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連載

小さな島からのおすそわけ。
食の宝庫、小値賀島をめぐる旅

NIPPON 47 Beer Spots&Scene!
全国、心地いいビールスポット
vol.032

posted:2016.7.26  from:長崎県北松浦郡小値賀町  genre:食・グルメ

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〈 この連載・企画は… 〉  その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?

writer profile

Yuichiro Yamada

山田祐一郎

やまだ・ゆういちろう●福岡県出身、現在、福津(ふくつ)市在住。日本で唯一(※本人調べ)のヌードル(麺)ライターとして活動中。麺の専門書、全国紙、地元の情報誌などで麺に関する記事を執筆する。著書に『うどんのはなし 福岡』。 http://ii-kiji.com/

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撮影:草野清一郎

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Supported by KIRIN

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
長崎でコロカルが向かったのは、五島列島の北部にある離島、小値賀島。

全国的に注目を浴びる小値賀島で食材探しの旅

ここ日本には6852もの島があると言われています。
本土が5島、そのほかの離島が6847島。
では、日本で一番、島の数が多い都道府県はどこか。
答えは九州の西に位置する長崎県です。
同県には壱岐や対馬、五島列島など、大小合わせて実に 971もの島があります。

朝の港の風景。のどかでスローな時間が流れています。

そんな長崎の島で注目を集めているのが、長崎県の佐世保港、
もしくは福岡県の博多港からアクセスできる〈小値賀島(おぢかじま)〉です。
佐世保から海上を西に約60キロいった東シナ海に浮かぶこの島は、
五島列島の北端にある大小17の島々からなる小値賀町の島のひとつ。
海や山といった雄大な自然が手つかずの状態で残っていて、
まさにこの場所が「日本の原風景だ」と称されています。

この島を一躍有名にしたのが、民泊、そして古民家での宿泊です。
暮らすように過ごすスタイルが多くの人に支持され、リピーターが年々増えています。
今回の取材でも料理がおいしいことで知られる〈民宿 千代〉に滞在し、
地魚をとことん堪能しました。

思わず足を止め、カメラのシャッターを切りたくなる風景が島にはたくさん存在します。

四方を海に囲まれた小値賀島では豊富な海の幸はもちろん、
なだらかな地形を利用して稲作が営まれてきたほか、
さまざまな作物が栽培されてきました。
古くから、島民たちは代々受け継がれてきた漁業や農業を守りつつ、
自給自足中心の生活を送ってきたそうです。

水揚げされた鮮魚が港に運び込まれていました。

一番おいしいものこそ「おすそわけ」する

小値賀島には独自の文化が根づいています。
都会暮らしの人にとっては想像もできないかもしれませんが、
この島には「おすそわけ」という文化があるんです。
一般的な「おすそわけ」は余った食べ物を分けますが、
この島では一番おいしい状態のものを分かち合うのです。
例えば、漁師がその時期に一番おいしい魚をとってきたなら、
それをご近所の農家に「おすそわけ」します。
逆に、農家が漁師に旬のおいしい野菜や果物を同じように「おすそわけ」する
という具合に、自然の恵みにともに感謝し、一緒に楽しむのです。

〈小値賀町担い手公社〉の松山洋久さん。島内の移動はもっぱらバイク。島の魅力に惹かれ、福岡から移住して1年が経ちました。

そんなすてきな「おすそわけ」を特産品として島外へPRしているのが
〈小値賀町担い手公社〉です。
その根底には、島の外の人々にもおすそわけを体験してもらい、
小値賀のファンを増やしていきたいという思いがあります。

「漁業も農業も島の人口減少によって
産業自体を支えていくのが困難な状況になっています。
小さな島からのおすそわけとして、
島の名産品・特産品が島外でも売れるようになれば、
生活の基盤となる産業の担い手を呼び込み、呼び戻すことができると考えました。
その橋渡し役が僕たちの仕事です」と言うのが同社の松山洋久さんです。

松山さんは、選りすぐりの島の産物をインターネット通販で販売し、
その販路を広げるために奔走しています。そんな松山さんに特別に案内してもらい、
島の逸品がつくられている現場を巡ってみました。

松永光則さん・静江さんご夫妻。几帳面なご主人とざっくばらんな奥さんのふたりでかまぼこづくりに励んでいます。

まず訪れたのが民泊も営む松永静江さんのお宅。
現在、小値賀に数軒しか残っていないかまぼこ屋のひとつで、
元漁師のご主人・光則さんとともに2009年からかまぼこを製造・販売しています。
「小値賀では昔からアジを使ってかまぼこをつくっていたんよ。
だからうちもアジしか使わんの」

生のアジしか使わないのが〈しいちゃんかまぼこ〉のルール。

そう言っている間も静江さんの手は止まることなく、アジを手でさばいていきます。
頭や内臓を取り除くのも、3枚におろすのも、すべて手ひとつ。
静江さんによれば包丁を使うよりも断然こちらのほうが早いそう。

驚くほどのスピードでアジがさばかれていきます。

3枚におろしたアジはすぐに氷で冷やします。
光則さんは「手の熱が伝わって身が緩むやろうが。
それを防ぐために間髪入れずに冷やすようにしとるのよ」と教えてくれました。

手際のよさに熟練の技を感じました。

3枚におろしたアジの身はスプーンでこそぎ、それをミンチに。
塩や砂糖、かたくり粉などによって味つけし、しっかり練ったあと、
藁すぼの代わりにストローでぐるりと巻いて蒸しあげます。
こうして完成するのが〈しいちゃんかまぼこ〉です。

昔ながらのかまどでかまぼこを茹でていきます。

完成したかまぼこは驚くほど、食感がプリプリ。
味つけはやさしく、生臭さもなく、アジそのものの風味がしっかり生きています。
こんなに“魚感”が伝わってくるかまぼこは初めて食べました。

「丸かじりが一番おいしかね。バターで炒めたり、
ゴマしょうゆにつけたりしてもいいし、混ぜご飯に入れてもダシがしっかり出るんよ」
とオススメの味わい方を教えてくれた静江さん。
夏場はアジがとれない場合があり、その際は製造もお休み。
まさにアジありきのかまぼこです。
「できたての熱々はふんわりした食感で、
これもまた本当においしいよ。食べに来て」と静江さんは見送ってくれました。

しいちゃんかまぼこはネットショップで1本540円で販売。つややかな光沢が食欲をそそります。

小値賀島には生アワビ、生サザエの直売所もあります。
〈アワビ・サザエ直売所 あわび館〉は港のすぐ近くにありました。
ここは一般の人も利用できる施設で、生アワビや生サザエのほか、
その時々の鮮魚も全国発送しています。

とてもフレンドリーな岳田政詞さん。わからないことは気軽に尋ねてみましょう。

「ここのアワビやサザエは漁師がとってくるんですよ」と言うのは、
生粋の小値賀育ちの岳田政詞さん。
直売所だけあり、サザエは1キロあたり950円という安さ。

サザエはどれも大粒でした。

アワビやサザエが特にとれる時期は夏ですが、
小値賀島ではその昔は30センチクラスのアワビがとれていたそう。
思いがけぬ大物に出合えるかもしれません。

アワビやサザエはシーズンによってはない場合もあるので、出かける前に問い合わせを。

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ビールにもぴったり!じっくり燻された逸品

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何度もひっくり返してつくるハガツオの生節

小値賀島では古くから生節が保存食として親しまれてきました。
「特に夏と冬にとれるハガツオを使った生節が最高なんよね」
もくもくと立ち上る煙の向こうからご主人の橋元仁平さんが笑顔で教えてくれました。

煙の中で絶え間なく状態をチェックする橋元仁平さん。

巻き網ではなく、一本釣りで釣り上げたカツオだけを使うのが
小値賀の生節の特徴ですが、橋元さんが営む〈丸仁水産〉では
脂がのったハガツオだけを用いるそうです。

生節のつくり方は小値賀島で受け継がれてきた昔ながらの手法。
段階的に炭で燻していき、理想とする琥珀色へと近づけていきます。
その工程を見学させてもらうと、生節づくりがいかに大変かがわかります。
薪窯の上に積み上げられた5段の箱の中にはハガツオがびっしり敷き詰めてあります。

その火力の調整がとても繊細です。
炭をくべて燻していくのですが、火がしっかり起こってしまうと、
火の直接的な熱によってハガツオの身が焦げてしまいます。
そのため、火が出ないように、あくまで熱によって燻すように
細心の注意を払っているそう。

入念に確認し、箱の中でのハガツオの置き場所を調整しています。

同時に身の状態もこまめにチェックします。
橋元さんによれば「色をのせていくような感覚」だそうで、
最初は生身だった身に段階的に色を染み込ませていくように燻していきます。
数分ごとに箱を窯から降ろし、中を覗き見て色つき具合を確認していきます。

「箱の上下でも違うし、ハガツオが置かれた場所でも燻され方が変わってくるんよね。
だからそれを微調整するったい。え、何回くらい確認するかって。10回? 
いやいやそんなもんじゃ全然足りんたい」と言う橋元さん。
「宝くじでも当たれば5段から2段くらいに減らすとになあ」
とおどけてみせる気さくな人柄ですが、炭の火力、
ハガツオの色目の状態をチェックする橋元さんの目は職人そのもの。

仕上がる直前のハガツオ。この段階でも随分と琥珀色を帯びています。

最終的に生節が完成するまでに3時間もの時間がかかりました。
ただ、燻す以前に魚をさばくのも自身で手がけるため、その手間は計り知れません。

橋元さんの生節は、桜の木で燻した香りだけでもビールがすすみそうな一品。
手でほぐすとしっとりとしていて、
ひと口食べれば、じわっと口の中に旨みが広がります。
そして噛みしめるほどに何度も蘇る旨みと香り。
まさに、橋元さんが身の奥の奥まで染み渡るよう
じっくりと燻した思いが込められているようです。

生節は1袋700~1200円で直売もしています。

島での移動中の1枚。牛にご注意を。

隠れた名産!? 甘みたっぷり落花生。

小値賀島の名産として忘れてはならないのが落花生。
いまから70年ほど前から栽培が始まりました。
「食料が手に入らない戦時中、島の宝である子どもたちの楽しみとして、
おやつ代わりに落花生がつくられ始めたんです」という松山さん。

島には赤土のビーチもあります。

島の土は赤土で、ジャガイモやサツマイモなどの根物が甘くなると言われ、
同様に落花生も甘みが強くなるのだそう。
松山さんに連れられてきた加工場では、
いままさに加工品に使う落花生を炒っているところでした。
ここでは剥き身、殻つきの2種類を加工。
剥き身は120度で約40分かけて炒ると真っ赤な色味になりました。

ひと粒味見をさせてもらうと、甘みが段違い。
余韻が長く、幸せな時間もその分長い印象です。
「本当は殻つきのほうがおいしかったいね。惜しかったねえ」
と加工場のリーダー役を務める吉永志生満さんは茶目っ気たっぷりに笑います。

炒る前の落花生は併設する体育館で、粒の大小や形の良し悪しで選別されます。

ふるいにかけてサイズごとに分別し、まるでコーヒー豆のように、
ハンドピッキングによって色の悪いもの、割れているものを弾いていきます。

何万粒もある落花生をひとつひとつ選別する。そう聞くだけで卒倒しそうです。
気の遠くなるような作業の先に、おいしい落花生ができあがるのだと実感しました。

落花生加工場で働くみなさん。仕事中も笑い声が絶えません。

「落花生については今後、さらに品質を高めて
プレミアム商品をつくっていきたいですね。
これからショウガを使った新商品も企画しています。
島の魅力はまだまだ尽きません。しっかりサポートしていきますよ」
そう声を弾ませる松山さんの姿に、島の明るい未来が重なりました。

今回集めた食材と一緒に贅沢なビールタイム。島の恵みを存分に満喫しました。

今回、紹介した食材はオフシーズンや売り切れの場合を除き、
いずれも〈小値賀町担い手公社〉のwebサイトから購入できます。
もちろん、小値賀島に行けば、港近くの商店、一部は生産所でも直売しているので、
ぜひ出掛けてみてくださいね。

今回飲んだのは、
地元の人と一緒につくった
〈キリン一番搾り 長崎づくり〉

「伝統文化を受け継ぎながら、新しいものも受け入れる」と言われる長崎の人。そんな地元の人と地元のことを語り合ってつくられたのが、この〈キリン一番搾り 長崎づくり〉です。パッケージのイメージカラーは、オレンジ。さて、その味わいは……。

キリン一番搾り 長崎づくりってどんなビール? →

※一番搾り 長崎づくりは、長崎の誇りを込めてつくった、長崎だけの味わいです。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く) 
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

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(一財)小値賀町担い手公社

住所:長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷2385-2

TEL:0959-53-3344

http://www.ojika.jp/