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健康や自然環境に配慮した
“ビオホテル”が日本にも誕生!
八寿恵荘 前編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.026

posted:2015.11.10   from:長野県北安曇郡  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!

writer's profile

Tetra Tanizaki
谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

photo

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

日本で第1号のBIO HOTEL

日本で第1号のBIO HOTELが誕生した。
長野県の安曇野にあるカミツレの宿〈八寿恵荘〉。
ハーブの里としても有名な池田町にある。
”BIO”とはオーガニックのこと。

ヨーロッパを発祥とするBIO HOTELは
世界で最も厳しいオーガニック基準を規約とするホテルの認証である。
食べ物や飲み物、コスメ(シャンプー・石けん・スキンケア用品)は、
すべてオーガニック*。
タオル、ベットリネン類、施設の建材や内装材も
可能な限り自然素材の使用を目指し、CO2の排出削減など、
滞在するゲストの健康や自然環境に配慮したホテルだ。

*ヨーロッパのBIO HOTELは、オーガニック/BIO認証を取得したプロダクトだけで
構成されている。日本は、それに準じた独自の基準を設定している。

BIO HOTELの名は、環境配慮型ホテル協会(本部オーストリア)が認証したホテルに与えられる。一般社団法人 日本ビオホテル協会代表の中石和良さん(左)と中石真由子さん(右)。真ん中はヨーロッパのビオホテル協会の創設者で事務局長のLudwig Gruber氏。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

ヨーロッパのビオホテル協会(Die BIO-HOTELS)は、
2001年にドイツやオーストリアなどにある志の高いホテルや
BIO生産・流通団体が集まり発足した。
ドイツ最大の民間有機認証団体〈Bioland〉もサポートをする。
ビオホテル協会の厳しい基準を満たして認定を受けたホテルは、
現在ドイツ、オーストリア、イタリア、スイス、フランス、スペイン、ギリシャを中心に7か国、約100軒(※2015年9月現在)あり、
現在、認定申請中の施設も多数あるという。

〈BIO HOTELS JAPAN(一般社団法人日本ビオホテル協会)〉は、
ヨーロッパのビオホテル協会の公認を受け、日本で2013年5月に発足した。
日本では、BIO HOTELそのものを普及させるだけでなく、
BIOというライフスタイルを提案していくことをミッションとしている。

BIO HOTELではオーガニック料理のイベントなども開催。日本ビオホテル協会がセレクトしたBIOの商品、オーストリアワイン大使によるBIOワイン、自然栽培料理家KatiesによるBIO料理をGATHERINGというかたちで表現した映像。

日本でビオホテル協会を立ち上げたのは中石和良さんと真由子さんのご夫婦。
もともと和良さんは30年以上、大手家電メーカーなどの企業で
経営企画部、財務経理、マーケティングの仕事をしてきた。
奥様である真由子さんは、アパレルの仕事からスタートし、
不動産会社の経営企画や営業職、外資でのホテル投資ファンドに在籍し、
幅広くさまざまな仕事をされていた。
ふたりともオーガニックとは無縁の業界。
いったいどのような経緯でビオホテル協会を立ち上げたのだろうか。
和良さんにお話を伺った。

「まず、オーガニックを生活に取り入れたきっかけは、自分自身の健康でした。
実はずっと偏頭痛に悩まされていたんです。日常生活ができないくらい。
市販の薬ではきかず、専門医に通う日々。
体質改善をしようと2年以上菜食にしたのですが、なかなか治らない。
しかし食材をオーガニックにして、
科学的な添加物がないものを選ぶようになりました。
ストイックになりすぎず、少しだけそのことを意識した暮らしをしてみたら、
50年悩んでいた偏頭痛がすっと治っちゃったんですね」

それから本格的にオーガニックを生活に取り入れたという。

「今思うと、起業の転機はリーマンショックにあったかもしれません。
妻が働いていた外資系企業の部門が解体されたんです。
それを転機に妻はオーガニックの料理教室を始めました。
オーガニックでナチュラルな生き方、ライフスタイルを広げていくことで
みんな幸せになれるんじゃないかという想いがあって。
それから、お米や農作物など、オーガニック生産者の販路開拓や
ブランディングをやってみましたが、
なかなかライフスタイルやカルチャー発信にまでは至らないもどかしさを感じました。
もっと大きな広がり、影響力のある発信ができないか。
たまたまオーガニックワインの輸入していた友人が
ビオホテル協会のことを教えてくれたんです」

中石さんは、このモデルを日本にも広めていきたいと考えた。
2011年にそれまでいた会社を辞めて、
ヨーロッパのビオホテル協会を訪ねることにした。

雄大なアルプスを背にするHOLZLEITENの正面。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

HOLZLEITENの裏庭。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

オーストリア・インスブルック郊外にあるHOTEL HOLZLEITENのSPAエリアのプール。
塩素消毒はせず、天然塩とステンレスタンクで消毒している。目を開けても痛くないそう。奥に見えるのは、純粋なナチュラルウォーターのプール。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

HOTEL HOLZLEITENの室内。コンパクトなベッドとベッドメイクがヨーロッパの特徴。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

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ミュンヘンの山奥にあるビオホテルへ

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ヨーロッパのビオホテル協会

「オーストリアのインスブルックの郊外に協会の事務局があります。
最初は、ビオホテル協会の創設者で事務局長のルドヴィッヒ・グルーバーさんと
メールでやりとりを始めました。日本でビオホテルをやりたい、と。
そして、2013年の5月にオーストリアのビオホテル協会を訪ねました。

グルーバー氏は、日本がオーガニックの後進国であることを知っていて、
日本で広げることを歓迎してくれました。
そのあと、彼の運転する車で、アウトバーンを超スピードで飛ばし、
ミュンヘンの山奥にあるビオホテルへ。
ビオホテル協会の会長は、加盟しているホテルのオーナーが
2年ごとに交代で務めることになっています」

そのときの印象を真由子さんはこう語る。

「木々に囲まれた豊かな環境。澄んだ空気と空の青さが印象的でした。
建物も自然に手入れされた庭の中に点在していて、
洗練されているミュージアムのように美しかったです。
結婚式場やレストランもありました。
ビオホテルはだいたい40室ぐらいが平均的な部屋数。
開放的な庭があって、散策ができ、建物はウッディだけれど、
デザイン性あふれる佇まいです」

旬の素材を使いレベルの高いBIOな料理とビールやワイン。
ナッツやフルーツたっぷりのデザート。アメニティも自然派BIOで、
紙類も自然環境に配慮したもの。豊かなホテルライフ。
なんとかこのモデルを日本にもってきたいと思った、と言う。

ドイツバイエルン地方フュッセンにあるHOTEL EGGENSBERGERの居心地いい食堂。このホテルは、食べ物・飲み物だけではなく、環境や電磁波対策などにも積極的に取り組んでいる象徴的なホテル。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

HOTEL EGGENSBERGERのアプローチ。地元の民族衣装がかわいい。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

EGGENSBERGERの人気の屋根裏部屋。ベッド横に電磁波遮断のスイッチがある。写真提供:一般社団法人 日本ビオホテル協会

日本のオーガニック商品の流通量は○%!?

ヨーロッパと日本ではオーガニックの流通量はちがう。

「ビオホテルが多く位置する南ドイツと
オーストリア北部の南バイエルン地方というのは
食材の約20%がオーガニックなんです。
一方、日本ではオーガニック食材として有機認証されたものは
0.2%程度と言われています。
まったくオーガニックの環境が違うんです。
まずはそんな日本にオーガニックの文化を広めたいという思いを会長に伝えました。
最初は日本とヨーロッパの環境、マーケットの違いにとても驚いていたようですが、
最終的には、がんばりなさい、どんなことでも協力するよと言ってくださいました」

帰国後、2013年5月に一般社団法人 日本ビオホテル協会が設立された。

ヨーロッパでは食材、飲み物、コスメ、
そのすべてをオーガニック認証されたもので賄い、
CO2排出量削減計画を達成することがビオホテルの条件となる。
日本では前提となる環境の違いがあるので、
ヨーロッパと同じ基準ですべて行うことは難しい。
まずは、日本のビオホテルとしての新たな認証基準をつくることになった。
さらに、その評価に応じて5リーフから2リーフまでの格付けも。
ミシュランガイドの星のように、葉っぱの数で格付けをしていく仕組みだ。

そして2年後の今年5月、日本のBIO HOTELの第1号として
長野県安曇野のカミツレの宿〈八寿恵荘〉が認証されることになる。

今年5月、日本のBIO HOTELの認証第1号となった長野県安曇野のカミツレの宿〈八寿恵荘〉。有機栽培のカミツレ(ジャーマンカモミール)のエキスがたっぷり入った”華密恋の湯”で有名。

BIO HOTELブランド

BIO HOTELでは独自のブランド商品の展開を進めている。
その事業を行っているのが株式会社ビオロジックフィロソフィ。
ビオホテル協会のブランディング、広告宣伝、イベント企画、
商品企画・製造・販売などのほか、
ライフスタイル関連プロデュース事業やホテル、レストランプロデュース事業、
それらに関わる総合マーケティング
および経営・事業運営コンサルティングなどを行っている。

「たとえばオーガニックなリネンを、合成洗剤を使って洗うことに違和感を持つ人、
また、石油系ドライクリーニングが嫌だから
自宅で洗えるものしか着なくなったという人も増えてきました。
今秋から、BIO LAUNDRYというプロジェクトもスタートさせています。
自分の好きな洋服を安全に身にまとう感覚を味わうことで、
日本はもっと本物のおしゃれな国になると思っています。
この取り組みを通じて、志高いクリーニング店や
洗剤メーカーさんとの出会いもありました。
天然由来原料99.99%の、0歳児から使える柔軟剤を開発した企業もあります。
そういう人たちにちゃんとスポットを当てたビジネスモデルをつくりたい」
と真由子さん。

BIO HOTELブランドの商品も発信していくことも必要だと考えている。
2014年3月に第一弾としてリリースした
オーガニックコットン帆布を使って製作したスニーカー
”LIFE IS A JOURNEY”の2nd editionは、来春3月に。
FSC認証の紙とベジタブルインクを使ったサステナブルなメモ帳や
デッドストックの生地を使ったプロダクトなどを開発していく予定だ。

次回は日本のBIO HOTEL認証第1号となった長野県安曇野のカミツレの宿
〈八寿恵荘〉を取材します。

株式会社ビオロジックフィロソフィのビオホテルブランドのシューズ。ペルー産GOTS認証オーガニックコットン帆布を福岡県久留米市のムーンスター社に支給して製作したスニーカー。

後編【安曇野で世界でも珍しいビオホテルを 八寿恵荘 後編】はこちら

Information


map

八寿恵荘

住所:長野県北安曇郡池田町広津4098

一般社団法人 日本ビオホテル協会
BIO-HOTELS Association JAPAN
http://biohotels.jp

株式会社ビオロジックフィロソフィ
http://biologic-philosophy.com

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