colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

〈東京都離島区大島プロジェクト〉
波浮を舞台に巻き起こる
さまざまなイノベーション

Local Action
vol.180

posted:2022.1.26   from:東京都大島町  genre:旅行 / 活性化と創生

PR 東京都

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Takashi Sakurai

櫻井卓

さくらい・たかし●ライター。おもに旅やアウトドアのジャンルで執筆中。趣味は国立公園めぐり。日本国内はもちろん、アメリカを中心に、ネパール、ニュージーランド、オーストラリアなどさまざまな国立公園を訪れている。国立公園では、バックパックに生活道具一式を詰め込んで、テント泊ハイキングをすることが多い。
TAKASHI SAKURAI

photographer profile

Eriko Kaji

加治枝里子

かじ・えりこ●写真家。神戸出身・鎌倉在住。幼少期はニューヨーク州北部の湖や森に囲まれ、その後は神戸の海辺で育つ。2006年に渡仏しパリで独立。2010年東京に拠点を移し、日本各地の魅力を紹介する撮影を多く手がける。現在は保護者たちで運営する“森のようちえん”のような「青空自主保育でんでんむし」に4歳の娘と所属し、鎌倉の海や山で子どもたちと思いっきり遊びながら、写真制作も続けている。2020年夏、鎌倉材木座で写真展「黒い庭」を開催。
@erikokaji

東京都離島区大島プロジェクト vol.02

大島、ひいては東京諸島全体を盛り上げるために東京都のバックアップのもと、
“あなたらしい大島の物語”をつくっていくことを目指し、
さまざまな活動を行っていく「東京都離島区大島プロジェクト」。
この企画では3回に分けて、プロジェクトの6人のキーパーソンを紹介していく。
2回目となる今回登場してもらうのは
〈島京梵天(とうきょうぼんてん)〉の河村智之さんと〈青とサイダー〉の吉本浩二さん。
ふたりが拠点にしているのは、昭和感漂う波浮(はぶ)というエリア。
元町に比べると、観光客が訪れることも少なく、空き家も目立ち始めていたこのエリアが、
数年前から一大イノベーションを起こし、各方面で注目され始めている。

東京の島を生んだ「恵比寿様」が梵天たい焼き誕生のきっかけ

島京梵天の河村智之さんはエネルギー&フレンドリーの塊のような人だ。
この取材でも着くなり「たい焼き食べるでしょ! いっぱい種類あるよ、なにがいい?」と
明るく声をかけてくれた。
彼が都心から大島へやってきたのはいまから16年前。
しかも、移住したのは賑わっている元町ではなく、波浮。

波浮港を高台の展望台から望む。港の上に見えるのが波浮の集落。

波浮港を高台の展望台から望む。港の上に見えるのが波浮の集落。

かつて波浮港は遠洋漁業の中継港として、数多くの船が立ち寄る場所だった。
最盛期には旅館や飲み屋さんが軒を連ね、
映画館と公衆浴場がそれぞれ2軒ずつあったという。
現在では、当時の面影を残す閑静な場所として人気が高まりつつある。
そんななか、ここ数年で新規に事業を起こす人が増え始め、
いま再び波浮に活気が戻ってきている。
河村さんは間違いなくその起爆剤となった人物だ。

最初に大島を訪れたのは2003年。ふらっと行ってみたら「ドハマリした」という。
それから週末になるごとに島に何度も通った。

「ここにもうひとつの東京があると思ったんです。なんというかワープ感がありますよね。
都会感のある竹芝から、一気に離島の風景へ。そのギャップがとても新鮮でした」

2006年に移住してすぐに波浮で、カフェと古民家を改装したゲストハウスを始めた。

「最初に始めたカフェは玄米菜食のランチとかをやっていました。
でも当時は玄米菜食なんて知っている人も少なかったし、ぜんぜんダメ。
まだまだ波浮にくる観光客も少なかったのでゲストハウスもなかなか厳しい。
そんなときに、たまたまイベントに屋台を出店する機会があって、
それがすごく楽しかったんですよね」

屋台のような形態でなにか売れないかなと考えたときに、思いついたのがたい焼きだった。

「実はこれにもちょっとしたエピソードがあって。
この古民家をリノベーションしているときに、
裏手から恵比寿さんの像がくっついた溶岩が出てきた。
それでいろいろ調べてみたら、東京の島々を生んだ神様だということがわかって。
じゃあ、恵比寿さんが背負っている鯛を焼こうじゃないかと」

築130年の古民家をリノベーションした一棟貸しの宿。もともとは波浮港の網元が暮らした場所。

築130年の古民家をリノベーションした一棟貸しの宿。もともとは波浮港の網元が暮らした場所。

最初はオークションサイトで買った焼き板を使って試行錯誤。
そもそもたい焼きなんて焼いたことすらなかった。
そうやって見切り発車でスタートしたこのたい焼きが当たった。

「島には気軽にテイクアウトできるようなものがあまりなかったのも、
大きかったと思います」

物珍しさも手伝って、2010年のオープンから間もなく、
メディアの取材が次々に舞い込んできた。
その影響もあり、島京梵天を目指してわざわざ波浮を訪れる観光客も増えた。
テレビ出演をきっかけに島の人からも広く認知されるようになり、
放送翌日には合計300匹焼き続けたという。

「1日でそれだけ焼いたのはいまだに最多記録かもしれません。
かれこれ11年で30万匹は焼いていますね」

島京梵天の名物であるたい焼きは、羽根つきが特徴。5〜10月はかき氷も提供。

島京梵天の名物であるたい焼きは、羽根つきが特徴。5〜10月はかき氷も提供。

たい焼きのバリエーションも豊富だ。王道のつぶあんはもちろん、
食事にもなる「ハムチーズマヨ」、さらに冷したい焼きもあって、
大島名産の明日葉を使ったものが人気。

「周囲にお店も少なかったので、甘い物だけじゃなく、
いろんなバリエーションをここでカバーできればいいなという気持ちもありました」

こぢんまりとした波浮の集落。遠くに見える竜王埼灯台は、日の出、日の入りを同じ場所から見ることができる場所。

こぢんまりとした波浮の集落。遠くに見える竜王埼灯台は、日の出、日の入りを同じ場所から見ることができる場所。

次のページ
ゲストハウスが続々とオープンしているわけとは?

Page 2

世代を飛び越えて盛り上がりをみせる波浮

河村さんが移住した当時の波浮は、お店もほとんどなかったし、
決して島のなかでメジャーといえる場所ではなかった。
河村さんいわく「静かな世界」。なぜ波浮だったのか。

「僕はそれがいいと思っていたんです。
大島で暮らすなら波浮っていうのは、最初から決めていました。
どこにでもあるような風景よりも、波浮のような味のある場所がいいなと。
ただ、あくまでも直感的なもので、
ここで商売できるかどうかなんて、深く考えていませんでした」

移住当時は島の人にも、「波浮で商売なんて絶対成り立たないよ」とも言われた。
でも、ここ数年、波浮が盛り上がっているという話は、
島のあちこちで耳にするようになった。

「やっとですね。僕個人がどうこうというよりは、
島に戻ってきた地元の若い世代の〈青とサイダー〉の吉本さんとか、
〈露伴〉の山口さんとか、宿を始めたり積極的に動き始めた。これが大きいと思います」

そうこうしているうちに、島京梵天の周辺には、
〈島の宿 近〜KON〜〉や〈はぶの家〉というゲストハウスも立て続けにでき、
ここ2年ほどで4軒のゲストハウスがオープンしたのだ。

「そのふたつはわりと年配の方がやっているんですが、
世代も超えた盛り上がり方をしているのは波浮のいいところだと思っています。
波浮はいい意味でみんな独立遊軍なんですよ。
それぞれが勝手にいろいろやっているんだけど、
つながるところはしっかりと協力しあう関係性が心地いい」

河村さんみずから手がけたという古民家宿の内装。大正時代にタイムスリップしたような感覚になれる。

河村さんみずから手がけたという古民家宿の内装。大正時代にタイムスリップしたような感覚になれる。

客観的に見ると、その起爆剤になったのは、間違いなく河村さんのように見える。
先駆者として「波浮でもできるんだ」という意識を根づかせてくれたはずだ。
だが本人はまったくその意識はないらしい。

「好きでやっていただけですから。ドンキホーテみたいに無我夢中。
ただ、それが結果、地域の刺激になってくれたのならうれしいですね」

経済的豊かさを求めるなら大島に来ていない。
そこじゃないものに魅力があると思ったから来た。
だから自分が本当に心地いいと思うものをつくれば、
おのずと人が集まってくれるという変な自信というか、思い込みはあったという。
いまやお店も宿も大人気となっている島京梵天だが、
河村さんは一度移住したての頃の原点に戻ってみるつもりだという。

「島に来た当時の心地良さを追求したいんです。
例えば宿は繁忙期には2泊以上しか受け付けないとか、
お客さんが泊まる前後は部屋を空けておくとか。
そうすることでチェックアウト時間を気にせずに寛いでもらえる」

島京梵天周辺は歩いて散策するのが楽しい場所。ゆったり連泊するのがおすすめ。

島京梵天周辺は歩いて散策するのが楽しい場所。ゆったり連泊するのがおすすめ。

自分が移住時に求めたような、
ゆったりと波浮の時間を満喫できることに特化した宿泊形態だ。

「もちろん、自分都合もあります。というのも去年までが忙しすぎて、
スローライフをしたくて島に来たはずなのに、
なんで毎日こんなに疲れちゃってるんだ!って(笑)」

だから今後、手広く商売を広げるつもりはまったくない。
むしろもっとひとつを深掘りする方向。
ただ、大島へ恩返しをしたいという気持ちはもちろんある。

「でも島を自分の力で良くしようとかは、そんなに思っていないんです。
ただ、島に来てくれた人に喜んでもらえるようなことを、コツコツやり続ける。
僕がやり続けることが、結果、新しくなにかを始める人たちにとって、
励みとか一歩踏み出すきっかけになればいいなとは思っています。
ただそれを意識して動くというよりは、
やはり自分がきちんと暮らしているということが大事だと思っています」

すごくシンプル。
だけど、そのコツコツが15年積み重なっていまの島京梵天があるのだとすれば、
これからの河村さんのコツコツも、間違いなく今後の大島へ、
いい影響を与えていくに違いない。

次のページ
ローカルも知らない神聖な場所

Page 3

河村さんの“my大島”「神の根」

河村さんが大島の大好きなスポット=マイ大島として案内してくれたのは
「神の根」という場所。未舗装の細い小道の先に開けた磯だ。
遠くには利島の姿も望める。
特殊な地形をしているため、ここにぶつかった波は大きく潮を吹く。
かつては必ずここで身を清めてから、新春の三原山参拝に登ったという神聖な場所だ。

神の根は潮が吹き返すダイナミックな場所。地元の人もあまり知らない隠れた名所だ。

神の根は潮が吹き返すダイナミックな場所。地元の人もあまり知らない隠れた名所だ。

「ここでよくホラ貝を立てる(吹く)んです。誰も来ないし、迷惑にならないでしょ。
暖かい時期なんかは、ここで泳いだりもできますよ」

そう言って、ホラ貝を取り出す河村さん。
まるでタイムスリップしたかのような風景がそこにはあった。

次のページ
ハワイより大島!?

Page 4

移住者に気づかされた大島の持つ可能性

波浮の盛り上がりを支えているもうひとりのキーマンが吉本浩二さんだ。

「正直、悔しかったんですよ」

吉本さんは波浮生まれ波浮育ち。家は代々漁師の家系。

吉本さんは波浮生まれ波浮育ち。家は代々漁師の家系。

前出の〈島京梵天〉の河村さんの話になると、吉本さんは笑いながら答える。

「もちろん感謝のほうが大きいですけどね。うちらの地元なのに、
よそから来た人にその盛り上げを委ねている感じになっちゃって。
俺らなにやってんだよって」

吉本さんは大島に生まれ。
20歳で東京都心に出て、ファッション関係の仕事に携わっていた。
島に戻ってこようと思った大きなきっかけは、
波浮に移住して〈HAVカフェ〉を営んでいる寺田直子さんによる
スピーチを聞いたことだった。
寺田さんは世界中を巡るトラベルライターとしても活躍している人で、
そんな彼女が発した「ハワイに行くなら大島に来たほうがいい」という言葉が衝撃的だった。

高林商店には、昔なつかしの駄菓子コーナーもある。

高林商店には、昔なつかしの駄菓子コーナーもある。

「移住者のほうが、地元の僕よりも大島の魅力について知っている。
そういう風に大島を語れないなと思ったんです。
それが悔しかったし、寺田さんの話を聞いたときに大島の可能性に気づかされたんです」

島に帰ってきてまず始めたのは、元町でのゲストハウス。
3年ほど運営していたが、やはり自分の生まれ育った波浮を盛り上げたいと思い、
2019年に古い民家を自分たちでリノベーションして、
ゲストハウス〈青とサイダー〉をオープンさせた。

ゲストハウス〈青とサイダー〉。自転車とアートがテーマになっている。

ゲストハウス〈青とサイダー〉。自転車とアートがテーマになっている。

名前の由来を聞くと「シラフで言うのはすごく恥ずかしいっすね」と照れる。

「10年前くらいに仲のいい友人と、仙台まで自転車で旅したことがあったんです。
そのときに炎天下の青空の下で飲んだサイダーがめちゃくちゃうまかった。
でも、べつにサイダーの味自体がおいしくなったわけではなくて、
シチュエーションがそう感じさせたわけですよね。
そういう風に、波浮をより楽しく味わえるようなシチュエーションを、
このゲストハウスで実現できたらいいなと思ったんです」

意識したのは、自分だったらどういう宿に泊まりたいか。
お客さんは20代、30代が多く、女性のお客さんもよく来るという。
いままで波浮に少なかった、若者が集まる場になっている。

高林商店のお酒の品揃えは島でも随一。個性的なつまみなど、すべて吉本さんセレクト。

高林商店のお酒の品揃えは島でも随一。個性的なつまみなど、すべて吉本さんセレクト。

その後、〈高林商店〉という酒屋さんのリノベーションも手がけた。
きっかけは台風で青とサイダー、そして隣の高林商店の屋根が飛ばされてしまったこと。

「高林商店のおばあちゃんに
『この際だから、うちの屋根の修繕も、経営もやってよ』と言われたんです。
正直、自分の屋根も飛ばされていましたし、荷が重いなあとは思ったんですが、
僕がやらないとなくなってしまう。それはいやだったんですよね」

高林商店は、吉本さんが幼い頃に通っていた思い出の場所。
友だちと一緒に店の前でアイスを食べた懐かしい記憶もある。

一度屋根が飛んだとは思えない現在の高林商店。吉本さんの手によってスタイリッシュに生まれ変わった。

一度屋根が飛んだとは思えない現在の高林商店。吉本さんの手によってスタイリッシュに生まれ変わった。

高林商店にはカフェコーナーもあって、おいしいコーヒーのほか、揚げパンも販売中。

高林商店にはカフェコーナーもあって、おいしいコーヒーのほか、揚げパンも販売中。

「簡単に儲けられるわけもないし、大変なことが増えるだけですけど、
僕らの思い出の場所を守りたいという気持ちのほうが強かった」

青とサイダーと高林商店の間には、角打ちスペースもつくった。
夜にそこを通りかかると、光が外にもれていて、
いかにも波浮が盛り上がっている雰囲気がある。
昼間にはコワーキングスペースとしても使えるようにしてあるので、ゲストハウスに宿泊した人がそこを利用してワーケーションをしていたりもする。

青とサイダーと高林商店に挟まる角打ちコーナー。電源も複数あり、昼間はワークスペースとしても利用できる。

青とサイダーと高林商店に挟まる角打ちコーナー。電源も複数あり、昼間はワークスペースとしても利用できる。

次のページ
これぞハブイノベーション!

Page 5

個性的な店が並ぶ、新たな波浮を目指して

波浮のいまの盛り上がりの要因のひとつとして吉本さんが考えるのは、
いい意味でのこぢんまり感。

「波浮は歩いて行ける距離に空き家がいろいろあるので、
そこにおもしろい場をそれぞれつくっていけば、
さらに散策しがいのある場所になるんじゃないかなと思っています」

現状でも、青とサイダー、高林商店、島京梵天、
そして吉本さんの幼なじみである山口健介さんがつくったゲストハウス〈露伴〉など、
歩いて行ける距離にさまざまな個性的なスポットがある。

「こんな場所に、こんなおしゃれな店があるんだとか、
いろいろと発見が楽しいまち歩きができるようにしていきたいですね」

天井まで本で埋め尽くされた露伴の共有スペースは、非日常を味わえる。

天井まで本で埋め尽くされた露伴の共有スペースは、非日常を味わえる。

今後、波浮にこれがあったらいいな、というアイデアもすでにたくさんあるという。

「自分がやらなくても、露伴の(山口)健介が、
波浮港すぐのところに、食事ができる喫茶店をつくる計画もありますし、
今度移住してくる友人は釣り宿をやりたいと言ってます。
かつてあったという公衆浴場なんかも復活できたらいいなあとか。
そういうハード面ももちろんですが、
波浮、ひいては大島全体を楽しむためのコンシェルジュ的な動きだったり、
ソフト面も充実できれば最高ですね」

夜になれば角打ちも人で賑わう。あえて半透明な外壁にしていて、漏れ出す光もいい雰囲気。

夜になれば角打ちも人で賑わう。あえて半透明な外壁にしていて、漏れ出す光もいい雰囲気。

いまは閉まっている店もある波浮港の通りが、
新しい個性的な店で埋まる日もそう遠くないのかもしれない。
それが波浮のイノベーションの理想的な姿だと、吉本さんは考える。

「勝手にそれぞれがやりたいこと、欲しいものをつくっている感じがいい。
もちろん情報共有はしますが、
小規模なエリアなのにバリエーションが出てきて、共存もできている」

島に帰るきっかけになった「地元のことを語れない」という衝撃。
島に戻っていろいろと動いているなかで、
地元だからこそ誇れる“なにか”は見つかったのだろうか。

「人との触れ合いがあるのが波浮の魅力のひとつだと、いまは思っています。
ホスピタリティに感動してくれるお客さんも多い。
観光客が地元の人と触れ合う機会ってなかなかないと思うんですが、
波浮くらいの規模感ならば、それも可能です。
だから角打ちなんかは、地元の人もたくさん集まる場所にして、
観光客と触れ合える場所として機能させたい。
そうすれば波浮という場所の個性が生まれてくると思っています」

この角打ちスペースは、旅行者と地元の人の交流が生まれる場所でもある。

この角打ちスペースは、旅行者と地元の人の交流が生まれる場所でもある。

角打ちで出会った地元の人に、
いい釣りスポットを教えてもらったり、隠れた名所を聞き出せたりする。
そういう偶然の出会いが旅の醍醐味だと思っている人にとっても、最高の場所だ。

今回、河村さんと吉本さんの話を聞いて、
波浮イノベーションの鍵はIターンとUターンの相乗効果にあるのかもしれないと感じた。
外からの刺激と地元への愛。
そして世代すらも飛び越えて盛り上がっているというその多様性が、
いま波浮を大きく生まれ変わらせようとしている。

次のページ
漫画と作家の世界を味わう宿とは

Page 6

吉本さんの“my大島”〈露伴〉

2020年10月にオープンしたばかりのゲストハウス〈露伴〉。
その名前は、波浮にゆかりのある小説家の幸田露伴と、
オーナーの山口健介さんが好きな漫画の登場人物から。
2部屋の寝室と、共有キッチンのほかに、壁一面に本が並んだ書斎のようなスペースがある。
すべて山口さんによるDIYで仕上げたもので、
中に入るとちょっと異世界へ来たような、そんな特別感がある場所だ。

露伴オーナーの山口夫妻。青とサイダーのリノベーションなども一緒に手がけた。

露伴オーナーの山口夫妻。青とサイダーのリノベーションなども一緒に手がけた。

山口さんはほかのゲストハウスなどのリノベーションも手伝っていて、
吉本さんいわく「なにをやるときにも助けてもらっています」とのこと。
ちなみに吉本さんと、露伴のオーナーである山口さんは、
お互い波浮生まれで、「お前」「こいつ」と呼び合う仲。いわゆる幼なじみだ。

露伴は2部屋のみの小さなゲストハウス。お客さん同士で仲良くなるケースもしばしば。

露伴は2部屋のみの小さなゲストハウス。お客さん同士で仲良くなるケースもしばしば。

information

map

TOKYO VONE TEN 
島京梵天

住所:東京都大島町波浮港6番地

TEL:04992-4-1567(カフェ)、050-3577-1567(ゲストハウス)

宿泊料金:1棟貸しきり24000円(税込)〜

Web:島京梵天

information

map

青とサイダー

住所:東京都大島町波浮港4

TEL:090-4919-1981

宿泊料金:1泊1名5000円(税込)〜

Web:青とサイダー

information

map

高林商店

住所:東京都大島町波浮港4

TEL:04992-4-0075

営業時間:10:00〜20:00

twitter:高林商店

instagram:高林商店

information

map

露伴

住所:東京都大島町波浮港14番地

TEL:080-2742-0702

宿泊料金:1泊1名6000円(税込)〜

Web:露伴

Feature  特集記事&おすすめ記事