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posted:2019.11.15 from:東京都渋谷区 genre:買い物・お取り寄せ
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
スイスデザインのイノベーションが
日本の職人技の卓越性と伝統と出会ったなら?
2019年10月、東京・原宿のB-SIDEにて、
この問いに答え、スイスデザインを紹介する
展覧会〈スイスデザイン/メイド・イン・ジャパン〉が開催されました。
東京2020に向けたスイス大使館のキャンペーン
〈スイスへのとびら〉のひとつとして開催された本展。
会場に並んでいたのは、デザインも質感も目に新しい、生活の道具たち。
キュレーションしたのは、デザインディレクターのダヴィッド・グレットリさん。
すべてスイス人デザイナーがデザインを、
日本の企業・メーカー・製造業者が製作を手がけたものです。
1階では、木製家具の〈カリモクニュースタンダード〉や
有田焼のブランド〈2016/ 〉などのアイテムを紹介。
これらのアイテムは、スイスのデザイナーたちが
日本の職人技や伝統へ寄せる、深い関心から生まれたもの。
たとえば〈2016/CK As if〉は、デザイナーデュオ〈クーン・カプート〉が
有田の職人技を最大限に生かしたプロダクトシリーズ。
鋳込み成形によって実現した幾何学的な形態が、何とも斬新。
繊細なグラデーションは特殊な吹き付け技術を用い、職人の手で仕上げています。
〈スミダ コンテンポラリー〉は、墨田区がグレットリさんを
ディレクターに招き、2017年にスタートさせたプロジェクト。
スイス人であるグレットリさんの視点でさまざまなコラボレーションが
展開されているということで、紹介されていました。
このプロジェクトでは、墨田区で300年前から発展してきた
ガラス、革製品、ブラシなどの製造技術を生かし、
国内外のデザイナーとの協業によって新しいプロダクトを生み出しています。
こちらは、柳宗理さんのデザインによるグラス。
このグラスは柳さんによって1966年にデザインされたものの、
商品化されることはなかったのだとか。
グレットリさんは、東京の〈柳デザイン研究所〉で
そのグラスのドローイングとまだ残っていた
表面のサンプルを見せてもらい、製品化することを即決。
50年以上経ち、東京墨田区の〈廣田硝子〉で、ようやく製品化が実現しました。
こちらも、〈スミダ コンテンポラリー〉のプロダクト。
何世紀もの間、屏風をつくってきた〈片岡屏風店〉と
韓国人アーティストのチャン ウンモさんとのコラボレーションから生まれた屏風。
現代アートの媒体として屏風の可能性を広げる、新しい発想のアートピースです。
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コロカルでも、何度かご紹介してきた木製家具メーカー〈カリモク〉。
同社のブランドのひとつ〈カリモクニュースタンダード〉のディレクションを
グレットリさんが手がけていることをご存知でしょうか?
同ブランドでは、ブランド設立時からスイス人デザイナーとコラボレーションし、
デザイン性が高いプロダクトを生み出してきました。
こちらは、モーリッツ・シュラッターさんのデザインによる「ポーラーチェア」。
座面の有機的なフォルムと直線的な脚のコントラストが特徴的です。
〈カリモクニュースタンダード〉では持続可能な資源を活用し、
森林保全と林業地域の活性化に寄与することを目指しており、
この椅子には日本北部のナラ材が使われています。
2階では、リビングをイメージした空間に、同ブランドがスイスや
他国のデザイナーとコラボレーションしたアイテムが配されていました。
このほかにも、デザインチーム〈ビッグゲーム〉と
新潟県三条市〈諏訪田製作所〉との協業から生まれた包丁、
アイウェアブランド〈ヴュウ〉と福井県にある眼鏡のまち、鯖江の製造者との
協業から生まれたサングラスなど、秀逸なプロダクトが勢揃い。
グレットリさんは本展のコンセプトについて、次のように語っています。
「本展のコンセプトは、タイトル“スイスデザイン/メイド・イン・ジャパン”に
集約されています。
スイスのデザイナーのデザインによる日本でつくられたアイテム・日常品の展覧会です。
広義には文化間の緊密な協業を扱っています。
というのも、品質、美の追求、卓越性、サスティナビリティ
そして機能性といったスイスと日本を象徴する
多くの価値を反映するアイテムが、デザイナーの革新性・創造性と、
日本の伝統・製造者たちの深い知識との結びつきにより生まれているからです」
(スイス大使館発行『SWISS CULTURE IN JAPAN A/W 2019 秋冬季号』より)
またグレットリさんは、スイスと日本の間には、本質的に品質、機能性、
そして慎み深いという共通点があるといいます。
作品には、スイスと日本のつくり手たちが生活の道具にそそぐ深い目線も感じられ、
生活のなかに溶け込んだデザインについて改めて考えさせられる、魅力的な展覧会でした。
今回ご紹介した2016/ 、スミダ コンテンポラリー、カリモクニュースタンダードの
取り組みは、今後も継続的に行われていきます。
また、2016/の全アイテムや柳宗理さんのデザインしたグラス、
韓国人アーティスト、チャン ウンモさんと手がけた屏風など、
一部のプロダクトは購入することもできます。
購入できるアイテムは、包丁シリーズ〈ホロウ〉や
スミダ コンテンポラリーのスリッパなど、今後も増えていくそう。
機会があれば、ぜひ一度本物にふれてみてください。
information
Swiss Design / Made in Japan
会期:2019年10月15日〜22日
会場:B-SIDE
住所:東京都渋谷区神宮前5-11-2
キュレーション・アートディレクション:David Glaettli (ダヴィッド・グレットリ)
企画:在日スイス大使館
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