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勝手に作る商店街サンド:
百合根がこんなにおいしいとは!
北海道帯広編

LOVE、商店街
vol.017

posted:2017.4.17   from:北海道帯広市  genre:食・グルメ / 活性化と創生

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〈 この連載・企画は… 〉  ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?

writer profile

Kozakai Maruko

小堺丸子

こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。

credit / note

撮影:水野昭子

商店街サンドとは?

「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。

真冬の帯広でサンドをつくる!

今回は北海道の帯広市にやってきた。
食料自給率1000パーセントを超えるといわれる食の宝庫、十勝地域にある。
世界で唯一のばんえい競馬場があったり、
縁起が良さそうと多くの人が訪れる〈幸福駅〉(廃駅だけど)、
豚肉を甘いタレで食べる〈豚丼〉で有名である。

そしてさすが北海道、冬となれば寒さも売りのひとつ。
夜はマイナス20度にもなり、
だからこそ見ることのできる幻想的な光景に出会える。

冬の帯広は純白の世界が見られる! 空気がキラキラと光るダイアモンドダストも。

まさに白銀の世界。

早朝に参加した十勝川の川下りでは、これまで見たことのないファンタジックな光景が見られた。▶︎協力:サムライプロデュースへリンク

そんな帯広での商店街サンド作り。
帯広観光コンベンション協会の中村 絵美さんに協力いただき、
マイナス7度のなかでスタートした。

中村さんはもともと東京出身だが、
大学がきっかけで帯広に住むようになってからは「もう東京には戻れない」という。
その魅力を聞きながら駅前の商店街を進んだ。

見事な十勝晴れ。十勝地方は雪以外、基本的に晴れらしい。

晴れor雪!

帯広の魅力のひとつに、とにかく天気がいいというのがある。
〈十勝晴れ〉と言うそうで、
梅雨はなく、一年を通して9割も晴れているのだそうだ。
残りの1割は? というと雪なのである。
雪は、はたけば落ちるから傘いらずの気候といえるかもしれない。
それだけでもうらやましい!

もう東京には戻れないですね、と中村さん

そして、このあたりは〈モール温泉〉という茶色に濁った温泉がわいている。
車で少しいけば、すばらしい眺めとおいしい食事が堪能できる温泉宿が多数あるのだが、
駅まわりのビジネスホテルや銭湯でも同じ温泉に入れちゃうそうだ。

帯広といえば豚丼だ。ここは駅前にある元祖豚丼のぱんちょうさん。サンドに入れられないので残念だけどスルー。

近くの精肉店は何かあるかな。

コロッケなどの加工品は売り切れていたが豚丼の特製ダレが売られているのを発見。豚丼のタレは店によって微妙に違うそう。

帯広は魚よりだんぜん肉!

少し歩いただけでも帯広名物の〈豚丼〉のお店や精肉店、
ジンギスカンが食べられるという焼き肉屋さんが見つかった。
帯広は肉料理が豊富なのだ。

逆に、海鮮料理屋さんは少ない。
北海道のなかでも内陸部にあって魚がとれないためだ。
なのに「北海道に来たら海鮮でしょ!」と
勘違いする観光客が多くいるそうだが、
帯広に来たら肉を食べるべきなのである。

海鮮がどうしても食べたいという人に案内するお店。帯広では貴重かも。

中村さんはほかにも、帯広にはおいしいものが多いことや、
春夏秋冬がしっかりと感じられるところが好きだと言っていた。
冬は確かに寒いけど、意外と苦ではないという。

夜に来たい、〈北の屋台〉。

帯広グルメの登竜門

商店街の一角には〈北の屋台〉そして、
車道を挟んだ向こう側には〈十勝の長屋〉へと続く、
小さな飲食店が並ぶ飲み屋街があった。
あわせて4〜50ほどの店がありそうだ。
昼なので開いていなかったけれど、夜は地元の人や観光客で賑やかになるという。
どこもすぐに満杯になってしまいそうな小さいお店は
とても居心地よさげに見えた。
隣の店で注文したものを食べてもOKというのもおもしろい。

ちなみに、ここに並ぶお店は老舗ではなく、どちらかというと
独り立ちをするための登竜門のようなものらしい。

お晩です=こんばんは。北海道でよく使われる方言なのだとか。

こちらはスナックが集まるビル。飲みどころには不自由しないまちだな。

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引き続き、パンとお惣菜さがし!

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老舗のパン屋さん発見

そうこうしていると、帯広を代表するパン屋さんに到着。
1950年創業の満寿屋(ますや)さんだ。

創業当時と思われる写真が貼ってある、歴史を感じる店内。
菓子パンからお惣菜パンまで、たくさんのパンが並んでいた。
きなこクリームがたっぷりサンドされた〈こうばしきなこ〉や、
50年の歴史があるというクロワッサンがおいしそうだった。

お母さんに意見を聞きながら

全粒食パンをゲット!

サンドに欠かせないパンを無事手に入れ、
次に向かうは……みんなが大好きなあのお店である。
北海道のお土産の定番、マルセイバターサンドを売るあのお店だ。

そう、六花亭だ! 本店一号店は帯広にあるのだ。

たくさんの商品が並んで興奮するふたり。

六花亭といえばバターサンド、バターサンドといえば六花亭。
そう思っていたが、六花亭にはほかにも
クッキーなどの焼き菓子やカステラ、羊羹などいろいろなスイーツが並んでいた。
しかも箱買いではなく、バラでも買えるのがうれしい。
また、本店や限られた店舗のみで販売の〈マルセイアイスサンド〉が売られている。
ひとつ200円。
しかも店内奥にあるスペースで、無料のコーヒーと一緒にいただくことができるという。
これは食べずにはいられない。

マルセイアイスサンド。ここ帯広本店や限られた店舗のみで販売。

すっごくおいしい! 帯広にきたら絶対寄ってほしい。

注文すると、定員さんが奥でアイスとクッキーをサンドしてきてくれる。
実はこの作業がポイントだ。
その場でサンドしてくれるから、クッキーがサクサクなのだ。
マルセイバターサンドは時間が経つと、
クッキー部分がしっとりとしてくるのが特徴だけれど、
アイスサンドはサクサクが売り。
バターとレーズンたっぷりのアイスは、白目になるほど最高においしかった。

お菓子だけかと思ったらバターを発見! パンに塗ろう。

お菓子屋さんだからサンドに挟めるものはないだろうと思いきや、
なんとバターを発見! 即購入した。
さて、引き続き具材探しだ。

商店街の一番奥のアーケード街には服屋が多く、具材になりそうなものはなし。

気になるお店の看板、はげ天。天ぷらの有名店だそうだ。

気になる建物、プリンス劇場。昔、映画館だったらしい。すごく雰囲気ある。

たまにシカの足跡やオブジェが置かれているのが北海道らしくていい。

ソリにひかれる子ども。かわいい。

中村さんがサンドに向いているものを一生懸命考えてくれながら歩いていたが、
夜に開くお店が多いことと、買い食いするようなお店が少ないことで苦戦。
ひとつ候補にあげていたカレー屋さんがあったのだけど、
ちょうどこの日に限って店内工事のために休みだった。

狙っていたカレー屋、休み。ガーン。

めげずに目を凝らしながら歩いていると
最近できたというシェアホテル〈HOTEL NUPKA〉を見つけた。
中にちょっとしたカフェコーナーがあり、
お惣菜が売られているのが見えたのだ。

かわいらしいシェアホテル。オリジナルのクラフトビールも飲める。

パテやキッシュ、苦みがきいているという〈ビールプリン〉という変わり種スイーツもあった。

買ったのは、彩りを考えてニンジンとりんごのラペサラダ

彩りを考えて、と書いたがまだメインとなる具材は決まっていない。
そうこうしているうちに日が暮れ始め、焦ってきた。
帰りの飛行機の時間が迫っているのだ。
すると中村さん、「まだ開店前だけど
上司が常連のお店にお願いしてみましょう」と電話して
あるものを予約してくれた。

つれていってくれたのは〈海彦山彦〉というお店。

用意してもらったのは高級食材の〈百合根(ゆりね)〉である。大きいサイズ。

百合根というのはその名の通り、百合の球根だ。
95%が北海道でとれるそうで、
食感はじゃがいものようにホッコリしている。
私は前日にこの百合根の和え物を食べていて、
そのおいしさに驚いた、という話を中村さんにしたところ、
サンドに入れる候補にあがったのだった。

急きょ対応してくれた代表・鈴木 邦彦さん。ありがとうございました!

代表の鈴木さんがお店で出しているのは、
素材そのままを生かした〈百合根の素揚げ〉。
ちょっと塩をかけて食べるだけでうまいそうだ。
なかでも帯広市太平町にある山西農園さんでとれる百合根は絶品だそうで、
そこから買いつけたものを使っているという。
私が前日に食べた百合根は、花びらを散らすようにほぐされていたけれど、
実物はこんな形だったのか。

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今までで一番ゴツい見た目のサンドができた!

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残す一品は、駅の反対側の長崎屋で買うことに。

隠れた名物〈いももち〉である。お惣菜コーナーで発見。

ほかに個人店が見つからなかったので、
長崎屋のスーパーで帯広らしい食材を探すことにした。
そこで見つけたのはいももち。
道央・道東地方の郷土料理だそうで、
じゃがいもをつぶしたものに片栗粉をまぜ、焼いたものだ。
それにバター・醤油・砂糖なんかをまぜた甘いタレがついている。

今日の戦利品。六花亭のバターの存在がすごい。

これだけでおいしそう。バターの芳醇な香りがする。(ちなみにレーズンの味はしない、ノーマルなバターだ。)

思い切って重ねます。

重さに耐えられず凹むパン。

できた! 「拳(こぶし)」ってかんじになった!

完成したサンドは、なんと形容したらいいのかわからないビジュアルになった。
この道中のレポートを見なければ「どうしてこうなった」と
ツッコミたくなるような見た目である。
特に百合根の、彫刻刀で拳を彫ったかのような、
もしくはゴジラを彷彿とさせるような
重厚感のあるテクスチャがインパクトある。
いままでにないサンドイッチ、ということでシン・サンドと名づけたい。

いただきます!

しかし周りには、そのビジュアルからは想像できないくらいいい香りが漂っている。
かぶりつくと、百合根はホロっと口の中で散り、
揚げることで凝縮されていた上品な旨みが広がった。

百合根は、簡単に例えるなら茹でたジャガイモに似ているのだけど、
一片一片の食感がとても好ましくて、そうだ、栗のようでもある。
すぐに口からいなくなるのが寂しくなるほどおいしい。

いっぽう、本物のジャガイモを使ったいももちは
モッチリとしていて甘くておいしい。
うっすら塩気があり繊細な百合根と好対照である。

ラペサラダはシャキシャキとした食感とほどよい酸味がアクセントとなり、
スッキリとしたあと味にしてくれた。
見た目はゴツいけど、意外とサンドイッチぽくなったのは
このラペサラダのおかげだろう。

おいしい。けどボリュームがすごいね!

「百合根をパンに挟むという発想がなかったですけど意外とパンに合いますね!」
と驚く中村さん。百合根の可能性が広がった瞬間だ。

百合根のホロホロしたところ。隅々までおいしくいただきました。

という感じで、今回のサンドでは
肉のイメージが強い帯広の違った側面を見ることができて楽しかった。
しかし、百合根は冬の食材である。
四季がしっかりと感じられるという北海道では、
また夏にでも、あらためて商店街サンドをしてみたいと思った。

●帯広駅前商店街サンドレシピ

・満寿屋 全粒食パン 146円

・六花亭 マルセイバター 500円

・HOTEL NUPLA ニンジンとりんごのラペサラダ 500円

・海彦山彦 百合根 810円

・長崎屋 いももち 142円

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合計 2099円

商店街サンド #13 -- Spherical Image -- RICOH THETA

ドラッグで画像が360度回転します。

Information


map

帯広駅前商店街

住所:北海道帯広市

Webサイト:帯広市ホームページ

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