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連載

ビールに合うおつまみ野菜
パドロンとは?
生産者〈遠野アサヒ農園〉へ

NIPPON 47 Beer Spots&Scene!
全国、心地いいビールスポット
vol.022

posted:2016.6.5  from:岩手県遠野市  genre:食・グルメ

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〈 この連載・企画は… 〉  その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

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撮影:石阪大輔(HATOS)

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Supported by KIRIN

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
岩手でコロカルが向かったのは、さまざまな野菜をつくっている〈遠野アサヒ農園〉。

スペインではビールのおつまみの定番、パドロンを遠野で!

岩手県遠野市はビールの原料であるホップの産地です。
全国に届けられるビールのなかには、遠野でつくられたホップが
原料となっている場合も多いかもしれません。
そんなホップ畑に囲まれた遠野で、
ビールのおつまみにぴったりの野菜を生産している農家があります。

〈遠野アサヒ農園〉の吉田敦史さんが栽培に取り組んでいるのは、パドロンという野菜。
ししとうのような、ピーマンのようなルックス。
あまり馴染みがないかもしれませんが、どうやらスペインでは
ビールのおつまみの定番だそうです。日本でいえば、枝豆的ポジション。

遠野アサヒ農園の吉田敦史さん。昨年から始めたホップ畑にて。

吉田さんは横浜出身。もともと東京の広告代理店で働いていました。
おもにお菓子メーカーなどの営業を担当していたといいます。

「広告代理店の営業職は幅は広いんですが、これといってコピーを書くわけでもなく、
デザインをするわけでもない。制作チームに指示は出しても、自分ではできない。
だから将来的には、何か手に職を持ちたいという思いは持っていました」

そんなときに出会ったのが農業。
遠野出身の奥様・美保子さんの実家に一緒に帰省したとき、
ピーマンの収穫を手伝ったことがきっかけとなり、農業への思いを募らせていきました。
そして10年以上勤めた会社を退社し、2008年に遠野へ移住。
無事、新規就農し、〈遠野アサヒ農園〉を始めることになりました。

「最初は右も左もわからないので、農協が取り扱っている野菜を中心に育てました。
それで数年やっていたのですが、自分の野菜がどこで売られていて、
どういう評価になっているのか、知りたいと思い始めたんです。
東京の大田市場にも卸されています。だから東京の友だちに
“どこで売っているのか?”と聞かれるんですが、私たちにはわからないんです」

そうして自分で直接野菜を販売しようと考えていきました。
しかしその場合、特色がある野菜でないとなかなか売れません。
いろいろな野菜を調べているうちに、
スペインバルを経営している先輩が教えてくれたのがパドロンでした。

「よくよく調べてみると、スペインではビールのおつまみの定番でした。
日本ではすごくニッチな野菜かもしれませんが、
日本でビールのおつまみ野菜といえば枝豆くらいしか思い浮かばないので、
もうひとつくらい選択肢に入る余地があればいいなと。
おそらく売り先を探すのは難しいだろうけど、コツコツやってみようと思いました」

パドロンの素揚げ。

遠野がピーマンの産地であったことも、これ幸い。
パドロンはピーマンと同じナス科。実も似ているし、苗もそっくりだそうです。
だから「まぁ、いけるんじゃないか」と。

もちろん難しかった面もありました。
原産地であるスペインのパドロン地方は、遠野と比べても涼しく、
年間の最高気温が20度台後半。日本の熱帯夜などの暑さは、樹にストレスがかかり、
カプサイシンという成分が働いて、辛味が出てしまうのです。
そもそもパドロンは、10個に1個くらいは辛味のある野菜で、
それが良さでもありますが、その割合が増えてしまうこともありました。

盆地である遠野は、思ったよりも暑い。手前の畑にはこれからパドロンが植えられます。

パドロンの苗。

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現在では栽培方法も確立、収穫量も安定

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2011年にパドロンを育て始め、現在では栽培方法も確立、
安定した収穫量を保っています。
1年のサイクルは、3月上旬に種を蒔いて、苗を育て、
5月下旬にその苗を畑に植えます。
取材時は、数日後に畑に植えられるのを待っている苗が並んでいました。
畑に植えるとすぐに生長して、なんと約1か月後の6月下旬には
最初のひとつが収穫できるといいます。

最初は1株からたったのひとつ。なんだか大切にしたくなる愛おしいヤツです。

とはいえ、それからどんどん収穫量が増え、
10月の上旬まで収穫し続けることができます。
最初はたったひとつしか採れなかったパドロンの実が、
1株から合計で100個以上収穫できるそう。
遠野アサヒ農園では年間で3000株程度を作付けしています。

畑の土にはビール製造のときに出る麦芽カスを再利用して、
植物性堆肥として混ぜ込んでいるそうです。
まさに“ビールの里”らしい取り組みです。
ビールとの相性もより良くなりそう。

パドロンの苗ひとつひとつに丁寧に水を与えていきます。

早く外に出たくてウズウズしているハウス内のパドロン苗。

遠野が育んだ、パドロンとビールの蜜月

栽培はうまくいきましたが、売れないと意味がありません。
最初は自らパドロンを持って、飛び込み営業の日々。

「一番最初に取り扱いが決まったのはスペインバルです。
お店に行ったら、メニューにパドロンがあったんです。
でもよくよく聞いてみたら、『ししとうを使ったパドロン風素揚げ』
であることがわかりました。これはチャンスだと思いましたね。
さっそく持っていったパドロンと食べ比べてもらったら、
『ししとうとは全然違っておいしい』という反応をもらって。
スペイン料理の料理人は、研修や試食などで
スペインに行ったことがある人が多いんですね。
彼らは現地でパドロンを食べています。
だからこそメニューに入れているんだと思います」

ここで感触をつかんだという吉田さん。
またキリンとの出会いも大きかったといいます。
東日本大震災が起きた年から始まった〈復興応援 キリン絆プロジェクト〉。
キリンが東日本大震災の復興支援として、被災地のさまざまな活動を
支援しています。吉田さんは、キリンが支援していた
〈東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト〉に参加し、
〈遠野パドロンプロジェクト〉を立ち上げました。

「よく考えたら、これだけホップ畑に囲まれながら、
ビールのおつまみという触れ込みの野菜をつくっている。
すごくつながりやすいストーリーですよね。
プロジェクトメンバーに言われて、初めて気がつきました(笑)。
遠野の土地柄や強みを生かすという方向性はまったく考えていなかったんです。
そういうストーリー性がまとってからは、販売もよりスムーズになりました」

ホップ畑。真夏にはワイヤーを上まで伝ってグリーンカーテンになります。

1本1本、ワイヤーにからませていきます。

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どうやって食べるのがおいしいの?

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ところで、どうやって食べるのがおいしいのでしょうか。
吉田さんの提案するおいしい食べ方は、生パドロンの素揚げです。

「よく聞かれるし、自分でもよく食べるので、食べ方の研究はしていますが、
やはりシンプルに素揚げがおいしいです。
焼いたり、中華っぽく料理してくれたり、こんなに小さいのに
肉詰めにしてくれた人もいましたが、結局、シンプルに素揚げが一番!」

農園から生パドロンを出荷できる時期は、もちろん生でどんどん出荷します。
真夏で出荷数以上に採れすぎてしまうときのパドロンは、
衣をつけてフリット状態に加工してから冷凍保存。これで冬から春の注文に対応します。
吉田さんのオススメが、素揚げの次にフリットなのです。
生冷凍を用意しないところに、パドロンへの美学を感じます。

パドロンフリット。これだけあったらビールが何杯いけることか!

サッと揚げると、軽い食感でスナック感覚。

ということで、パドロンフリットを美保子さんが振る舞ってくれました。
さっくりとしながらも、中味はしっとり。
ししとうに似ていますが、もっと凝縮された感じで、ほんのり苦味。
もう、炭酸でシュワッと流し込みたい気分になります。

ビールの里で生まれた、ビールの新しい相棒。合わないわけがありません。
この夏はぜひ、シエスタ気分でパドロン素揚げを楽しんでみてください。

ホップ畑で仕事終わりのひととき。

今回飲んだのは、
地元の人と一緒につくった
〈キリン一番搾り 岩手づくり〉

真面目にコツコツとつくり上げてきた岩手・遠野産のパドロン。〈キリン一番搾り 岩手づくり〉には、もちろん岩手産のホップが使われています。パドロンを引き立てるのは、同じ土地から生まれたこちらです。

キリン一番搾り 岩手づくりってどんなビール? →

※一番搾り 岩手づくりは、岩手の誇りを込めてつくった、岩手だけの味わいです。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く) 
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

遠野アサヒ農園

住所:岩手県遠野市青笹町糠前28-65

http://asahifarm.web.fc2.com/