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連載

増築ならぬ、“減築”で
暮らしやすさを手に入れる
/ルーヴィスvol.4

リノベのススメ
vol.078

posted:2015.6.30  from:神奈川県鎌倉市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer's profile

Nobuyuki Fukui
福井信行

1975年神奈川県生まれ。大学中退後3年半のニート生活を経て木工所勤務。1996年よりACME FURNITUREにてアメリカ中古家具のメンテナンスと仕入れを担当。不動産会社勤務を経て、2005年に株式会社ルーヴィスを設立。2013年より木賃ディベロップメント共同主宰。2015年より費用負担型サブリースを行う「カリアゲ」をスタート。古家や再建築不可物件など流通しにくい建物の再生を試みながら活動中。

皆さま、こんにちは。
ルーヴィスの福井です。
今回は、「減築」のお話です。
僕らは2008年頃からホームページに「減築」というコンテンツをつくっていました。
減築というのは、わかりやすくいうと「増築」の反対です。
かつて人口が増加傾向にあった頃は、
より床面積を広げようとする「増築」が求められていました。
一方、「減築」はそれとは真逆の考え方。
床面積を減らして、効率のよい生活をすることに価値をおいています。
クライアントは、オオツボデザインの大坪正佳・文恵さん。
今回の住まいは、彼らと共同設計しましたので、
大坪さん自身にも寄稿いただきました。

中古物件を減築して、機能的な住環境に

こんにちは。施主兼設計のオオツボデザインの大坪です。

私たち家族はもともとは東京に家を借りていましたが、
気持ちのいい環境で自邸を持ちたいと考え、
2年間ほどかけて都内~湘南にかけて土地やビンテージマンション、
古家などを探していました。

私たちは土地を買って新築を設計するか、
古家を大規模にリノベーションしようと考えて物件を探していましたが
そんな時に古家はタダ同然になっていることにかすかな疑問を感じていました。
味わいがあって改装したらよくなるはずの古家なのに
タダ同然で値付けされているのを見ると、さみしい気持ちになっていました。
昔の住宅のほうが、今の住宅よりも味わいがあったり、建材などがよい場合もあり、
まだ十分住まいとして活用できる、むしろ気持ちのいい住宅が実現できるのに
解体されてしまうのはもったいないと思っていました。
そして、住宅のリノベーションのデザインをして
自分たちで手をいれながら暮らしてみたい! と考えて始めていました。

鎌倉市内の高台に建つ、今回リノベした物件。

7年前にこの物件を見たときは、まさにリノベーション向きの住宅だと思いました。
場所は鎌倉の裏が山になっている静かな住宅地です。
しかし築50年の木造住宅なので古くなりすぎていて
正直なところ、汚くて住めないと思う部分がありました。
でもロケーションはよい上に値段も安く、古家自体も悪くないデザインだったので
思い切って直しながら住んだら面白そうだなと考えました。
もし、リノベーションをできないという条件なら、ここで暮らそうとは思わなかったでしょう。

建物は、大部分は平屋建で、一部2階建となっています。
まずは、引っ越す前に、奥の住まい部分と水回りは大々的に改装しました。
住みながら改築したのは、手前の平屋部分。
まず、2部屋あった和室の仕切りを取り払い、
天井も取って、廊下との仕切りも取り、空間を広くしました。
更に床を無垢のフローリングに入れ変えてみたら、明るく気持ちがよい空間になりました。

もともと和室(書斎)だった部屋をリビングルームにリノベしました。

以前の住人は小説家であったため、前述の和室以外にも
玄関をあがったすぐのところに編集者の待合室のある間取りで、
面積は広いのに生かしきれずデッドスペースになっていました。
しばらくは、そのまま住んでいましたが、
2年ほど前に近くに借りていた駐車場が取り壊されることになってしまい、
新しい場所を探さなくてはいけなくなったんです。
その時に、玄関まわりの建物を少し削るようなリノベーションをして、
駐車場をつくってはどうかと思い、設計を始めました。
施工をどなたにやっていただこうかと考えているときに思い出したのが、
以前から仕事でお付き合いのある福井さん。
彼のホームページに「減築」と書いてあったと思い出しました。
まさに私たちが計画している考えだったのです。
さっそく、福井さんには施工の相談をさせてもらいつつ、
予算が限られているために安く上がる工法の提案も合わせて出してもらいました。

そして今回のリノベーションでは、玄関先の建物を少し削り取ることにしました。

次は、減築の工事のプロセスを福井さんが説明してくれます。

Page 2

ここから今回の減築のプロセスを説明していきます。

まず、既存建物を正面から玄関部分。
ここに駐車場スペースをつくるために建物を減築することにしました。

既存建物を横から見たものです。

減築は玄関から約2メートルほどの部分を削っていきます。

古家の減築は、既存部分をなるべく傷めないように重機を使わず人力で解体していきます。

屋根を残しながら、少しずつ削り取ります。
外壁を構成しているデザインは既存の住宅の「型」のみを継承しています。

つづいて、屋根と土台・基礎を削り取ります。

断熱と防水をします。

わかりづらいと思いますが、中塗りと上塗りをして仕上げていきます。

さらに、撥水剤を塗布します。
デザインはシンプルですが、古いものと融合し
味わいや温かさを感じられる材料としてモルタルを選択しています。

施主家族が張った芝生のグリーンが映える玄関とアプローチが完成しました。
ファサードは断面をトレースするような
シンプルな家型とすることで印象が大きく変わりました。

「私たちは、暮らしながら不便に感じ始めていた部分を、
今回の玄関先を少しだけ削る減築で大きく改善できたと感じています。
敷地内に駐車場をつくることができ、
もったいない空間だと感じていた部屋を
大きな気持ちの良い玄関ホールに再生することができ、とても暮らしやすくなりました。
また、設計の立場としても玄関のファサードと外構を一新でき、
住宅の顔の印象が大きく変えられたことも
“減築”という手法が古家のリノベーションとしてとても面白いと感じました」(大坪さん)

シンプルな暮らしに合わせて建物を減築。
これによって、デザインも刷新した住まいになりました。
さらに、減築のもうひとつのメリットとは?

Page 3

この「減築」という手法。
2008年頃から粘り強くうったえているのですが実はまだ残念ながら(?)
この1件しかやったことがありません。
減築して家がコンパクトになることで、
掃除など家の管理がしやすくなる。風通しや日照の改善。
家全体のメンテナンス費用の軽減や家の光熱費軽減などのメリットもありますが、
僕は、減築というのは、「家族の距離感の調整」もあると考えてます。

家族というのは、距離が離れすぎていてもぎこちなく、
近すぎてもちょっとしんどかったりします。
それは精神的なことだけではなく物理的にも言えることで、
その距離を調整する手段としても、
減築という手法が生かされていけばいいなと思っています。
まだまだ、事例の少ない減築でイメージがしづらい減築ですが、
これからも少しずつ実績を重ねていきたいと思っています。

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ROOVICE 
ルーヴィス

住所:横浜市南区高根町3-17-3 メトロ阪東橋駅前7F・8F

TEL:045-315-4484

http://www.roovice.com/

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