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posted:2020.12.7 from:石川県小松市 genre:ものづくり
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
日本各地で継承される、その地域特有の稀有な伝統技術。
今、その技術に目を向け、世界をまたにかける、
すばらしいブランドがあります。
名前は〈LASTFRAME(ラストフレーム)〉。
手がけているのは、国内外のさまざまな
ファッションブランドのデザインをしている、
フリーランスのデザイナー、奥出貴ノ洋さん。
同ブランドは、「世界最高レベルの日本の伝統技術を未来に継承する」
をコンセプトに、奥出さんの現代的な感覚を活かしつつ、
日本各地の伝統技術を用い、国・時代・シーズン・性別などを越え、
メイドインジャパンのラグジュアリーブランドとして世界に発信しています。
2018年秋にスタートしたばかりですが、
2021年プレ・スプリングコレクションより、
イギリスの老舗ファッションECサイト〈MATCHESFASHION〉や
2021年スプリングコレクションからは、
ロンドンのセレクトショップ〈Browns〉での取り扱いが決まっており、
UKヴォーグのエディターも大絶賛しているとか。
まさに世界で評価されつつある、新鋭ジャパニーズブランドです。
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代表的なアイテムはスカーフとバッグ。
グラフィカルな絵柄が魅力のスカーフはブランドのシグニチャーアイテムで、
毎シーズン柄と配色が異なる新柄がリリースされています。
生地は、石川県小松市にある、120年以上の歴史を持つ
シルクジャガードの老舗〈小倉織物〉のオリジナル。
織り柄は〈小倉織物〉が特化している紋織物で、
奥行きがあって高級感のある仕上がりです。
現在、日本で洋装のシルクの紋織物を織れるのは、なんとこの工場のみ。
海外のハイブランドもこぞって依頼している工場で、
一流ドメスティックファッションブランドのアイテムも手掛けているとか。
その生地に、プリントは横浜の伝統的なスカーフの製造技術を取り入れ、
職人による手巻き縫いが施されています。
絵柄は奥出さんのオリジナルな感性を生かしているそう。
幅広い年齢層に受け入れられつつ、高級感があってユニーク、
かつ、つけたときにしっくりくるなど、たくさんのこだわりが詰まっています。
「ありとあらゆるものを通ってきましたが、
好きなデザインは削ぎ落とされたすごくミニマムなもの。
ただ、スカーフはシンプルすぎると面白味がないので、
さまざまな要素を組み合わせています。
この絵柄をつくるのはすごく大変で、考えては寝かし、
考えて寝かしを繰り返しているんです。
すぐに納得いくものが完成するときもありますが、
客観性を持たせたいので、じっくりとデザインしていますね」
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一方のバッグは、2020年春夏より発売された人気アイテム。
こちらも、国内に数台しかない特殊な編み機を使っており、
通常の編み機だと再現できない細やかな柄表現が可能な特性を活かした、
インターシャ編みの伸縮性の高い生地が特徴です。
この技術は世界最高レベルですが、職人の高齢化による後継者不足で、
特殊な編み機を扱える職人も編み機と同様に少なく、
今後の製造が困難な状況にあるといいます。
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最後に、奥出さんに現在の想いをお話いただきました。
「人の手でつくられるものなので、予期しないことも発生しますが、
大変だと思ったことは一度もありません。
職人さんとの経験が、すべて今につながっているからです。
また、シーズンレスでセールにならないものづくりを目指し、
毎回新作を発表するのではなく、定番商品となりうるアイテムの展開を考えています。
クオリティの高いプロダクトは、長い年月使うことができる。
それが今我々にできるサステナブルだと思っていて、社会で必要なこと、
さらに職人さんのためにもなると感じています。
そして、これはブランド設立当初から変わりませんが、
自分が心底ワクワクするものしか作らないと決めています。
つまらないと思ってつくったものは、人にもそれが伝わるからです。
自信を持ってつくり上げたアイテムは、僕と同じくらい
ワクワクを感じてくれる人が、世界に少なくとも何人かは居るはず。
現在、Instagramを通じて、連日世界中から問い合わせが来るようになりました。
これからも自分を信じて進んでいくしかないと思っています。
「LAST」には「最後」という意味のほかに、
「続く、存続する」という意味もあります。
「最後(ラスト)」となりつつある日本の職人技術を
「フレーム」に収めてデザイン・プロダクトとして昇華させ、
「存続(ラスト)」させていく〈LASTFRAME〉の名前の由来の通り活動することで、
世界最高レベルの日本の伝統技術を未来に継承していきたいですね。
もしこの記事を読んでいただいた工場さんや職人さんで、
一緒に物づくりがしたいという方がいればぜひご連絡いただきたいです。
基本的には職人さんありきで成立するブランドなので、
ビジョンが一致すればすてきなものができると思っています」
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