三井化学のポリオフィレン合成パルプ〈SWP®〉と漆のコラボアイテム企画、
〈漆器くにもと〉の地場ネットワークを活かした金属製の防音ボードの台座制作も進行中。
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高岡銅器産地で一番の規模を誇る企画問屋〈竹中銅器〉と組んだのは、
プロダクト&ファッションデザイナーの手嶋隆史さん。
4方向から金属鋳造の表面加工の可能性を探り、そのアイデアを一旦すべて具現化、
そこから製品化に進めるものとそうでないものとを精査し、実際に販売していくそう。
〈Re Produce〉:「つくらないでつくる」「解体と再構築」。
既存の香炉や花器などを切断し、いくつかの製品に再構築。
〈TO YA MA〉:黒部渓谷を表現したトレイと箸置きのセット。
トレイの青は銅の緑青、箸置きの赤は漆。
高岡の産地内でつくりだせる色や質感の幅広さを見せています。
〈Still we live〉:外部を磨いたソリッドな塊の中に、内部はひび割れた緑青の花器。
ヒビの入った金属塊にはかなりの迫力がありそう。
使いながら緑青の色を育てていくおもしろさもあります。
〈Gradation〉:鏡面加工から、緑青による着色だけでない質感の
グラデーションがポイント。
花器またはタンブラーを想定しているとのこと。
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銅器メーカー〈佐野政製作所〉と、20年にも渡り、アメリカのプロダクト業界の
一線で働いてきたデザイナー・芳村朗さんらチームがつくるのは、
三次元で表現した国旗のオブジェ〈View Point〉。
完成品は真鍮製を予定しており、着色せず、表面加工で色の違いを表現。
大きさは6センチ×4.3センチほど。
「あらゆる角度から彫刻的にみてほしい。
ある物事を違う角度からみたらどうなるんだろうと、
このオブジェが視野が広がるきっかけになれば」と芳村さん。
「イメージの枠外から来た、まったく予想していなかったアイディア。
絶対に世の中にない、すごくいい、ぜひやりたい。
独特なカーブや段状の形など、自由に形をつくれる鋳造の良さも生きる。
持った時の金属の重さも感じてもらえたら」と佐野さん。
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音楽クリエイター/アーティストの若狭真司さんが主宰する
〈未音(ひつじおと)制作所〉は、今回ふたつの工房との協働。
ひとつは、職人の数が全国でも10人に満たない
「おりん」をつくる鍛金の〈シマタニ昇龍工房〉。
おりんを鳴らした音とおりん制作時の音(焼成音など)のみを
プロセッシング(音の波形の一部分を切り取ったり、表情を変えたりすること)し、
おりんをつくる過程をコンセプチュアルに表現した5曲の楽曲を制作しています。
この制作のため、2020年11月に高岡・伏木にある古刹・勝興寺で、
手のひらサイズから巨大なものまで、多数の「おりん」を持ち込んでレコーディングを敢行。
勝興寺でのオンラインライブおよびインスタレーションの発表をはじめ、
動画・写真のアートワーク〈Vague〉も制作し、CDと合わせて商品としての流通も目指すのだそう。
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若狭さんのふたつ目のコラボ相手は、
菅の栽培から加工までを一貫して手がける〈高岡民芸〉。
福岡(高岡市・旧福岡町)の菅笠は、
時代劇や全国の祭などの需要に対し、シェア9割を誇りますが、
もともと農閑期の内職だったため、工賃が安く、高齢化と後継者不足が深刻化。
そんな中、〈高岡民芸〉の中山煌雲さんは、産地唯一の若手として、
アートピースとしても飾りたくなる菅笠づくりも行っています。
今回制作されるのは、菅製のスピーカー。
写真は骨組みで、これから菅が編み込まれていくとのこと。
プロダクトデザインは、〈Vague〉のアートワークも担う黒野真吾さんが担当しています。
どれも、両者の持ちうる技術や才能がぶつかり、今までにないものばかり。
ここからさらにブラッシュアップされ、どのようなプロダクトに仕上がるのでしょう。
ぜひ、今後の展開にも注目してみてください。
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