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青森の民俗資料や
文化財を用いた展覧会
『いのちの裂け目―布が描き出す近代、
青森から』

コロカルニュース

posted:2020.8.13  from:青森県青森市  genre:アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

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Kanae Yamada

山田佳苗

やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。

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撮影:Delphine Parodi 画像提供:青森公立大学 国際芸術センター青森

豊かな布文化の地・青森から発想された3人展

例年凍てつく寒さに見舞われる青森。
古くから青森では、そんな風土から身を守るため、
衣食住のさまざまな文化が生まれ、今も継承されています。
特に“衣”においては、裂織や刺し子、ボロなど、
独自の風土から立ち上がった、豊かな布文化が存在します。

現在、そのような背景を持つ場所、
青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)で、
展覧会『いのちの裂け目―布が描き出す近代、青森から』が
8月30日(日)まで開催中。

碓井ゆい、遠藤薫、林介文(リン・ジェーウェン/ラバイ・イヨン)
3人の現代美術作家による、
青森市教育委員会所蔵の民俗資料や文化財が用いられたそれぞれの作品は、
戦前の女子教育や戦争と花火、台湾先住民族と日本の関わりなどの
さまざまな物事が交差する、非常に示唆に富んだものとなっているようです。

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縫い、裂き、編んで表現された壮大な作品

以前より、布を用いて作品制作を行っていた碓井、遠藤、林。

碓井ゆい《景色をならう》 2020年

碓井ゆい『景色をならう』2020年

1980年東京都生まれ、埼玉県在住の碓井ゆいは、
趣味の手芸などの身近なテクニックや素材を用いて作品を制作しているアーティスト。
現代社会において、ジェンダーや育児などの個人的な経験や疑問を社会的・政治的なもの
として捉え、文献資料やインタビューによるリサーチを重ね、作品を生み出しています。

今回制作された作品『景色をならう』では、
民俗資料にあった女子用理科教科書から、女子教育に着目。
壁に飾られた津軽に伝わるこぎん刺しと西洋のクロスステッチの対比、
そして机上の理科の教科書から、戦前の女性への固定概念の内面化が
どう行われてきたのかを、私たちに無言で訴えかけます。

遠藤薫《閃光と落下傘》 2020年

遠藤薫『閃光と落下傘』2020年

遠藤薫は、1989年大阪府生まれ、ベトナム・ハノイ/大阪府在住の工芸・美術作家。
生活に根差した工芸の本質を現代美術的な視座から探るべく、
テキスタイルに複雑な社会的事実が織り込まれていると考え、
布を集め、使用と修復の行為を繰り返し、作品に落とし込んでいます。

みんなが爆弾なんかつくらないで
きれいな花火ばかりをつくっていたら
きっと戦争なんか起きなかったんだな ー山下清

今回遠藤は、画家・山下清の言葉に触発され、
戦争と花火に関するインスタレーション『閃光と落下傘』を制作。

時に人の命を助け、時に人を殺す道具として用いられたパラシュート。
また、花火は夏の風物詩ですが、人によって戦争を追想するものにもなり得ます。
この、文化財に眠っていた衣服をはじめ、
全国から集めた古着を引き裂き形づくった花火のようなパラシュートは、
複雑に交差する物事の多面性や平和への祈りなどを物語っているかのようです。

林介文(リン・ジェ―ウェン/ラバイ・イヨン)《解縄(ときなわ)》 2020年

林介文(リン・ジェ―ウェン/ラバイ・イヨン)『解縄(ときなわ)』2020年

林介文は1982年生まれ、台湾・花蓮出身、同地在住のアーティスト。
台湾先住民の太魯閣(トゥルク)族の一員として、伝統的な織物の技法を用い、
ジュエリーデザインの知識も生かした彫刻的なインスタレーションを制作しています。

『解縄(ときなわ)』は、台湾と日本の古布、彼女の母方の家にあった時計と鏡を用い、
自身のアイデンティティや生命の循環などをテーマとしています。

時計と鏡、幾十にも編まれ、途中からほぐれたロープ。
『解縄』は、家系で唯一の日本人の曾曾叔父、
そして、過去に日本が台湾を植民地支配をしていた事実など、
歴史や自身のルーツへの複雑な思いを整理し、
確かな意味を見出す行為のようにも見えます。

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近代以前から地続きでつながる普遍的な問い

遠藤薫《閃光と落下傘》 2020年

遠藤薫『閃光と落下傘』2020年

今回展示を企画された、青森公立大学国際芸術センター青森の
学芸員である慶野結香さんに話を聞きました。

「借りてきた文化財は、第二次世界大戦頃まで使用されてきたものばかりで、
時代区分的には、江戸時代末期から明治大正を超えて昭和初期の近代です。

今回3名それぞれが、植民地主義や西洋化と教育、戦争といった題材を扱っていますが、
それらは近代だけではなく、それ以前から現在もつながりのある事柄です。
ぜひ、各作品の背景も含めた表現に注視し、考えを深めていただけたら」

こちらの青森公立大学国際芸術センター青森のYouTubeでは、
展覧会の解説や作家のトークライブが記録されているので、
気になる方はぜひご覧ください。

3名の個人的な体験や興味から生まれた、壮大な作品たち。
それらは簡単に理解することは難しいかもしれませんが、
多くの生きる上で大切なことを、私たちに訴えかけてきます。

深緑がきらきらとひかる、夏の青森公立大学国際芸術センター青森。
そんな美しい会場で、ぜひ3名の尊い思考の一端に触れてみてはいかがでしょうか。

information

map

いのちの裂け目―布が描き出す近代、青森から

会期:2020年5月7日(木)~8月30日(日)

会場:青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)

住所:青森県青森市合子沢字山崎152-6

TEL:017-764-5200

開館時間:09:00~19:00(展覧会は10:00~18:00)

休館日:会期中無休

観覧料:無料

Web:http://www.acac-aomori.jp

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