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posted:2018.1.30 from:全国 genre:活性化と創生
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Kiyoko Hayashi
林貴代子
はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。
もし、この瞬間に大きな災害が起こったとして。
当たり前のように身近にあったはずの、
電気・ガス・水道・便利なライフラインが一切機能しなくなったら。
それらの復旧が困難な状況だとしたら。
そういった状況は、生涯に1度や2度、訪れるかもしれません。
忘れもしない東日本大震災、2016年の熊本地震、水害、噴火、豪雪など、
大小さまざまな災害や危機が、毎年のように日本各地で起こっています。
もしあなたがそれらの当事者なら、どうやってその状況を乗り越えますか?
行政や大きなシステムに頼りっぱなしでしょうか?
そもそも、あなた自身は“生きていく力”を備えていますか?
映画『おだやかな革命』を観ていると、
そんな問いかけをされているような気がします。
2012年、在来作物をテーマにしたドキュメンタリー映画
『よみがえりのレシピ』で話題を呼んだ渡辺智史監督の
新作映画『おだやかな革命』が、まもなく公開となります。
東日本大震災の被災者や、各地の移住者がスタートさせた
「エネルギー自治」への取り組みと、その先に待っていた
「地域の新しい姿」を追ったドキュメンタリー映画『おだやかな革命』。
太陽光発電、小水力発電、身近にある資源活用など、
持続可能な再生エネルギーの導入や、事業の発足は、
地域が抱える切実な課題をクリアするきっかけや、成功事例となりつつあります。
4つの地域にフォーカスをあてたこの映画では、
エネルギー事業に関わる人々の想いや取り組み、暮らしのアイデアが記録されています。
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福島第一原子力発電所に近いことから、全村避難を余儀なくされた飯館村。
いつかこの地に戻ったときの産業にと、避難場所で暮らす飯館村の人々が出資をし、
太陽光発電などを採用した再生可能エネルギー事業を手がける
〈飯館電力株式会社〉を立ち上げました。
村の未来のために、いまできることをやる――
まっすぐに前を向き、未来に向けた挑戦が始まっています。
生協の食材宅配サービスを営む〈生活クラブ〉。
東京・神奈川・千葉・埼玉の生活クラブの組合員が出資し、
秋田県にかほ市に風力発電〈夢風〉を設置。
自分たちで使うエネルギーは、自分たちで自治することを目指し、
不均衡になりがちな首都圏と地方の関係にも目を向ける同社。
互いの地域の、心地よい共存関係が築かれています。
過疎・高齢化が進む、小さな集落・石徹白(いとしろ)地区に移り住み、
地域に伝わる伝統文化を生かした暮らしを始めた平野彰秀さん、馨生里さん夫妻。
それは徐々に石徹白の人々の心に響き始め、約100世帯もの
全戸出資による小水力発電事業へと発展します。
移住者によって、地域の価値に気づき始めた地元住民とのコミュニケーションから、
新しい未来づくりが始まっています。
面積の約95%が山林でありがなら、林業の衰退が進む西粟倉村。
平成の大合併を辞し、自立を目指した同村は、
次世代へ森の資源を引き継ぐ「百年の森林(もり)構想」を発足。
森の再生に取り組み、森から出る間伐材などの有効活用によって、
エネルギー自治、経済、雇用にも波及する、無駄のない地域内循環が生まれています。
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ところで、私たちが毎日使っているエネルギー、食べ物、着ている服などは、
どこで、どんな人がつくり、どんなふうに届けられたものでしょうか?
エネルギーの話で例えれば、
再生可能エネルギーの売電制度(固定価格買取制度)の制定により、
小規模発電所でつくられた電力が、大きな電力会社を経由して、
各家庭にも一部配電されています。
「エネルギー自治」というと、自分にはあまり関係のない分野のような気がしますが、
もしかしたら、映画に登場するような発電所でつくられた電力を
知らず知らずのうちに使用していたりするかもしれません。
さらに電力自由化により、自ら電力会社を選ぶことが可能になり、
エネルギーだけでなく、食やモノにまつわることも容易に情報が得られ、
「暮らしの選択」ができる時代となりました。
渡辺監督はこのように語ります。
「食もエネルギーも、日々のことだからこそ、私たちの選択によって、
少しずつ社会を変えていくことができます。
これからは『ほしい未来は、自分たちの手でつくっていく』という時代です。
人任せにせず、自分たちで暮らしの潤いを生み出していく時代であり、
楽しみながら暮らしと人生を充足していくことができる時代。
そのきっかけや気づきを、この映画で届けることができればと思っています。
映画は完成して終わりではなく、多くの人に観ていただくことで、
全国各地で、映画で描いた『おだやかな革命』の物語が生まれていくと信じています」
(「Readyfor」より引用)
映画の公開初日には、渡辺智史監督、映画出演者、
ゲストによるトークイベントが開催され、
さらに映画に登場する人々が手がけたプロダクトや
農産物のマルシェ〈SIMPLE LIFE MARKET〉も開催されます。
便利すぎる現代社会や暮らしに疑問を抱く人、
新しい一歩を踏み出してみたいという人はもちろん、
いまの生活に不満も不安もないという方にも、オススメしたい映画です。
きっといつか、何かのきっかけにポッと映画の記憶が蘇って、
「ああ、こういう地域があったよな」と、何かの原動力につながるかもしれません。
日本各地でおだやかに始まっている小さな革命を、ぜひその目で!
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profile
SATOSHI WATANABE
渡辺智史
ドキュメンタリー映画監督。山形県鶴岡市生まれ。東北芸術工科大学卒。首都圏で映画制作に従事。山形県を拠点にドキュメンタリー映画を制作、映画を自主配給して全国に届けている。2012年に在来種の種をめぐる物語を描いた『よみがえりのレシピ』を公開。全国300か所にて上映。香港国際映画祭、ハワイ国際映画祭にて招待上映される。親子で楽しめる教育映像『在来作物で味覚のレッスン』が、第9回キッズデザイン賞の「未来を担う消費者デザイン部門」で優秀賞を受賞。
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