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ロボットを使った
コミュニケーションが
家族団らんを取り戻す。
ユカイ工学 前編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.003

posted:2015.5.12   from:東京都新宿区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!

writer's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog//

ソフトウェアからハードウェアであるロボットへ。

ロボットといって、思いうかべるものはなんだろうか?
ガンダムや鉄腕アトム、あるいは実際につくられているASIMOなどもある。
それらには一般のひとが理解するのは難しい、
最先端技術が込められたモノというイメージがある。
しかし、それらの技術=ロボティクスを使って、
ユニークでかわいい商品をつくることも可能だ。
そんなものづくりに励んでいるのがユカイ工学。
社名からしてワクワクしてくる。

会社を立ち上げた青木俊介さんは、
学生時代に猪子寿之さんと一緒にチームラボを立ち上げたメンバーだ。
当時、チームラボはソフトウェア開発がメインだった。
しかし青木さん本人は、子どもの頃からロボットをつくりたいという思いを秘めていた。

「中学生のころに、『ターミネーター2』などの映画を観た影響が大きいです。
それで、ずっとロボットや人工知能をつくりたいと思っていました。
学生のときは、インターネットブームで、
ネットワークによっていろいろなものが大きく変わると言われていた時代。
それらを利用してビジネスをしていました。
逆にいうと2000年ごろは、
ロボットでビジネスができる環境ではなかったのだろうし、
イメージもできませんでしたね」

CEOの青木俊介さん。

ロボットをつくりたいと思っていても、
世の中はインターネットビジネス全盛の時代だった。それを見逃す手はなかったのだ。
しかし潮流に変化の兆しが表れたのが2005年頃だという。

「2005年は〈愛・地球博〉が開催されてたくさんのロボットが出展されたし、
『make:』という雑誌がアメリカで創刊されたのも2005年なんです。
ロボットベンチャーと呼ばれる会社も出始めてきました。
自分もソフトよりもハードウェアをつくったほうが面白いのではないかと感じたし、
“いつかロボットをつくりたい”という夢を持っていたので、
会社を辞め、2007年にユカイ工学を立ち上げました」

〈チームラボハンガー〉は、ショップ内のハンガーが手に取られたことを感知し、その着こなしをビジュアルに映し出すハンガー型販売促進システム。チームラボと共同開発した。(写真提供:ユカイ工学)

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ロボットはコミュニケーションのツールである。

ユカイ工学は“ロボティクスで世界をユカイにする”というコンセプトを掲げている。
現状ではいわゆるロボットというと、
パブリックイメージ通りのホビイスト向けのものが多く、
これらのほとんどはバッテリーの制約を受けてしまう。
1日充電して、1時間程度しか動かないものがほとんどだ。
バッテリーの世界は今後20年間で2〜3倍くらいの性能になると言われているが、
その程度の進化しか見込まれていない。

「たとえばASIMOは10年以上前から歩いていますが、
まだバク転するわけでもないし、ちょっと小走りできるようになったくらい。
一般のひとからするとそのくらいの進化しか感じられません。
モーターを多く使った人型ロボットはまだまだイノベーションが必要だと思います。
この方向性だと、ロボットと一緒に暮らす生活はすぐには想像できないですね」

しかし青木さんは
「ロボットはコミュニケーションのためのデバイスとして進化する」と考えている。
「ひとやセンサーなどと会話する機能はすごく進化しています。
ソフトウェアや処理スピード、およびコンパクトさなどです。
だからコミュニケーションの機能は進化するだろうと思っています。
私たちが一番ワクワクするポイントは、ひとと一緒に暮らすロボットなんです」

センサーにより家庭の状況がわかり、音声メッセージをやりとりすることができる〈BOCCO〉。詳細は次週。(写真提供:ユカイ工学)

スマートハウス化が進んでいる。
家のなかのものすべてにセンサーがつくことで、どんどん賢くなっていく。
さらにネットワークでつながることで、
スマートフォンからコントロールしたり、情報を取ることができるものだ。
そういったものがどんどん増えてきたときに、
それらを集約するインターフェースが必要となってくる。
個別には、スマートフォンがその役割を担っているものもあるが、
青木さんがつくるものはもっと“人なつっこい”ものだ。

「まず、あまり子どもにスマートフォンを渡したくないんですよね。
実際に、うちの子どもにも渡していません。
それにスマホはあくまで個人的なもの。
個人利用を最大化するように設計されています。
せっかく家族がいるリビングで、みんなスマホを見ているのはイヤだなと。
それよりも、ロボットがしゃべればみんな同時に聞こえます。
その場に一緒にいる複数のための端末としては、実体のあるものがいいと思っています」

ロボットというと、便利な反面、人間の役割を奪っていくものと思いがちだが、
ユカイ工学では、家庭のコミュニケーションを戻していく存在として考えているようだ。
コミュニケーションの機能が進んでいくと、
ロボットは人間の暮らしに入り込んでくるだろう。

富士ゼロックスが行っていた〈四次元ポケットプロジェクト〉において、〈望遠メガフォン〉を設計・デザインした。夢あふれるプロダクトだ。(写真提供:ユカイ工学)

後編【アイデアも製造も、現場から生まれるものづくり。ユカイ工学後編】はこちら

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