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連載

子どもがふれることで伝統産業がよみがえる!
和える(aeru)前編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.020|Page 1

posted:2015.9.29  from:東京都品川区  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!
ものづくり・しくみづくり・ひとづくり・食づくり、場づくりetc、
貝印 × コロカル × earthradioチームが、フレキシブルにテーマを取り上げていきます。

writer's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog//

ジャーナリストから始まったaeru

“0から6歳の伝統ブランド” 〈aeru〉は、
産着や食器などの乳幼児向けの日用品を展開するブランドだ。
矢島里佳さんが大学在学中に立ち上げた。

矢島さんは、小学生の頃から将来はジャーナリストになりたいと夢を描いていた。
大学に進学してすぐに、OBOG訪問をし、
新聞記者やニュースキャスターの方に会いに行った。
そして、自分は何を専門的に伝えたいのかということを考えなければならないと感じた。
そこで中学・高校時代に、茶華道部に属していたことから、
自身が日本の伝統に興味を持ち始めたことに気がつき、
伝統産業を専門にするジャーナリストになることを思い立つ。
企業へ企画書を持ち込むと、それが採用され、
大学1〜3年生の間、若手職人を取材し、雑誌で連載記事を書いていた。
こうして日本の伝統産業の現状を世に広く伝えてきた矢島さんだが、
メディアを通して伝えているだけでは、現状打破が難しいことを痛感することになる。

「3年間連載してきても、伝統産業が衰退していくことを止めることはできず、
むしろ廃業する人は増えていくばかりでした」

伝統産業が衰退する根本的な原因を考えてみると、
現代の生活様式に合わなくなったことがあげられる。

「今は核家族化が進んで、親子3世代で住むことは珍しくなっていますよね。
昔は、おじいちゃん、おばあちゃんが伝統的な日用品を使っているところを見ていたり、
子どもたちも一緒に使って育つ中で、自然と伝統が引き継がれていたのだと思います」

つまり、子どもの頃に、大人が使っている“ホンモノ”にふれる機会が
少なくなったことが原因のひとつだ。
子どもの頃に、大人が使っているものがうらやましく、
同じものを使いたがった経験がある人も多いだろう。
なんだか大人が使っているものは、いいものに見えた。
実際にいいものだったのかもしれない。

「そもそも、子どもの頃に、伝統産業にふれる機会がほとんどないから、
大人になっても知らないので、興味を持つきっかけがないのです。
若い人が伝統産業に興味を持っていないわけではないということを、
自身の実体験を通して感じました。
その魅力を感じたからこそ、次世代につなげたいと思ったのです」

こうして、赤ちゃん・子ども向けの伝統産業品を生み出すという
アイデアが固まっていった。

和える代表取締役の矢島里佳さん。

ものを通して、想いを伝える

aeruはプロダクトを展開するブランドではあるが、
矢島さんの想いが、“伝える”から“つくる”に移り変わったわけではない。
“伝える”という芯のジャーナリズムはまったくブレていないのだ。

「書いて伝えるだけではなく、
ものを通して、子どもたちに伝えるという方法もあることに気がつきました。
ものを売ることそのこと自体は、私たちの会社のミッションではありません。
ひとりでも多くの子どもたちにこれらが贈られて、先人の智慧が自然と伝わっていくこと。
伝わった結果として、売れるという状態になっていることが自然だと思うのです」

間接的ではなく、直接的に子どもたちに伝統産業品にふれてもらう。
そのときは意識的ではなくても、手のなかで大切に持ち、使っている感触を得られれば、
感性はきっと育まれていくはず。
その感性があれば、大人になっても伝統産業品をきっと選んでくれるのではないか。
それは、職人に仕事を生むことにつながる。

「問題解決をしたくて始めたのではなく、
先人の智慧が次世代にしっかりとつながっていってほしいという願いから、
aeruは誕生しています。
そんなaeruは、“三方良し”の考え方を大切にしています。
aeruらしい生き方や働き方、心地のいい暮らしを生み出していきたいです」

近江商人の心得ともいえる“三方良し”は、売り手良し、買い手良し、世間良しという
サステナブルな社会。単なるプロダクトのプロデュースではなく、
その先の循環を見つめる姿勢を大切にしているのだ。

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