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デザインの力で問題解決!
ADOBE DESIGN JIMOTO
in 奈良

コロカルニュース

posted:2017.2.28   from:奈良県奈良市  genre:アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Akiko Saito

齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。

credit

Photo: Nishioka Kiyoshi

日本全国に存在する社会的な課題や問題を、
“デザインの力”で解決できないか?
そんなテーマで開催されているイベント
〈ADOBE DESIGN JIMOTO〉。
出された課題を解決するデザインワークを、
クリエイターたちが知恵を絞って
なんと制限時間3時間で仕上げるという、ライブデザインイベントです。

法相宗大本山〈興福寺〉

第1回の福岡、第2回の渋谷に続く第3回の会場は、
奈良県の世界遺産、法相宗大本山〈興福寺〉の会館。
五重塔をはじめ、たくさんの国宝を所有する、由緒あるお寺です。

イベントを主催するのは、「フォトショ」の愛称でおなじみの
“Photoshop”などを開発・販売するメーカー、アドビ
今回は、奈良県と、奈良県吉野郡東吉野村にあるクリエイターのための
シェアオフィス〈オフィスキャンプ東吉野〉、
アジア各国のデザイナーたちが地域に一定期間滞在して
コミュニケーションデザインを制作するプロジェクト〈DOOR to ASIA〉と
パートナーを組んでの開催。
地元の課題に向き合っているパートナーたちなので、
今回のイベントで出されたプランが実際に使われることもあるかも?

イベントに参加したのは、奈良を拠点に活動されている
デザイナーや編集者らのクリエイター、7組14名。
このうち3名は、〈DOOR to ASIA〉の姉妹プログラムである
〈DESIGN CAMP@奥大和〉というプログラムで約10日間東吉野村に滞在してきた、
インドネシア・ジャカルタの精鋭デザイナーたちです。

■奈良県観光局が抱える問題とは…

全員が集合し、いよいよ課題の発表。
奈良県観光局観光プロモーション課からの出題です。
奈良県の悩み……。それは、外国人の方が、レストラン選びで困っていること。
店頭のメニューが読めないので、価格がいくらか、
アレルギーや宗教などに対応しているか、といったことがわからない。
これは観光誘致において早急に解決してほしい問題!

出されたお題は、「奈良を訪れた人の飲食店選びの不安を解消する」というもの。
ここから、3時間の制限時間でのデザイン制作が始まります。
会議を始めるチームもいれば、奈良のまちに出てフィールドワークをするチームも。
ということで、制作スタートです!

制限時間は3時間。

奈良の問題を解決するには、フィールドワークから。
どんな状況になっているのか、クリエイターが
実際にまちを歩いて課題を探します。

見慣れたまちも、課題解決を考えながら歩くと、また違った視点が見えてきます。

会場に戻ってアイデアを固めたら、あとは制作するだけ!

キャラクターをデザイン中。

素材の撮影もその場で。

チームごとに、取り組み方もさまざま。
テーマが自由なので、どんなものができあがるのか、
まったく予想ができません。

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地元クリエイターのお話

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■地元クリエイターが語る奈良のリアル

さて、クリエイターがデザインに打ち込んでいるあいだ、
集まった一般のお客さんに向けて、
ゲストスピーカーによるトークが行われます。

ユニークだったのは、奈良市で町家一棟貸しの宿〈紀寺の家〉を運営する
建築家の藤岡俊平さんのお話。
藤岡さんは奈良へのUターン組。戻ってきて感じたのは、
“伝統的な建物が潰されていっている”ということ。

「奈良の町家に住みたいと思った人がいたら、まず何を見るか?
不動産屋さんのサイトを見るんですが、町家は土地・古屋つきで販売されているんです。
町家がありますけど、取り壊して土地として使えますよ、という視点でしか見られていない。
直せばすばらしい空間になるのに、現状を見るとどうしても改修が難しそうだと感じてしまう。
そこで“こんなにすてきになるんですよ”と知ってもらうために、
紀寺の家〉という町家をリノベーションしたゲストハウスを始めました」

町家に住まうように旅するというコンセプト、スタイリッシュなデザイン、
朝ごはんを岡持ちで持ってくる、などのユニークなアイデアが評判を呼び、
紀寺の家は現在5店舗を経営。登録有形文化財やミシュランの二つ星になるなど、
その評判は海外にまで広がりました。
お客様に出すお食事の、お米もお味噌も梅干しも自作するというこだわりぶりが
気になります。

奈良県観光局観光プロモーション課の阿部辰雄さん。

友廣 裕一(つむぎや代表)さんと矢部幹治(エージェント・ハムヤック代表)さん。

ほか、奈良県観光局観光プロモーション課の阿部辰雄さんが
「訪れる人は多いのに、宿泊者が少ない」という、
観光地としての奈良の課題を話し、現在は刀鍛冶の現場の見学や、
春日大社を夜間に貸し切るなどのスペシャルな体験を
パッケージとして提供していることを紹介しました。
また、アジア各国のデザイナーたちが地域に一定期間滞在して、
地元事業者のもとに滞在する“デザイナーズ・イン・レジデンス”の
プロジェクト〈DOOR to ASIA〉の紹介も。

というゲストスピーカーの刺激的なトークのあとは、
いよいよ作品発表と審査結果発表!

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結果発表

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■受賞作は観光案内所の新しいアイデア

さてお待ちかねの作品発表! たった3時間でデザインされた作品は、
どれも魅力的なものばかり。

〈OZZO (おずぞー)〉デザインによる、滋賀発祥、
奈良でもよく見られる「飛び出し坊や」と鹿を組み合わせた
キャラクター〈食べしか〉くんは、お店の前に置いて、
アレルギーや宗教対応などをアナウンスする仕組み。
奈良の鹿は安全のために角が切られているので、食べしかくんの
角もカットされているのがローカルのしるし、だそう。

またインドネシアのデザイナーユニット〈K100〉は、
グラフィカルな〈EAT! NARA〉のサインシステムをデザイン。
外国人から見ると“しかまるくん”のデザインはちょっと子どもっぽいので、
シンプルでスタイリッシュなデザインに。

左からShiori Takei(アドビ)さん、チームMAT(E)RIX(鈴木文貴、山本あつし)、阿部辰雄さん、友廣裕一さん、矢部幹治さん、仲尾毅(アドビ)さん

など、7組の発表が終わったところで、
審査員+会場のお客様の投票により、受賞者が決定!
最優秀賞は、プロデューサー山本あつしさんと
空間デザイナーの鈴木文貴さんのユニット〈MAT(E)RIX〉による、
観光案内所に椅子を置いて、奈良を紹介したいという地元の人と、
訪れた観光客が椅子に座って話し合い、
奈良のいいところをオススメする場所をつくるプロジェクトでした。
ほか、各参加者の作品は、Behanceにて公開されています。
地元活性化のアイデアの参考にしてみてはいかがでしょうか?

information

ADOBE DESIGN JIMOTO vol.3 in 奈良

日程:2017年2月5日(日)

会場:法相宗大本山 興福寺会館(奈良県奈良市登大路町48番地)

Web:Behance

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