連載
posted:2024.10.30 from:全国 genre:暮らしと移住 / 活性化と創生
PR 観光庁
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Saori Nozaki
野崎さおり
のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。
photographer profile
Hiromi Kurokawa
黒川ひろみ
くろかわ・ひろみ●フォトグラファー。札幌出身。ライフスタイルを中心に、雑誌やwebなどで活動中。自然と調和した人の暮らしや文化に興味があり、自身で撮影の旅に出かける。旅先でおいしい地酒をいただくことが好き。
https://hiromikurokawa.com
コロナ禍を経て、旅のスタイルに変化が起きました。
長期的に地域との交流を育み、「何度も地域に通う旅、帰る旅」。
1度きりの旅行では味わうことができない、豊かで新しい旅体験を、
求めている人も増えています。
現在、観光庁が取り組んでいる「第2のふるさとづくりプロジェクト」では、
新たなコンセプトとして『まちが わたしが 育つ旅。「いくたび」』を掲げ、
2024年9月26~29日の4日間、東京・有明の東京ビッグサイトで行われた
『ツーリズムEXPOジャパン2024』にも参加。
この「第2のふるさとづくり」とは、一体どんな取り組みなのでしょうか?
10 回目の開催となった今回のテーマは、「旅、それは新たな価値との遭遇」。
国内外から1384 もの企業や団体が参加し、会場には外国や日本の自治体、
観光にまつわる事業者によるブースが並び、
多数の来場者が訪れて賑やかに開催されました。
観光庁のコーナーでは、新たな旅のスタイルを普及、定着させることを推進する
プロジェクト「第2のふるさとづくり」に関するブースも。
人口減少や高齢化が進む地方で、
各地域が抱える課題への取り組みにも関わりながら、
その土地を繰り返し訪れ、地域との関係性の構築につなげる
このプロジェクトは、令和4(2022)年度から始動し、
令和6(2024)年6月時点で、
北海道から沖縄まで36の地域が参加しました。
北海道の南西部に位置する洞爺湖に面する〈トーヤの森〉も
「第2のふるさとづくりプロジェクト」に参加しています。
ユネスコ世界ジオパークにも指定されている洞爺湖周辺の
美しい景観は多くの人を魅了してきました。
一方で、そのカルデラの湖と周辺の森を維持していくために、
必要な担い手不足が地域の課題になっています。
トーヤの森は、洞爺湖に面した約72ヘクタール、
東京ドーム15個よりも広い森です。
森を舞台に、人をつなぎ未来を創造する「トーヤの森プロジェクト」として、
令和6(2024)年度に大きく4つのイベントを企画し、
第1回では森林作業道づくりをテーマにした1泊2日のイベント
「森と街のがっこうinトーヤの森2024」を7月に実施しました。
ほかにも山主の渡辺大悟さんが森をガイドする企画も。
第3回は10月に木こり、家具職人、木工作家といった、
木材で仕事をする人たちと一緒に森を巡り、
第4回は雪が積もる12月以降にスキーやスノーシューを履いて行う
森遊びと山の観察を予定しています。
トーヤの森がある洞爺湖は、新千歳空港から車で1時間半ほど。
札幌からは車で2時間強の距離です。
北海道在住者を中心に何度も通っているファンもいます。
山主である渡辺大悟さん自身も、
洞爺湖から車で1時間半ほど離れた北広島市に住んでいます。
渡辺さん一家にとって洞爺湖は、
家族で休暇を過ごすたびに訪れる、まさに“第2のふるさと”のような場所です。
渡辺さんは、精密機械や美術品など貴重な品物を木材で梱包する会社を経営し、
この事業で扱う木材は、輸送が完了すると廃棄されることに課題を感じていました。
そのため、若い頃から山を買って林業も行いたいという目標を持ち、
2019年にトーヤの森となる山を購入して夢を実現。
所有している森が健全に保たれるためにはどうしたらいいかと、
林業の専門家からアドバイスを受けたことが、
今回のプロジェクトの一環でもある森林作業道づくりにつながっています。
今回のプロジェクトは、トーヤの森での道づくりを
本気で学びたい人がメインターゲットとされ、
今後イベント企画や案内ができる
「森の番人」が生まれることも期待されています。
プロジェクトを通して、旅行だけでは味わえないトーヤの森の魅力に触れ、
森への理解が深まり、何度も通いたくなる場所に育っていくことを目指しています。
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『ツーリズムEXPOジャパン2024』では、
「第2のふるさとづくり」に関するセミナーも開かれました。
テーマは、『地域と旅の新たな関係、
地域への愛着と強いブランドを生み出す「第2のふるさと」とは?』。
スピーカーは、「ふるさと」を感じる滞在体験の創出や、
コンサルティングを行う〈さとゆめ〉の嶋田俊平さん、
ブランディングの専門家で〈HAKUHODO DESIGN〉の山口綱士さん、
観光庁の丹下涼さんの3名。
そして進行役は旅行会社〈wondertrunk & co.〉の岡本岳大さんが務めました。
「第2のふるさとづくりプロジェクト」は、レジャーとは異なる
旅のスタイルから地域経済の活性化につなげるものです。
地域の人と訪れる人が交流し、いずれ2拠点暮らしや、
移住につながることもプロジェクトの目的のひとつです。
丹下さんは、「第2のふるさとづくり」では、
「旅マエ・旅ナカ・旅アト」という旅のサイクルを
重要視していると話します。
訪れる人には、地域の行事や課題への取り組みに
参加してもらうケースが多くあります。
その活動を含めた旅を「旅アト」に振り返って、
また訪れたいと感じてもらいたい。
そうするとその時間が、また新しく「旅マエ」となるというものです。
対象地域の香川県琴平町などでは地域のまちづくりに参加した参加者が、
その後移住したというケースもすでにあるのだとか。
そもそもふるさととは? を考え続けてきた〈さとゆめ〉の嶋田さんが
たどり着いた“ふるさと”は、その人の情緒が形成された場所ではないかということ。
「情緒が生まれる何かがツアーや宿泊施設に組み込まれていると、
その場所が第2のふるさとだと感じてもらえるのではないか」
と熱く話してくれました。
ブランディングの専門家として、地域活性化に向けた各種支援も行う山口さんは、
プレゼンテーションで「スマートフォンでつながり続けられる時代となった今、
観光は日々の暮らしを豊かにする日常の体験に拡大してきています」と話します。
旅に求められることが、非日常的な要素から日常の延長にあることに変化しているようです。
「もの」から「こと」へと消費が変化しているということは、
すでに多く語られてきました。
特に若い世代にこの傾向が顕著だとトークセッションで話題になりました。
丹下さんから、「第2のふるさとづくり」への参加者は、
30代以下が半数を占めることが話されると、嶋田さんも山梨県小菅村にある
宿泊施設での実感がまさにその通りだと話しました。
学生や新卒間もない若い人たちが、決して安くない宿に泊まり、
地元の人たちと積極的に話す様子が見られ、彼らからは旅で
いつか叶えたい理想の暮らしや生き方を感じたいという声も。
観光が非日常から日常の延長へと変化し、
その場所の空気や交わした会話まで含めた体験が観光の大きな要素となっています。
観光庁が進める「第2のふるさとづくり」は、
このトレンドと地域をつなげる役割を担おうとしているようです。
4日間にわたって行われた『ツーリズム EXPO Japan 2024』。
企業やマスメディア向けに行われた前半と一般来場者向けに行われた後半合わせて、
約18万3千人もの人が訪れました。
9月28日には、『まちが わたしが 育つ旅。「いくたび」』をテーマに、
「第2のふるさとづくり」プロジェクトのなかから、
福島市フルーツラインエリア観光推進協議会(福島県福島市)、
一般社団法人 岳温泉観光協会(福島県二本松市)、
一般社団法人 雪国観光圏(新潟県南魚沼市ほか)、
一般社団法人 ジソウラボ(富山県南砺市)、
全但バス株式会社(兵庫県新温泉町)の
事業実施5団体による、各地域のプロジェクトや魅力を語るセミナーの実施も。
観光庁のブースにもたくさんの人が立ち寄り、
令和6年度の「第2のふるさとづくりプロジェクト」に参加する12の事業に関心をもち、
チラシなどを受け取る人の姿も見られました。
第2のふるさとへの旅は、1度きりの旅行では味わうことができない、
豊かで新しい旅体験です。
『まちが わたしが 育つ旅。「いくたび」』というコンセプトには、
訪問する人と地域の人たちが、
一緒にふるさとを育てる意味も込められています。
帰りたくなる「第2のふるさとづくり」とは、その地域にとってどんなことか。
受け入れる人と訪ねていく人とがお互いに思い合う旅になりそうです。
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