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連載

〈AJIM〉
船舶家具づくりのノウハウを
メイドイン長崎に閉じ込める

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.040

posted:2015.1.23  from:長崎県長崎市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

text & photograph

Yuichiro Yamada

山田祐一郎

やまだ・ゆういちろう●福岡県出身、現在、福津(ふくつ)市在住。日本で唯一(※本人調べ)のヌードル(麺)ライターとして活動中。麺の専門書、全国紙、地元の情報誌などで麺に関する記事を執筆する。著書に『うどんのはなし 福岡』。 http://ii-kiji.com/を連載中。

AJIMからつながる長崎の森のはなし

長崎県は周囲のほとんどを海に囲まれる。
南北、そして西側の海には対馬や壱岐、
五島列島といった971もの島が浮かび、その数は日本一だ。
暖流の対馬海流が流入してくることから、九州内でも気候は温暖とされ、
雲仙などの一部地域を除き、寒暖差は小さい。

そんな長崎は、県の総土地面積の6割が森林だ。
海岸の低木群落から丘陵地の照葉樹林を経て、山地の落葉樹林へと続く。
代表的な県の木はヒノキ、スギ、ツバキ。
ヒノキ、スギにおいては人工林が約6割を占める。
戦後の拡大造林によってヒノキ植栽を進めたことから、
特にヒノキ林はスギ林の約2倍にあたるほど豊か。
日本の離島のうち、3番目に大きな島、対馬においては、
面積の9割を森林が占め、ヒノキの生産が盛んだ。

近年、木材利用可能な民有林の人工林が多くなってきたことから、
県では林業再生に向けた取り組みを推進するべく、
「ながさき森林づくり推進プラン」を策定。
森林資源としての利用と、多様な機能の持続性を両立させ、
豊かな森林づくりを目指す一方で、
森林・林業・木材産業、さらに農山村に関する施策を展開している。

また、対馬においては、戦後に植えられて収穫期を迎えたヒノキを
〈対馬ひのき〉と名づけ、ブランド化。島の特産物としてPRに力を入れている。
なかには、対馬ひのきに魅せられ、福岡・大川で修業後、
故郷の対馬に戻って作品づくりに打ち込む職人も現れた。

長崎県下の森林面積に対する森林率は約45%と全国平均よりも約20%低いが、人工林率は約66%と全国よりも約20%高い。

未知なる県産材に挑む。

長崎市内の中心地から車で約20分。市街地から遠く離れた山間に目的地はあった。
訪ねた先は〈川端装飾〉の事務所。もともと船舶用の家具を製作してきたが、
2000年に一般家庭向けの家具ブランド〈AJIM〉を立ち上げ、
以降、船舶家具づくりで培った技術をもとに、
高い強度と使い込むほどに感じる心地よさを兼ね備えたプロダクトを
次々と世に送り出している。

川端装飾の工場兼事務所。工場はこの場所以外に3か所あり、それぞれつくっている製品が異なる。

そんなAJIMが2014年3月、長崎の県木を用いた家具を発表した。
「3年前、国際家具見本市に出展した際、
イトーキのEconifa開発推進室の室長である末宗浩一さんと出会いました。
“長崎の県産材を使ったプロダクトをつくりたい”と打ち明けられたんです」
と川端装飾代表取締役・川端祐樹さんは、そのきっかけを教えてくれた。

ただ、それまでAJIMでは使用する木材はすべてウォルナットやメイプルといった外材。
「国産材、ましてや県産材で家具に向くものがあるとは夢にも思わず、
これまで特に探す努力もしてこなかったですね」と川端さんは言う。
県産材を使った家具をつくるというゴールだけが決まり、
具体的にどの木を使うべきか模索する日々が始まった。

爽やかな笑顔の代表取締役・川端祐樹さん。本社工場では弟さんが工場長を務めている。

事務所の1階にある本社工場の様子。ここでは常時4人の職人たちがイスの製造にあたっている。

製造はチーム制で、各工程はひとりの職人が責任を持って担当する。写真は木をおおよその形に切り出す作業。

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素材のデメリットを技術でカバー

川端さんの頭に真っ先に浮かんだのが、長崎県で最も多いヒノキだった。
しかし実際に木を見たところ、やわらかいうえに細いため、家具には向かないと判断。
第二候補として目をつけていたセンダン、ツバキで試作を進めることになった。
「特にセンダンとの出合いは大きな収穫になりましたね」
と川端さんは会心の笑みを浮かべる。
センダンとはセンダン科の落葉高木で、
長崎では古くからケヤキの代用として植えられていた。
「木目の質感がよく、ケヤキのようにやや赤みを帯びた明るい色合いで、
製品にしたとき、パッと映えるイメージが広がりました」と川端さんは声を弾ませる。
加えて、ヒノキより安価だった点も魅力的だった。

工場に運び込まれてきたセンダン。木目の力強さが印象的だ。

荒くカットされているセンダンは工場内でパーツの元へと加工されていく。左のものが中央のように研磨され、右のような最終の状態へと仕上げられていく。

こうしてセンダンを主軸に据えた製作はスタート。
もともとAJIMのルーツは船舶家具。
釘などを用いることなく木材同士を繋ぎ合わせる“ほぞ組み”という技法を用い、
孫の代まで受け継げる丈夫な家具をつくってきた。

川端さんは「どんなに優れたデザインでもすぐに壊れてしまっては意味がない。
センダンを使う際も強度を第一に、デザインを構築していきました」
と言葉に力を込めた。
例えば、シャープなラインを表現したい場合、普通なら木を細く削るが、
AJIMでは強度を保ったうえで、“細く見えるようなデザイン”を施す。
結果として、やや野暮ったさがあるセンダンを使いながら、
丈夫で、スマートな印象を与えるオリジナル家具が誕生した。

ほぞ組みによって木材同士を繋ぎ合わせる。わずか 0.5mmでも削り出しが狂えば、うまく入らないし、スッポリと抜けてしまう。熟練の勘がモノをいう専門技術だ。

“細く見えるようなデザイン”を施すことで、手に持ったときに、見た目よりも太く感じるという錯覚すら生じる。

メイドイン長崎を打ち出す

2014年3月に実施された長崎県産材家具発表会で、
イトーキの地域材活用ソリューション「Econifa(エコニファ)」とともに
AJIMの代表的な家具が世に送り出された。
センダンを使ったソファやスツールは好評を博し、川端さんは手応えを感じたという。

「今年のカタログでは大きく“メイドイン長崎”を打ち出し、
センダンを前面に出していこうと思っています。
AJIMのオールモデルで、センダンを導入しますよ」

センダン以外にもまだまだ埋もれている県産材があるのかもしれないと続ける川端さん。
センダンとの出合いがAJIMに新しい風を吹き込んだのは間違いない。

長崎県産材家具発表会に出展されたAJIMの家具は、現在、長崎県庁のロビーに置かれている。

固さがあり、摩耗にも強いが、一方で細くてソファやチェアには不向きな県産材のツバキ。その特徴を生かしたフラワープランターも試作した。

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木のある暮らし 長崎・AJIMのいいもの

ベンチ 価格:要問い合わせ サイズ:W1800×D500×H420mm

背付きベンチ 価格:要問い合わせ サイズ:W1800×D700×H700/SH420mm ※商品は全て受注生産。一般への小売はなく、企業、小売店からの注文にのみ対応。

information

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AJIM(株式会社 川端装飾)

住所:長崎県長崎市田手原町392-1

TEL:095-822-2900

http://www.ajim.jp/

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