記事のカテゴリー

月刊特集・やっぱり本が好き。

Future of Book Culture

本の文化をローカルからはじめる

本屋にブラっと行った。帰りには何冊かバッグに入っている。
用事がなくても、あの空間が好きなので本屋に行ってしまう。
そして買うつもりではなかったのに、気がつけば買っている。
こんな経験、1度や2度ではない。

でも、こんな日常に刷り込まれていると思っていた行為なのに、気がついたら減っていた。
本を読む時間はゲームやSNSに奪われ、ECのおかげで本屋に行く必要もなくなった。

なんでもインスタントになってしまい、活字離れを憂いているのは、
出版社の時代遅れなつぶやきだろうか。
それでも本に魅力を感じ、活字を生み出し、
本屋という場所に通いたいという人たちがいなくならないのはなぜか? 

そういえば、サブスクの時代にレコードは完全復活を果たし、
カセットテープすらブームになっている。
ほぼすべてのスマホにカメラがついている時代にフィルムカメラも盛り上がっている。
InstagramやXではなくZINEという紙媒体で発信したいという人も絶えることはない。
どうやら「アナログ」や「フィジカル」は一定の揺り戻しがあり、
カウンターカルチャーとしてしぶとく生き残る。

「本」と書かれた看板

リアルな場としての本屋はどうか。
全国で「まちの本屋」は減少の一途をたどっているが、
本屋がなくなると、本の文化自体がその地域から衰退してしまう。
これは貴重なローカルカルチャーの大きな損失だ。
そんななか、ローカルでは特に
「独立系書店」の開業は増加しているというから光明はある。

本が売れないこの時代に、そのような本屋はさまざまな策を講じて変化してきた。
本を売るのみならず、カフェを併設したり、イベントを開催したり、
ローカルのハブになっている。
そこでは趣味性の高いコミュニティが生まれている。

ローカルブックスは、地域の発信媒体以上のものとして役割を広げている。
地域の「情報」だけでなく、背景やストーリーから抽出されたエッセンスを伝えることで、
「消費されないローカル」を表現している。
必然的に、地域外の人が読んでもおもしろい普遍的な内容になるのだろう。
だから、もはや発信地が東京である必要はない。

たくさんの本が並ぶ本棚

そもそも活字におけるコミュニケーションの言葉はどんどん短くなり、
動画のわかりやすさには敵わないかもしれない。

しかしゆっくりと活字を読むことで、得られる情報の理解度は深くなる。
それだけではない。読んでいる間の「思索の時間」が重要なのかもしれない。
電車で本を読んでいて、何度乗り過ごしたことだろうか。
情報をただ受けとるのか、自ら潜り込んでいくのか、その違いは大きいのではないか。

本は近い将来、嗜好品になるかもしれない。
でもなくなることはない(と願いたい)。
それを地道に広めるのが本屋の役割のひとつ。
本と本屋、そのありかたは変わってきたし、これからも変わっていくだろう。
これから進む先は?