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沖縄県・竹富島

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島に初めてつくられたリゾートホテルでは、集落の住人になったつもりでくつろげるという。

重山の海の上に、木の葉が一枚ひらりと浮かんで漂っているようだ。上空から見ると、竹富島はいかにも頼りない。つまんで拾い上げて持ち帰れるんじゃないかと思うほど、山もなく谷もなく、小さくぺらっと平坦で、島全体の様子が手に取るようによく分かる。隠れるところがどこにもなくてひどく落ち着かなそうだという感じがする。ところが実際は、周囲に広がる珊瑚礁のおかげで荒々しい波が押し寄せることもなく、奇跡のようにぽっかりと外海から守られ、静かに時を刻む島である。

石垣島から高速船で約10分。人口およそ350人。島のまんなかにある3つの集落に固まるように暮らす人々の生活は、今は主に観光客を迎え入れることで成り立っている。
この竹富島で、2012年、全国に知られるトピックスがあった。6月の「星のや 竹富島」の開業だ。これは、竹富島で島外の企業が初めて実現させたリゾート事業である。土地を開き、白砂を敷き詰め、石垣を積んで道をつくり、伝統的な赤瓦屋根の家を48棟も建てて一軒家タイプの客室に。まるで、丸ごと新しい集落がひとつそこにドーンと出現したかのように、完璧なまでに忠実に、昔ながらのまち並みがつくりあげられた。

島にリゾート施設ができた。これは、沖縄の離島ではある意味ありふれたニュースといえる。しかし、実はその背景に、島が長年抱えてきた問題を解決しようとする重大な決断があったことは、あまり知られていない。

「星のや 竹富島」は、島のものであって島のものでない。ある目的のためにつくられた。このリゾート開発自体が、島の人たちが失ってしまった土地を取り戻すための手段として考え出されたものなのだ。

人々の結束は固く、何事もじっくりじっくりみんなで話し合って決めてきた。そういう島で、今、何かが変わろうとしていて、何かはずっと変わらず、守られようとしている。