森のようちえん〈ちいろば〉
保育ではなく
「人間臭さ」を育てる

「やりたい」「楽しい」を大切に

自然という環境下での保育や、地元の有機野菜を採り入れた給食などの点だけを見れば、
特段めずらしい試みをしているわけではない。
〈認定こども園 ちいろばの杜〉(以下、ちいろば)の特徴は、
例えばこんなところに表れる
――子どもたちの発案で「探検隊」が組織され、
森に行くまでの道になっていたアケビの実を採りに冒険しに行く。
あるふたり組が帰りの会で発表した人形劇が、年長組全員が参加する演劇に発展し、
物語と配役と衣装を子どもたちがつくる。
ラグビーW杯を見て夢中になり、ボール替わりに長靴を手に、
泥だらけになって自作の「ハカ」を披露し合う。

泥だらけになって遊ぶ子どもたち。「帰りたくない」の声が響く。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

泥だらけになって遊ぶ子どもたち。「帰りたくない」の声が響く。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

森へ続く道中も遊びの宝庫。植物や昆虫の姿に目を輝かせる。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

森へ続く道中も遊びの宝庫。植物や昆虫の姿に目を輝かせる。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

小屋を建てたい、絵を描きたい、火おこしをしたい……
それぞれの子どもたちの内側から湧き出た、たくさんの「やりたい」「楽しい」気持ちと、
実現までの試行錯誤を何よりも大切にする。
大人たちが答えを手解きすることはほとんどない。
大人は少し離れて見守るか、子どもに触発されて一緒に楽しんでいる。
失敗しても構わない。評価も競争もない。
春先に芽生えた新芽のように、子どもたちが森にみずみずしく躍動している。

まずは自分でやってみるのが、ちいろば流。大人は子どもの姿をそっと見守る。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

まずは自分でやってみるのが、ちいろば流。大人は子どもの姿をそっと見守る。(写真提供:認定こども園 ちいろばの杜)

森や田んぼや畑など、自然の環境に身を置きながら、
保育や教育などを行う「森のようちえん」。
近年の生活意識の変化などから注目を集めているが、
〈NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟〉によると、
同連盟の加入団体だけでも、その数は全国で250以上に広がっている。

長野県南佐久郡佐久穂町にある、ちいろばもそのひとつだ。
厳冬期は氷点下20度にもおよぶ標高約1000メートルの森の中、
八ヶ岳に連なる山々の空気と水と土に囲まれ、子どもたちは日々を生き生きと遊んでいる。

園舎からの風景。晴れた日は山々が見渡せる。

園舎からの風景。晴れた日は山々が見渡せる。

writer profile

岡澤浩太郎 Kotaro Okazawa
おかざわ・こうたろう●1977年生まれ、編集者。『スタジオ・ボイス』編集部などを経て2009年よりフリー。2018年、一人出版社「八燿堂」開始。19年、東京から長野に移住。興味は、藝術の起源、森との生活。文化的・環境的・地域経済的に持続可能な出版活動を目指している。

photographer profile

栗田脩 Osamu Kurita
くりた・おさむ●1989年生まれ、写真家、長野県上田市在住。各地で開催しているポートレイト撮影会「そうぞうの写真館」主宰。ちいさなできごとを見逃さぬよう、写真撮影や詩の執筆を行う。二児の父。うお座。

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