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勝山 Part3
やがて、お雛さまが似合うまちへ

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.008

posted:2012.3.21  from:岡山県真庭市勝山  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

旧城下町・勝山に暮らす染織作家の加納容子さん。
4回にわたり山崎さんとの対談をお届けします。

生まれ育って暮らすまちへの、お礼の気持ち。

山崎

加納さんたちの取り組みのすがすがしさこそ、
この連載で学ぶべき核心なんじゃないかなあって思うんです。
つまり、個人の「好き」や「やりたい」がいつしか集まって、
楽しくまちを動かすということなんですけど、
そのための仕組みみたいなことはあったんですか?

加納

……なんでしょうね。
資金に関しては、助成金以外に、おそばの売上金を当てたりしました。

山崎

そば?

加納

ええ。このプロジェクトに関わる男性たちはみな、そば打ちが好きなんです。
それで、町内のイベントに出かけては、そばを打って
稼いだお金をコツコツ貯めて、
そこから、1軒につき1万円ずつ補助をしているんです。

山崎

あはは。いいですね!

加納

加えてわたしも、まちの方たちへの販売は、
16年前からのれんの値段を上げていませんし。

山崎

ずっと?

加納

ええ。これは、まちのひとたちへのお礼の気持ちなんです。
みなさんがのれんを喜んで、しかもずっとかけ続けてくださるから、
わたしは酒屋を辞めて、今の商売で生きていけているわけですから。

山崎

うーん、なるほど。

加納容子さんと山崎亮さん

加納「のれんを値上げしないのは、まちのひとたちへのお礼の気持ち」

よそが羨むほど、元気になれるまちへ。

山崎

そうやってまちのひとたちが、楽しみながら
無理なく力を合わせられたってことがポイントですね。

加納

だって、山崎さん。年は多少違うとはいえ、
みんな幼なじみで、性格も知り尽くす長い付き合いですもの!

山崎

あ、そうか!(笑)

加納

だから、のれんの事業を続けていくうちに、
「子どものころに楽しかったことをやればいいんじゃないの?」
という考えに行き着くんです。

山崎

それではじまったのが「勝山のお雛まつり」というわけですか……。

加納

そうなんです。最初のアイデアをくださったのは九州の作家さんなんですけれど、
のれんと同様、やりたい人から参加してもらうことにしてきました。

山崎

ここでもやはり同じように、ですね。

加納

ええ。はじめてみると、初年度から
3月の5日間で5000人の観光客が来てくださったんですよ。

山崎

それはすごい!

加納

14年を経た今では、毎年だいたい4万人ベースです。
いちばんよかったのは、女性たちが元気になったことなんです。

山崎

うーん、わかるなあ。みんな、見せたかったんですね、きっと。

加納

このあたりは武家屋敷もあって、
かつては横柄なまちと言われたこともありました。
でも、表にのれんがあって、お雛さんもあって、
まちのひとと訪れたひとの間に自然と会話が生まれる。
そうするうちに、いつしか
「おもてなしのまち」と評価されるようになるんです。

山崎

なるほど。

加納

今では「このまちに来ると、なんだか癒されて元気が出る」
と言ってくださる方までいるから、うれしい限りですね。

(……to be continued!)

* 勝山のお雛まつり:ことしで14回目を迎えた「勝山のお雛まつり」では、3月の5日間、街並み保存地区・新町商店街の民家、商家などの軒先に、それぞれの家が大切にする、江戸時代から現代までの「お雛さま」を展示。まるで、秋の「勝山祭り(喧嘩だんじり)」と対を成すような女性らしさ、素朴でどこか懐かしい雰囲気が人気をよぶ、春のおまつり。

雛飾りの準備

2月下旬ごろから、まちのあちらこちらでお雛さまの準備が始まる。

建物の外からも見られる雛飾り

毎年たくさんのひとに愛でてもらえて、なんだかお雛さまもうれしそう。

お雛さま

それぞれの家の女性たちが「わが家のお雛物語」の語り部に。

profile

YOKO KANOU 
加納容子

1947年岡山県勝山生まれ。女子美術短期大学デザイン科、生活美術科卒業後、29歳で勝山にUターン。1996年に勝山町並み保存地区にて、のれん制作開始。翌年、生家にて「ひのき草木染織工房」を立ち上げる。染織作家/「勝山文化往来館ひしお」館長。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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