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農のある暮らし、小豆島ひとやまの春

小豆島日記
vol.006

posted:2013.5.20   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer's profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/

自分たちの食べるものを、自分たちの手で。

陽射しが強くなり、日中は暑いくらいのここ数日。
田んぼに水が入り、稲の苗が植えられ、夜はカエルの合唱。
ここで暮らしていると季節の移り変わりをはっきりと感じます。
そう、すっかり季節は春となりました。

お友だちと一緒に田んぼでカエル探し。結局泥だらけになって帰りました(笑)。

私たちが小豆島に引っ越してからやろうと思っていたことのひとつに「農業」があります。
自分たちがどんな風に生きていきたいのかを考え、いろいろな本を読んでいた時に、
「半農半Xの種を播く」(塩見直紀著)という本の中で、

Familyという英語はラテン語のFamiliaから派生したもので、
今は「家族」と訳されるこの言葉の語源をさかのぼっていけば、
「一緒に耕す者たち」すなわちFarmerに通じている

という一文がありました。
まさにこれだ! とすごく感動した記憶があります。
自分たちの手で自分たちの食べるものを作りたい、
子どもと一緒に家族で野菜を育てたい、
育てた美味しいものをみんなで食べたい。
そして将来的には農業をベースにした生活を成り立たせたいという思いから、
引越して半年、少しずつ畑で野菜を育てています。

家族でしょうがの植え付け。ちゃんと植え方を教えてもらいながら。

自給率100%のサラダ。この春収穫した野菜たちで朝ごはんのサラダを作ります。

幸い、私たちにはおじいちゃんの残してくれた畑がいくつかありました。
ただそのほとんどが休耕地になっていて、雑草だらけ、木は伸び放題。
プランターでトマトを育てたことくらいしかない私たちにとって、
おじいちゃんの農機具がいくつかあってもそれをどう使っていいのかわからず、
さらに何から手をつけていいのかまったくわからず、そんな状態。
ただ気持ちはあったので、隣の家のおっちゃん、おばちゃん(遠い親戚)や、
島で有機農業を営んでいる有機園のおっちゃん、おばちゃんに
とにかくやりたいことを話していました。

ちょうど一年前の畑。雑草だらけの休耕地。

するととてもありがたいことに引越して1か月もしないうちに、
隣のおっちゃんがトラクターで雑草だらけの畑の土をおこしてくれて、
おばちゃんがレタスやネギの苗を持ってきてくれて植え方を教えてくれました。
そして有機園のおっちゃんが堆肥の作り方やチェンソーの使い方を教えてくれたり、
年明けに麦を植えたり。
2月には私の父がやってきて、畑の伸び放題の木々を伐採。

隣の家のおっちゃんと。トラクターで雑草だらけの畑の土をおこしてくれました。

隣の家のおばちゃんの畑。畑のことから地域のことまで、いつもいろいろ教えてくれる先生です。

私たち(30代)の親やその上の世代は本当にすごいなと改めて感じた。
このおっちゃん、おばちゃんたちの知識やパワーを借りなければ、
私たちだけでは何もできない。
こうやって素直に教えてもらいながら、助けてもらいながら、
少しずつ畑で野菜を収穫できるようになってきました。

ニンジンと麦。少しずつ畑らしくなってきました。

引越して半年後の春、去年の秋に植えた
玉ねぎ、レタス、キャベツ、エンドウ豆、そら豆、イチゴなどを収穫。
そして新たに、ニンジン、ゴボウ、ジャガイモ、トマトなどを植え付け。
庭では、おじいちゃんが残してくれたサクランボの木にたくさんの実がなり、
それを収穫してチェリー酒やジャム作り。
もうすぐ梅を収穫して、梅酒や梅シロップを作ろうかと。

サクランボの収穫。とても綺麗な赤い実。ジャムとチェリー酒を作りました。

農業で生計を立てていくことは、とても難しいことだと思う。
課題はたくさんあり、まだ始まったばかり。
でもそんな日々は楽しくもあり、やりがいもある。
そしてここには、農のある豊かな暮らしがあります。

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