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Kiyoko Hayashi
林貴代子
はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。
お正月に供える鏡もち、
年明けにいただくお雑煮、季節の行事や祭礼でふるまわれる
あんこ、きなこ、ゴマをたっぷりからめた、おはぎやぼたもち、
醤油のこげるような香ばしい匂いをたどれば、店頭で焼かれる磯辺焼き。
日本の伝統食である “もち”。
地域別、県別、大きくわけて東西別と、
食べられ方、もちをつく日どり、供えられ方など、
多彩な文化がはぐくまれてきた食べ物のひとつです。
なかでも、「もちの食べ方の多彩さは全国一」といわれる、岩手県一関市。
北上川下流域の豊かな稲作地帯であるこのエリアには、
古くからもちにまつわる食文化が根づいています。
驚くことに、「もち暦」なるものが存在し、年に60回以上ももちをつくのだとか!
そんな一関市のもち食文化をテーマにした映像が、
一関youtubeチャンネルと、観光協会HPにて公開されました。
鎌倉~室町時代の景観をほぼ残しているといわれる、
岩手県一関市の骨寺地域(ほねでらちいき)。
ユナ(15歳)は、ここに住む中学3年生。
祖母の葬式に、臼と杵でどうしてももちがつきたいという祖父。
もちつき機でもおいしいもちはつける、と説得する家族ですが、
めったに我をはらない祖父の願いもあって、古来の方法でもちをつくことに。
思春期のユナは、仕方なくもちつきを手伝いますが、
祖父の表情からにじみ出る何かを敏感に感じとります。
ユナの通う本寺中学校は、今年いっぱいで閉校となることが決定。
親友のシホは隣町へ引っ越すことになり、
ひそかに想いを抱くタツ兄は、進学のため東京へ。
亡くなった祖母の声も忘れてしまいそうになったユナは、
すべてが自分のもとを去っていくような悲しみのなかで、
祖父との会話から、ひとつの思いをかため――。
一関のとある一年を、美しい風景のなかで綴った物語。
この映像のテーマは、“もち”。
テーマだけみれば、「?」と首をかしげてしまうかもしれませんが、
一関では、日々の暮らしや、ハレの日、人生の大切な場面には、
必ずもちをつくという文化があります。
この地において、もちをついて一緒に食べるという行為には、
互いに幸せをわかち合い、悲しさ、辛さも共に背負い、
絆を強める意味が込められているのだそう。
伝統や記憶が少しずつ消えようとしているなかで、
それぞれが抱く大切なものをつないでいこうと努力する人々が、この映像には描かれています。
伝統的なもちつきの風景、上棟式、神前への御供え、お祭り、伝統芸能。
どこかに置き忘れてしまっていたかのような、懐かしくもあたたかな暮らしの営みと、
泣きたくなるくらい美しい映像に、目が離せなくなるはずです。
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本作は、一関の本寺地区を中心に、2017年8月から撮影が行われました。
映像中の本寺中学校は、実在する中学校。
ですがストーリーと同様に、2018年3月をもって閉校となりました。
主人公のユナ役は、実際に本寺中学校に通っていた佐藤由奈さん。
ユナの友人、弟たち、家族のほか、一関市民も出演しており、
なんとプロの役者はひとりもいないのだとか!
ロケハン、オーディションから始まり、
市民の協力をうけ、夏祭りのシーンから撮影を開始し、卒業式まで、
全体では1年を追う撮影が行われました。
かぎりなくリアルな本寺地区の日常が描かれ、
ストーリーはフィクションながらも、“セミドキュメンタリー”ともいうべき物語となっています。
そんなチャレンジングな映像のメガホンをとったのは、
蒼井優主演の映画『たまたま』の監督であり、
SUNTORY『男と女』(小栗旬・水原希子)、
JR 東日本 JR SKISKI『青春は純白だ』(本田翼・窪田正孝)、
KOSE『LOVE ROUGE』(安室奈美恵)など、
これまで400本以上のCMや、福山雅治『家族になろうよ』などのMVを手がけてきた、
映像ディレクターの小松真弓さん。
撮影には、広告写真やTVコマーシャルなどで活躍する広川泰士さん。
世界各都市での個展、美術展への招待出展の経験を持ち、
国内外の美術館にコレクションされるほどのアーティスト。
そんなトップクリエーターのふたりが携わっているとあっては、なおさら見逃せません!
今回の映像は、一関もち食推進会議が製作。
マガジンハウス〈コロカル〉と
〈一般社団法人世界遺産平泉・一関DMO〉が制作にあたりました。
この映像とは別に、1時間のフルバージョン作品も用意されており、
ゆくゆくは劇場やイベントでの上映を行う予定。
乞うご期待!
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