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山と田んぼに囲まれた、
小さな一軒の窯元「延興寺窯」

おでかけコロカル|鳥取編

posted:2013.7.11   from:鳥取県  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

editor’s profile

Kaori Ezawa

江澤香織

えざわ・かおり●神奈川生まれ、東京在住。フリーライター。友人に誘われふらっと訪ねた鳥取の旅で、 その良さに感動し、以後、山陰と深く関わることに。「山陰旅行 クラフト+食めぐり」(マイナビ)著者。 食、旅、クラフト等を通じて、日本文化とものづくりを応援。

credit

撮影:上原朋也
取材協力:鳥取県

日々の暮らしに心地よい、丁寧な手仕事の器。

昔話の絵本の中にでも出てきそうな、
山と田んぼに囲まれた、小さな一軒の窯元。
田んぼのあぜ道を抜け、ちょっと高台を上ったところで振り返ると、
一面に広がる田園風景は、清々しく気持ちがいいものです。

延興寺窯の山下清志さんは、
民藝運動のメンバーでもある河井寛次郎に師事していた陶芸家・生田和孝の元で学び、
その後、兄の山下碩夫氏と共に、
地元に古くからある浦富焼の復興に務めました。
そして1979年に独立して自身の窯を持ち、作陶しています。
カップや茶碗など、日常に気兼ねなく使える、肩肘張らない健やかな器で、
白、黒のシンプルな色合いが中心です。
料理が映えやすい、自然で落ち着いた質感の色合いです。
無駄のないすっきりしたフォルム、手で持ったときの収まりやすさも魅力です。

土は地元のものを採取、といっても家から徒歩2、3分くらいのところで、
自然なまま伸び放題の草むらをざくざく抜けていくと、
壁にぽっかり穴の開いた、小さな採掘場があります。
あれれ? というくらい、こじんまりとしていますが、
材料にするには十分なくらい、まだまだたくさんあるそうです。
地層を調べてもらったところ、びっくりすることに、
1600万年前くらいの土らしい、とのこと。

沖縄・読谷村の北窯へ弟子入りしていた三女の裕代さんも、
鳥取に戻ると一緒に作陶を始め、
親子で展示を行うことも多くなってきました。
控えめでもの静かな風情の裕代さんでしたが、
清志さんと一緒にいると、いつの間にか親子漫才になっているとか。
同じ土で同じように作っていても、
きりっと端正な印象の清志さんの器に対して、
裕代さんの作るものはどこか柔らかく女性的で、
沖縄の大らかさがほのかに表れていたり。
親子のそんな微妙な違いを感じられるのも、器選びの楽しさです。

工房の壁には毎年ツバメが巣を作り、かわいいヒナがかえるそうです。
(狙いにくるヘビもいるそうで、危ない危ない!)
近くにたぬきがひょっこり現れたりして、
のどかでほのぼのとした時間が流れている、穏やかな場所です。

information


map

延興寺窯

住所 鳥取県岩美郡岩美町延興寺525-4
TEL 0857-73-1219
時間 9:00~18:00 不定休(訪問時は要連絡)

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